“nano-SIM”といわれる第4世代のSIMカード規格を巡り、AppleとNokia/Motorola Mobility/Research In Motion陣営が火花を散らしている。SIMカードを標準化しているETSI(欧州電気通信標準化機構)は3月末、2陣営から提出された標準規格案をどちらにするのかについての決定を遅らせると発表。仕切り直しとなった。次回の投票が予定されている5月末のミーティングまで、水面下での駆け引きが続きそうだ。
端末と契約を分離し、現在の携帯電話のモデルを作った
SIMの新仕様策定で2陣営が争っている
携帯電話のユーザー情報識別に使われるSIM(UICCとも呼ばれる)は、GSM系規格で重要な特徴でなる。GSM端末に自分のSIMを抜き差しすることで、すぐに利用できるという利便性、携帯電話の番号(オペレーター)と端末との分離という自由(SIMと端末を別に買うことができる)を実現するもので、これらの特徴がGSMの繁栄に寄与したともいわれている。
消費者の選択という点で規制が厳しい欧州では、SIMの抜き差しが可能な携帯電話しか販売できないことになっている。その標準を定めているのがETSIだ。今回のSIMの名称は4FF(fourth form factor)となり、ETSIのSmart Card Platform技術委員会(TC SCP)が仕様を策定する。
nano-SIMは「iPhone 4S」など一部端末で採用されているMicroSIMよりもさらに小さく・薄く、約33%小さいSIMカードといわれている。AppleがETSIに自社開発のnano-SIMを標準として提案したことは、2011年5月に報じられていた。
このときすでに、AppleはOrange(France Telecom系オペレーター)などオペレーターの支持を集めていたようだ。Appleが開発したSIMは、SIMをのせるトレイのようなものを持つといわれている。なお、AppleはソフトウェアベースのSIMに向けても動いているといわれているが、nano-SIMはそれとは別となる。
これに対し、NokiaがMotorolaとRIMの支持を取り付けて対抗案を持ち出した。NokiaはETSIで最大の議席数を持つベンダーで、無線規格でもEricssonなどとともに標準を率いてきた歴史を持つ。これら既存のメーカーにとって、標準化と関連特許は自社ビジネスモデルで重要な役割を占める。
ここに、携帯電話では新参、しかも欧州からみるとよそ者のアメリカ企業が入ってきたという心理は多少なりともありそうだ。Financial Timesによると、Nokiaは、Appleの提案が標準になると、重要なSIMに関する特許をアメリカ企業が持つことになるなどの懸念をあらわにしているという。

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