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「Xperia」一人勝ちのジレンマ

ソニーはPlayStation 4で稼げるのか

2013年06月12日 07時00分更新

文● 盛田 諒/アスキークラウド編集部

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欧米の玩具市場で、子供向けのタブレットが売れている。一部機能が制限されるが、大人向けのタブレットと同じものだ。このまま伸びれば、携帯ゲーム機の代替需要になりかねない。ソニーで好調のスマートフォン「Xperia」は、携帯ゲーム機「PS Vita」の売上を食いはじめている。

 世界市場で、子供向けタブレット「MEEP!」(米Oregon Scientific社)が好調だ。2012年9月の発売後、アメリカ国内では2~3ヵ月で25万台を売り上げた。年間2000万台を出荷するiPadとは比べものにならないが、玩具市場全体として見れば、1機種で25万台というのはかなりのヒット商品だ。

 日本国内での販売を請け負う日本トイザらスの山田次郎さんに話を聞くと、ヒットの裏側には「タブレット市場が成熟し、年齢層が下がった」という背景があったそうだ。

 「アメリカやヨーロッパのトイザラスでは、2年前からソニーやサムスンのタブレットを販売していた。海外は日本よりもタブレットの普及が早かった。そこで大人が使っていた商品を、子供も使うようになってきた。そこで売り場が生まれ、商品が生まれた」

 これまでの似たようなヒット商品には「キッズケータイ」がある。親が持ち、子供が持ちたがり、子供の安全に特化したGPS機能がついた。商品開発としてはそれが最初だが、エンタメ要素が先行したものはMEEP!が初めてだ。

 玩具市場全体でタブレットが売り場を広げる中、動きが鈍っている売り場がある。ゲーム売り場だ。

 ソフトは人気シリーズの続編しか売れず、ハードの売上台数は頭打ち。スマートフォンのアプリストアを開けば、ファミコンのように単純ながら面白いゲームがたくさんある。日本ではGREEやDeNAが手がける基本無料のソーシャルゲームも好評だ。

 「リプレイス(代替)というと大げさだが、タブレットが一役を担っているところはある」


ソフト(アプリ)が売れればハードも売れる
XperiaからPlayStation 4まで、トータルの売り場活性化を

 安価なスマートフォンやタブレットが、かつて栄光の時代を築いたビデオゲームを食ってしまう。頭に浮かぶのは、ソニーのPlayStationとXperiaという2大ブランドだ。

 2010年に発売されたソニーの携帯ゲーム機PlayStation Potable(PSP)シリーズは、任天堂のニンテンドーDSと両翼をなすヒット商品だった。しかし近年、その成長は目に見えて鈍化している。シリーズ新商品のPS vitaは2011年12月の発売以来、ライバルのニンテンドー3DSに負け通し。今年、最大1万円の大幅値引きで初めてトップに立った。

 携帯ゲーム機とスマートフォンの差も分かりづらくなった。2011年にはXperiaで初代PlayStationのゲームができる「Xperia PLAY」が発表、昨年10月にはXperiaでPS vitaのゲームをプレイできる「PlayStation Mobile」(図)も開始している。

 現在は映像の圧縮・伝送技術も進み、スマートフォンのゲームも高画質化している。テレビにスマートフォンの映像を映す「セカンドディスプレイ」技術も開発が進んでいる。スマートフォンでテレビゲームが出来るようになる日も遠くない。1台あれば何でもできる魔法のようなスマートフォンを、ユーザーはますます求めるようになるだろう。

 そうしていつかPS vitaがスマートフォンとの市場競争に負けてしまったとしても、ソニーは「PlayStation 4」を売っていく必要がある。

 背景は、ゲームと共にマイナス成長しているテレビだ。スマホ一人勝ちでは、総合情報家電のソニーは立ち行かない。頼みの綱は超高画質の4Kテレビだが、現在は映像技術が先行し、肝心の番組が追いついていない。そこでテレビを買う動機になるのが高解像度を活かしたリアルなゲーム、あるいは4Kの超高解像度動画だ。

 「ONE SONY」を掲げるソニーの平井CEOは、テレビやゲームなど高性能なホームコンソールをハブに、デジタル小物をつなげていこうという。

 技術と意気込みは十分だが、不安材料はやはりソフト市場だ。

 PS vitaが売れない一因は、ハードの出荷台数が頭打ちになったことで、ソフト産業そのものが縮小し、「やりたいゲームがない」と思われてしまったから。ONE SONY実現のためには、ソフトの市場そのものを底上げしなければならない。スマートフォンやタブレットの市場が拡大すると同時に、PlayStation 4でプレイしたくなるゲームが増える。すべてのソフトがONE SONYでつながる、そんな未来は果たして訪れるだろうか。


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