第2、第3の「超級電視」が生まれてくる!?
実はオンラインショッピングサイト最大手の「淘宝網」や、企業間取引の「阿里巴巴」(Alibaba)においては、メーカー製テレビこそ高値で取引されているが、ノンブランドのAndroid搭載テレビは、60型の製品が6000元(約10万円)程度で売られている。
発表では「大画面薄型テレビが普及していない中都市や小都市に売っていきたい」としているが、小米の当初の購入者はIT系サイトをよく見ているヘビーユーザーだったので、同じようにIT系サイトの読者が人柱となるだろう。
小米と同じパターンであれば、発売後半年ないし1年と、それなりに時間が経たないと、蘇寧電器や国美電器といった家電量販店でも商品が積極的に売られ出すことはないだろう。
また半年も経てば、楽視網のライバル企業が第2、第3の「超級電視」を出してくるかもしれない。そうなれば中国におけるテレビの価格相場の常識が一掃崩れることになる。またそのさらに先には、魅族が海外に展開しているように、新興のテレビメーカーが国外に進出していく。
コンセプト的には受け入れられているが
映像コンテンツの利用料がネックに……
では楽視TV・超級電視は中国のヘビーユーザーに受け入れられるのだろうか。携帯電話ほど気軽に交換できる製品ジャンルではないが、それでもこれから大画面テレビを導入しようとする人には、悪くない選択になるのではないかと思われる。事実ネットの反応も悪くない。
搭載される楽視製のアプリストア「Letv Store」はひとりよがりなものではなく、中国テレビメーカーのテレビにも搭載されており、テレビ向けのアプリストアとしては最もアプリの数が揃っている。
テレビとコンテンツというと、中国独自光ディスク規格しかり、ゲーム機しかり「コンテンツはハードウェアを出したとき限りのリリースで、それっきりリリースされない」というパターンとなっているが、アプリは出続けているようだ。
アプリ面は問題ないが、同社が提供する(正規版の)映画やテレビドラマの利用料に年490元(約8000円)かかるのが、利用者のネックとなっている。今まで動画サイトで(人によっては広告抜きツールを活用して)無料で動画を見ていたのに、有料で見るのはけしからん、という話だ。
最後に蛇足となるが、こうしたビジネスモデルを作り出した小米が、ノートPCを出すのでは、という噂が中国のIT系メディアの中で駆け巡っている。ノートPCもAppleに感化された機種が安価で出てくるのか、興味深いところだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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