あの名器がミニサイズになって戻ってきた!
さあ、説明無用です。1978年に発売されたアナログ・シンセサイザー「MS-20」の完全復刻版です。悠久の時を経て、幾多の星々が栄華と衰亡を繰り返す中で、ついに復活したのです。おめでとう!
2VCO、2VCF、2VCA、2EG、1LFOという言わずもがなの構成。当時としては普及価格帯のシンセでありながら、パッチコードによるモジュールの組み換えが可能という画期的設計で、外部入力やコントロール系の信号取り込みも含め、さまざまな応用が効きました。オリジナルのMS-20を今でも愛用しているミュージシャンは大勢います。
デジタル時代になって、このシンセをモデルにしたソフトウェアはいくつも作られ、自作シンセ界では常にリファレンスとされてきました。今やシンセのエバーグリーンなスタンダードなのであります。だから、いつか再び本物が見たい。なぜそれを作らぬ。楽器メーカー何やっとるかと、我々は呪詛の言葉をいくつ吐いたことでしょうか。
あらためて申し上げましょう。「MS-20 mini」。こいつは本当に素晴らしい。だって本当にアナログなんですから。すでに予約は始まっております。通販だと税込で4万1800円で各店舗横並び。ちなみに1978年当時のお値段は9万8000円。みなさん、いいですか。21世紀のいま、こうやって真面目に作られた、電子回路に本物の電気が通うアナログシンセサイザーが、なんと昔の半額で我々の手に届くわけです。いますぐ予約! 予約! 予約!
無用とは言いつつ若干説明しますと、1978年のオリジナルに対して、MS-20 miniのサイズは「86%」と発表されています。フルサイズ鍵盤はミニ鍵盤に、特徴的なパッチケーブルは標準フォーンからモノラルミニに変更されましたが、これが実にいいあんばいです。
ミニ鍵盤とはいえ長めに作られた専用デザインで、ストロークの量とキーの傾斜角が妥当な線に収まっていて弾きやすい。モノラルミニのプラグは挿抜が軽くて、演奏中のパッチの差し替えも楽にできるでしょう。標準フォーンの挿抜は結構固かったように記憶しています。
音はもろアナログです。本物ですから当然です。発振器で生まれた電流がダイレクトにボイスコイルに流れ、コーンを打ち鳴らし、ブリブリと空気を揺れ動かすこの感じ。まだまだデジタルのモデリングでは再現できないんじゃないでしょうか。そして、なめらかな動きと、突然狂ったように発振しはじめるフィルターには快感さえ覚えます。おかげで気がついたら外は雪だというのに、だらだらと大汗をかいていました。アナログ万歳!
35年前のMS-20よりも、ピッチやフィルターなど、ずいぶん安定しているように感じました。昔は結構変動が大きかったように記憶していますが、まだ新しいからでしょうか。重量は4.8kg。パネルに鋼板を使っているので、ミニの割には重いですが、十分電車で持って歩けるサイズです。オプションでキャリングバッグも発売される予定ということです。
オリジナルの再現は微に入り細に入り徹底しており、パッケージのダンボール箱まで当時のデザインを採用。マニュアルやセッティングチャートまで当時のものが付いてくる。本体が完全復刻なのだから、操作系の説明は35年前の取説で十分用は足りるわけですが、ちゃんとmini専用のマニュアルも用意されているそうです。実はオリジナルと少し違うところがあります。
それはMIDIに対応したこと。バックパネルにはMIDI IN、そしてMIDIの送受信に対応したUSB端子が設けられております。いずれもノートメッセージのみの対応で、外部のシーケンサーからフィルターのパラメーターのようなものを動かすことはできません。
これは「MS-20 miniのパラメータはMS-20 miniのパネルで操作しろ、マニュアルで、その方がカッコいいから」というお告げのようなものです。せっかくハードとして復刻したのだからそうしましょう。この姿を我々はいったい何年待ったというのでしょう。その上で、現代のシーケンサーと組み合わせてシステムの一部として使えるわけですから、もう何も言うことはありません。
デリバリーは4月中旬からということです。バックオーダーで1年待ち、なんてことにならないよう、みんなで天に向かってお祈りしましょう。待ち遠しい!