Abeeは高いアルミニウム加工技術を持ち、金属的な質感を持つ高級ケースを数多くリリースするメーカーだ。E-ATXに対応する超大型ケースからキューブ型、HTPC型など幅広いラインナップを揃えている。また、ピンクやブルーなどPCケースでは珍しいカラーバリエーションを持つモデルが多い。
AS Enclosure 5000S
●URL:http://www.abee.co.jp/Product/CASE/AS_Enclosure/5000S/
●実売価格:3万9980円前後
コンセプトは空冷の最大化と体感ノイズの最小化
「AS Enclosure 5000S」はAbeeのATX対応ミドルタワーケースでは上位に位置する高級モデルで、機能とデザインの両方に趣向を凝らした贅沢な製品だ。
高いアルミ加工技術による造形美
ボディーは1.2mm厚のスチール製で、高剛性モノコック構造を採用する。これは骨組みと外板の両方で強度を確保する構造で、自動車や航空機などに活用されている方法だ。
外板素材はアルミニウムでフロント、トップ、両サイドの4面が覆われている。このモノコック構造により、剛性だけでなく放熱性、耐振性、防塵性に優れるとしている。
アルミニウムを採用しているのはデザイン性を重視してのことだ。フロントパネルは2枚のアルミニウムを組み合わせて造形され、当然のように美しい表面処理が施されている。また両サイド部分や5インチベイ、フロントポート部分の角や曲線部分にはなめらかで精巧な加工で、とてもアルミニウム製とは思えない作りだ。アルミケース好きの人にはたまらない質感と造形美と言えるだろう。
傾斜をつけてフロントファン2基を設置
アルミの質感溢れることを除けば見た目は一般的な形状であるが、サイドパネルを開けるとちょっと驚くギミックが用意されている。通常のケースであればフロント下部はシャドウベイのスペースとして使われているのだが、本製品はここが大きく斜めにカットされている。これはAbeeが「SID」と呼ぶ空冷ソリューションで、ここには2基の120mm角ファンが斜め上に風を送る方向で設置されている。フロントファンに角度を付けることでCPUやビデオカードの方向へダイレクトに吸気を送り込む仕組みだ。
このSIDシステムによりフロント下部のスペースにも余裕があり、対応する拡張カード長はスロット最下段で約310mm。これはビデオカード3枚差しの最下段で中段、上段へと上がるにつれ約15mmずつスペースが上乗せされる。つまりPCI Express x16最上段なら、約340mmのカードでも大丈夫で、どんなビデオカードにも対応できる。
SIDのシステムだとケースリア下部で空気の流れが悪いが、フロントファンの角度やマザーボードの設置レイアウトを見る限り、問題になるのはビデオカード3枚差し時のみだろう。この部分にも通気口が開けられているため、空気がまったく動かないといった心配はない。
シャドウベイをリアに配置してノイズを軽減
SIDのほかにも、リア上部で違和感を覚えるかもしれない。サイドパネルを開けて横から見ただけだと、どこに電源ユニットを設置するのかよくわからないからだ。電源ユニットの設置場所はリア上部なのだが、設置向きがユニークで90度回転させて面積の大きい部分を右サイドパネルにくっつけるようにして設置する。
この電源ユニットの設置方向だと、リア上部の左サイドパネル部分に大きなスペースが残るが、ここには4基の3.5インチシャドウベイが用意されている。SIDによりフロントに設置できないベイをここに移動しているわけだ。フロントと比較すると冷却効果は落ちるが、静音的な視点だとノイズ源となるHDDがケース奥にあるのは好ましいと言える。ただ、マザーボードのSATAコネクタからベイまでかなり距離があるため、SATAケーブルは長めのものを用意しておく必要がある。ベイはフロントにも3.5インチシャドウベイと2.5インチシャドウベイが各1基ずつ、5インチベイが4基用意されている。
本製品はアルミ加工の美しさ、冷却性能、剛性など性能に関しては申し分ないが、実売で4万円を超える価格がネックになるだろう。そのぶん、しっかりとした作りと飽きのこない美しさは3年、5年、それ以上と長期間使い続けられる製品になっている。よいケースを長く使いたい人には、価格に見合ったクオリティと言える。
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