企業の生き残りはクラウドにかかっている
「ガラパゴス家電」ではなく「バルス」が成功の鍵
現在、時代の中心にいるのは移り変わりの速いWebサービスだ。製造業はモノではなく、彼らのサービスを成立させるシステムづくりにシフトしていく必要がある。タイミングを見誤れば、メーカーは顧客の求めるものからどんどん遠ざかっていってしまう。
その動向を敏感に察知しているのは、韓国のサムスンだろう。NVIDIAとおなじく、サムスン自身がスマートフォン用の半導体を開発しており、CESでは最新型のプロセッサー「Exynos 5 Octa」を発表した。また、クラウドサービスを展開するためのサーバーに必要な省エネメモリー「グリーン・メモリー」も売り出している。
彼らの製品に際立ったオリジナリティーがあるかとか、Evernoteに書きこめる冷蔵庫が大ヒットするのかといった疑問はさておき、サムスンは2年以上も前からスマート家電に力を入れてきた。時流に乗ろうとしていることは間違いない。
ところが、日本の報道を見ていると「4Kバブル」「日本とアジア市場のテレビ開発競争が激化」といった家電メインの記事ばかり。もちろん製品技術がすごいことは分かるが、CESの現場で感じた空気とは違っていた。
日本にも製品のサービス化を打ち出している企業はあるが、いまだに自分たちが開発した製品をつなぐ「リンク」が中心のようにも見える。クラウドの主役は世界中にあふれるWebサービス。大企業が新しいことをしようとするときは「既存部門を活かすものでなければ」と思いがちだが、製品の殻に閉じこもった「ガラパゴス家電」ではもう戦えない。
一方で、日本のWebユーザーたちの発想力にはまだ勝ち目があるように思う。
テレビで映画「天空の城ラピュタ」を見ながら、スマートフォンでTwitterに滅びの呪文「バルス!」と書き込もうという天才的なアイデアを自然に思いつき、数万人をあっさり動かしてしまえるのは日本人だけだろう。そうした「ガラパゴスクラウド」を企業戦略に取り入れ、世界市場をねらっていくことで、新しいCESの主役になっていってほしいと思えた。