2ちゃんねる誕生から13年。『電車男』を始めとして、2ちゃんねるがカルチャーサイドに与えてきた影響は大きい。ニコニコ動画にオリジナルトラックを投稿している作家にも、実は2ちゃんねるの『DTM板』や『カラオケ板』の出身者は多い。
トラックメーカーにしてDJの『さつき が てんこもり』さん(そういう名前だ)もそんな2ちゃんねらーの1人。ニコ動における出世曲であるファミマ入店音のリミックス「ファミマ秋葉原店に入ったらテンションがあがった」を始め、「『ラーメン二郎』のコピペを音楽にしてみた」や「お断りします」など、数々のクオリティーが高い電波ソングの作り手として知られている。
極めつけは、アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のEDソングをニコニコ動画で募集したときの応募曲、「いいえ、トムは妹に対して性的な興奮を覚えています」だ。思わず二度見するタイトル、賞金を求める「10万、ください~♪」というストレート過ぎる歌詞など、あらゆる点でインパクトを与え、見事、第10話のエンディングに採用された。
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人畜無害~さつきがてんこもり feat.初音ミク~ |
そんなさつきさんは今月27日、アルバム「人畜無害~さつきがてんこもり feat.初音ミク~」をリリースする。
電波ではなく初音ミクに行ったのはなぜなのか。そもそもさつきさんは誰で、どこにルーツがあるのか。本人にインタビューしてみると、アキバとインターネットが生みだした、新しいシーンの姿が浮かびあがってきた。
フォーマルな演奏会で銃を鳴らす暴挙
── さつきさんが音楽を始められたのはいつですか?
さつき 5~6歳から6年間ぐらい習っていたエレクトーンですね。2000年ぐらいにヤマハ主催の「YAMAHA ELECTONE FESTIVAL 2000」で銀賞をもらったんですが、当時からバカやってました。男の子は蝶ネクタイをしめて、女の子はドレスとか着てるようなアットホームな雰囲気の発表会で、僕らは「絶対あいつらにはガチでやっても勝てない」ってことで、ふざけようとした。それで演目を「パイレーツ・オブ・カリビアン」に決めて、まず衣装から入ったんです。
── 衣装から!?
さつき コーヒーで汚して雰囲気を出したりね。全然練習しないで「楽しーっ」って。あとはみんなで3万円ぐらい出し合ってガチなモデルガンを買った。以前に刀を出したら、教育の場にふさわしくないと怒られた前例があったので、リハーサルでは安物のおもちゃ銃を使うぐらいに準備して。本番で「パーン」って鳴らしたら、もう会場あぜんですよ。
── (爆笑)
さつき 審査員は規約を作る人とは別で、「君らおもしろいねー」って賞をくれました。その頃から勝負しない感じで……。
── いや、勝負してますよ! そのスタンダードなところに切り込まないそのスタンスは、今に通じるものがありますね。
さつき そうですね。でもエレクトーン自体はうまくなくて、レッスンに行くと椅子に寝転がるとか、ゲームっぽい音をいかに出すかに命をかけたりして、そのうち飽きて辞めてしまった。教則本の進みが、僕だけ遅い。「Comical Train」※ぐらいなら弾けたかな。
※ Comical Train : エレクトーン練習曲(5~3級)。作曲は渡辺睦樹、編曲は小林陽一。それなりに高度な技術がないと弾けない。
── そのエレクトーンに音楽の基礎があったと。
さつき いや、DTMでいえば、スーパーファミコンで遊んでた「マリオペイント」です。そこでシーケンサーやマウスの使い方を覚えた。その後、中学でパソコンを手に入れて一気に加速していく感じです。何かの機会にMIDIを打ち込めるフリーソフトを見つけまして、「あ、シーケンサーって言うんだ。マリオペイントでやったことあるわ」と、遊び感覚で始めたのが音楽制作の最初。そこから用語や知識を身につけて、ハマっていった感じです。