ごく普通にモノとして物欲をそそられる
10.1型、9.2mmの薄型Windows 8タブレット
18日に発表された日本ヒューレット・パッカードのWindows 8タブレット「HP ElitePad 900」は、ビジネスタブレットという新しいカテゴリーを提唱している。発売は来年3月。価格は未定だが、発表会では、Windows 7のスレートPCと同じ7万円程度を目安とした。
製品そのものは法人向け、会社が貸与するためのもの。ただ、その仕様はいわゆる法人向けのイメージとは一線を画し、個人にも欲しいと思わせるものだ。量販店で販売されてもおかしくない。実際、個人でもオンラインストアから購入できるようにするという。
そのコンセプトは、デザインが良く、頑丈であること。そしてセキュリティーが堅いこと。
米軍調達基準を満たす頑丈さ
「18時間駆動」バッテリージャケットも用意
まず、薄さ9.2mm、680gのボディーはアルミの削り出し。デザインだけではなく、1枚板を削り出すことで頑丈さを求めた。10.1型ディスプレーの表面には丈夫さに定評のある「Gorilla Glass 2」を使い、米軍の調達基準(MIL-STD-810G)もクリアした。画面は外での仕事がしやすいように、他社の約2倍という400nitの明るさに設定されている。
機能として足りないところは、覆うように装着する機能性カバー「スマートジャケット」で補う。バッテリーパックを備えた「バッテリージャケット」は、合計18時間駆動を可能にする。「キーボードジャケット」を装着すれば、ノートパソコンのように使用することもできる。
NFCでIDカードの個人認証も可能
情報漏えい対策を施し、会社貸与に最適化
逆に、マシンを貸与する会社として気になるのは、業務を委託し、外部の人間に働いてもらうときの安全性だ。そこで詰め込まれたのが、OSが立ちあがる前にユーザーをハードウェアレベルで制御する、遠隔地からロックするなど、情報の漏えいを防ぐ工夫の数々。NFCもあり、たとえば会社のIDカードを使った個人認証もできるだろう。
しかし、ただのビジネスマシンなら、もっと無骨でシンプルなデザイン、スペックでよかったはず。そこをコンシューマースペックを思わせる作りにした背景には、仕事の形態と、そこで使われているマシンの変化があるという。
背景はコンシューマライゼーション
不安定雇用時代の、安くても使えるモバイルマシン
昨年の東日本大地震を契機として、在宅勤務、業務委託、非正規雇用など、会社に通う正社員以外の働き方をする人々がますます増えてきた。ノマドと言われると名前こそ華やかだが、不安定な雇用状況が生まれている証左でもある。
スマホ、タブレット、クラウドサービスの普及も手伝い、プライベートとビジネスの境界はあいまいになる。1人で複数のモバイルマシンを持つこともごく普通になった。そのとき、自分のマシンと、会社から貸与されるマシンは、同じだけのクオリティーを持っていてほしいと思うようになる。だが、法人用より、個人用の方が進化が速く、仕事をしている中で、整合性がとれなくなることがある。その現象をコンシューマライゼーションという。
HPがねらったのはそこだ。企業向けでありながら、あくまで使うのは「個人」。安かろうでは、仕事で使うとき不都合が生じる。個人でも欲しいと思えること、安心して仕事で使えること、雇用者が安心して貸与できること。HP ElitePad 900は、その要素を備えた、ビジネスとコンシューマー、2つの機能を兼ねたマシンとして作られている。
在宅勤務や業務委託は、正社員と比べ、低所得者層の割合が高い。その雇用状況は加速するだろう。ボーナス払いでパソコンを買う、という風景はもう昔のもの。これからはこのマシンのように「用途は限定的でも造りが良い」という、実用的なモデルが増えていくのかもしれない。
そんなノマドの1人として、早く実機に触ってみたいと思わされるモデルだった。願わくは7万円以上になりませんことを。柏手2つ、礼2回。