今回から始まった本連載では、パソコンやスマートフォン、タブレットにデジタル家電、そして周辺機器などで使われる、最新の技術やアーキテクチャーといった気になる用語について、冗長にならない程度にわかりやすく解説していく。最新のハードウェアや製品に搭載されている新用語を、適宜解説していくことで、「これってどういう意味だっけ?」という時に役立つ連載を志向していく所存である。
その第1回では、まもなく登場するというインテルの「Intel Z77」チップセット搭載マザーボードが対応すると言われる、新しいインターフェース規格「PCI Express 3.0」について説明しよう。
実は、物理層は2倍になっていないPCI Express 3.0
「PCI Express 3.0」(またはGen3)とは「PCI Express」の第3世代に当たる仕様で、次世代のインテルCPU「Ivy Bridge」でサポートされる予定の高速バス規格である。規格自身は2010年11月に仕様策定を完了しているが、対応する製品は、グラフィックスカードがAMDの「Radeon HD 7000」シリーズや、NVIDIAの「GeForce GTX 680」として登場し始めたほか、マザーボード製品はまもなく登場し始める予定だ。
PCI Express 3.0を一言で言えば、「実効転送速度が前世代の2倍になった、次世代のPCI Expressの規格」である。最初のPCI Express(以下Gen1)と2.0(以下Gen2)では、物理層の転送速度が2.5GT/秒(Giga transfer per second)から5GT/秒と2倍になった。ところが3.0では異なり、転送速度は2倍の10GT/秒ではなく、8GT/秒に抑えられている。これはサーバーのように長いコネクターを使う場合、技術的に10GT/秒の転送が難しいからだ。
少々乱暴な説明になるが、PCI Expressのデータ転送は「SHF」と呼ばれる周波数帯になる。これは地上アナログ放送の「VHF」や、地デジの「UHF」よりもさらに一段高周波なので、伝送路として電線を使うことは少ない。
例えば衛星放送の受信に「従来よりも高性能な同軸ケーブルをお勧め」されるのは、周波数が高いので、なるべく損失の少ないケーブルを使う必要があるためだ。同様に、PCI Expressの伝送路を通常のプリント基板で実装するのは、信号の損失や歪みが大きくなるので不利になる。
PCI Express 3.0では、転送速度を8GT/秒に抑えても伝送途中の(高周波)損失がより大きくなるので、送信側はプリエンファシス(高域補正)、受信側はイコライザーの利用を前提に設計されている。ようするに、伝送途中で損失や歪みが出るのを見込んで、送信側はあらかじめ信号を加工して送り出すというわけだ。
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