このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

「Wikimedia Conference Japan 2013」リポート

毎月5億人が訪れるウィキペディアの舞台裏

2013年02月19日 07時00分更新

文● 宮原 淳/アスキークラウド編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

去る2月3日、東京大学本郷キャンパスにて「Wikimedia Conference Japan 2013」(WCJ2013)が開催された。これは「ウィキペディア(Wikipedia)」をはじめとする「ウィキメディア(Wikimedia)」のプロジェクトについて、理解を深めたり語り合ったりするイベントで、今年で3回目を迎えた。

WCJ2013

東京大学本郷キャンパス工学部2号館にある2教室を使って開催されたWCJ2013。ウィキペディアの編集者や、強い関心を持つ約180名の参加者が、講演者である研究者やジャーナリストらと意見を交換し合った

単なる百科事典ではないウィキペディア

「ウィキペディア(Wikipedia)」をインターネットの百科事典と考える人は多いだろう。事実、公式サイトの説明でも百科事典とある。だが正確には、「信頼されるフリーな百科事典、それも質量ともに史上最大の百科事典を、共同作業で作り上げることを目的とするプロジェクト、およびその成果である百科事典本体」であり、つまりウィキペディアは百科事典を作るプロジェクトそのものも指し示す。

 ウィキペディアを運営するウィキメディア財団は、辞書を作る「ウィクショナリー(Wiktionary)」や図書館の「ウィキブックス(Wikibooks)」、児童図書館の「ウィキジュニア(Wikijunior)」なども運営しており、それらの総称を「ウィキメディア(Wikimedia)」プロジェクトと呼んでいる。


GoogleやFacebookに並ぶ「非営利」の巨大サイト

WCJ2013

「理想的な百科事典とは、ラディカルであるべきだ──安泰を保ってはならない」という、百科事典の編纂に関わったチャールズ・ヴァン・ドーレンの言葉を冒頭に用いて、ウィキペディア運動への参加を来場者に訴えた

 ウィキメディア財団のコミュニケーション担当責任者であるジェイ・ウォルシュ氏は「ウィキの現状」と題して講演を行った。

 まずは気になる数字を紹介しよう。

 ・ウィキペディアは世界で第5位の訪問者数。日本では第9位の訪問者数
 ・毎月の閲覧者は4億8300万人(米コムスコア社による’12年12月の統計)
 ・’12年12月のページリクエスト数は200億。日本では15.3億(ウィキペディア統計)
 ・285の言語で開設

WCJ2013

‘09年以来、3年ぶりの来日となるジェイ・ウォルシュ氏。当時と比べると日本でのウィキペディアの知名度は大きく上がったと語る

 米グーグル社や米フェイスブック社、米マイクロソフト社や米ヤフー社などのウェブサイトがアクセス数のトップ10に名を連ねる中で、ウィキペディアは唯一非営利のプロジェクト。ほかのサイトが何千、何万人もの社員を擁する団体なのに対して、財団はわずか160人で運営されている。

 多くの人はウィキペディアの各言語版を、英語版の翻訳だと考えているが、実際には285の言語ごとに個々に独立。これらを運営するのは、100%無報酬で活動する8万人の編集者だ。ただし残念ながら、編集者は減少傾向にあるという。

 ウィキペディアの日本語版は’01年3月に開始され、記事数は全言語中9番目の84.2万件。アクティブな編集者は3900人以上だという。同時期に始まったドイツ語版は編集者数が6459人以上、記事数が154.2万件なので、規模は半分程度だ。ただし米国をはじめとした多くの国では編集者が減少する傾向にあるが、日本の編集者数は一定数を保っているという。

WCJ2013

2年ほど前のデータだが、今では懐かしい! と思えるキーワードが数多く並ぶ。ウィキペディアは時代を象徴するツールでもある

 ここで興味深いデータを見てみよう。右は、ウィキペディア日本語版の’10年12月の集計データだ。メインページはともかく、実質的な1位は「AV女優一覧」。以下も「AKB48」や「ONE PIECE」などが並び、サブカルチャーに強い側面が垣間見える。これは日本だけの現象ではなく、ほかの言語版についてもスポーツやゲーム、映画、ポップカルチャーなどの記事が好まれる傾向にあるという。

 ちなみに近年爆発的に普及しているスマホ/タブレットによるモバイルサイトへのアクセスでは、日本は英語版についで第2位のPVを誇る。3位のドイツ語版より3倍多い数字であり、国内でのモバイルアクセスの多さが如実に現れている。


(次ページに続く)

前へ 1 2 次へ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中