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『アクセル・ワールド』TVアニメ放送直前SP企画 第3回

われらAW設定研究会(後編)

『アクセル・ワールド』気分を味わうには300BPMの曲を聞け!?

2012年04月06日 17時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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(C)川原 礫/アスキー・メディアワークス/AW Project

シャープが電卓を小型化した理由は「脳に入れるため」だった!?

―― 機械と人間をつなぐという話ですと、『アクセル・ワールド』の世界は2030年代にインプラント型のネットワーク接続機器が登場したものの、危ないので禁止されたという設定がありますね。

遠藤 「よく考えると『アクセル・ワールド』の設定って、コンピューター開発の最先端と同じ方向を向いているんだよね、“人間はコンピューターと違うんだ。人間だけが心というものを……”ではなく、“人間の脳もコンピューターだ”という割り切りから話がスタートするところに新しさを感じる」

野口 「そういえば、“次は電卓を頭に入れる”と言っていたのは、元シャープ副社長の佐々木正氏でしたっけ?」

工学博士にして元シャープ副社長の佐々木正氏。1960~70年代の電卓戦争を戦った技術者でもある。米国では“ロケット・ササキ”というニックネームで呼ばれていた(画像は月刊アスキー2002年7月号より抜粋)

―― 世界初のLSI電卓を開発したり、アポロ11号の月面着陸用小型船に搭載したLSIに関わった人ですね。液晶パネル開発でも活躍されています。

野口 「月刊アスキーの佐々木氏インタビューをあらためて読むと結構凄いんですよ。『……人間の心臓が悪くなると補助用に利用するペースメーカー、これは最初は体内ではなく外に出して使うものでした。それが最近は(中略)体の中で動かすようになった。(中略)肝臓も、胃も、すべて体内に戻されてきた。何で脳の補助道具である計算機だけ頭に戻さないのか、疑問がわいてきませんか?』ってサラリと言ってる(笑)」

遠藤 「『Q:それはいつ頃から考え始めたのですか。A:シャープで電卓を手掛けた頃から。だから、小さくしろ,小さくしろと言ってきた。今はポケットに入る大きさになったんだから、次は脳へ入れと思った』……電卓戦争の頃だとすれば1970年前後からエキゾチック・コンピューティングを指向していたことになりますね」

野口のCPU講義●オーバークロックとは何か?

際限ないオーバークロックというのはあり得ないのです(野口)

 CPUの「命令」は、実際にはたくさんのトランジスター回路を電気が流れることで実行されます。性能を上げるために、現代のCPUは、1つの命令を実行するのに必要なたくさんの処理を、10~20くらいに分割し、流れ作業的に実行しています(パイプライン処理)。

 「クロック」が1つ与えられるごとに、流れ作業が1段ずつ進むようになっています。

 クロックのタイミング(間隔)は普通は一定で、たとえば2GHzのCPUなら、1クロックは1秒の20億(2G)分の1、0.5ナノ秒になります。したがって、2GHzのCPUにおいては、0.5ナノ秒ごとに、命令実行における流れ作業が1段階進むことになります。

 オーバークロックとは、クロックの周波数を上げ、1クロックの時間を短くすることです

 CPUのクロックは、アクセルワールドの中でも述べられているように、ベースクロックと呼ばれる外部からの信号を、内部で何十倍かにしています。ベースクロックが100MHzの場合、2GHzのCPUは、ベースクロックを20倍していることになります。これをたとえば30倍するようにすれば、CPUは3GHzで動くことになります。これがオーバークロックです。

 このほか、ベースクロック自体を高速化する方法もあります。たとえばベースクロックを150MHzに上げれば、内部で20倍されれば、最終的なクロックは3GHzになります。パソコンのオーバークロックでは両方を同時に行なうことも少なくありません。

 しかし、オーバークロックはむやみにできるわけではありません。たとえば最終的なクロックが3GHzにオーバークロックされた場合、1クロックの時間は0.5ナノ秒から0.33ナノ秒に短くなります。

 これほど短くなってしまうと、流れ作業の1段階が、1クロックの間では完了しないかもしれません。ある流れ作業が終わる前に、次のクロックが与えられた場合、流れ作業の結果が次の作業に正しく伝わらず、CPUは正しく動作しません。

 ぎりぎり正常に動ける限界を確かめて、その付近までクロックを上げることで性能向上を目指すのがオーバークロックという作業です。

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