ネットワールドの「StorMagic virtual SAN(SvSAN)」は外付けストレージを使用せずにVMotionやVMware HAを利用できるというストレージの仮想化製品だ。仮想化環境でのストレージのコストを大幅に削減できるという製品の魅力をネットワールドに聞いた。
仮想化のSMB市場が拡がらないのはストレージのせい?
サーバー仮想化の企業での普及は急速に伸びているが、日本企業の大半を占めるSMB(Small and Medium Business)市場を見ると、導入率は決して高くない。これに関しては、VMware vSphere Essential/Essential Plusのような低価格なパッケージを投入することで、てこ入れも進められている。しかし、大きな課題になっているのは、実は共用ストレージだ。
VMwareのキラーアプリケーションが、物理サーバーの障害時に仮想サーバーを別の物理サーバーに瞬時にフェイルオーバーするvMotionであることに異存はないだろう。しかし、VMotionを利用するためには、クラスタ構成されたESXサーバー同士でストレージを共用する必要がある。このストレージのコストがサーバー仮想化のトータルコストを引き上げているのだ。「vSphere 4.1からEssential PlusというSMB向けのライセンスにもvMotionが含まれるようになりましたが、実際はストレージが高くて導入できない企業も多いんです」(藤森氏)。
この課題に対して、ソフトウェアを用いて低価格な仮想化環境を提供するのが、ネットワールドの「StorMagic virtual SAN(SvSAN)」である。
外部ストレージなしで約50%のコスト削減が実現?
SvSANは、ESXサーバーのローカルディスクをVMwareの共用データストアとして利用できるというソフトウェア型の仮想化ストレージ製品。VMware vSphere 4.1上で動作するバーチャルアプライアンスとして動作する。サーバーに内蔵されたHDDをiSCSIストレージとしてマウントし、VMotionやVMware HAを利用するためのデータストアとして構成するのがSvSANの基本機能だ。
SvSANのライセンスはデータストアの容量に依存し、2TBの場合の参考価格が24万9800円。内蔵ストレージをiSCSIストレージ化することにより、iSCSIの外部ストレージを使うのに比べ、約20%のコスト削減が実現する。その他、外部ストレージのオペレーションを運用するための教育や運用費、冗長化構成を組むコスト、そして消費電力などをあわせると、全体で約50%のコスト削減が可能になる。
特にVMwareによるサーバーの仮想化、そしてSvSANの構成により、電力は大きく削減するという。12台の物理サーバーを、VMwareの導入によって3台のサーバーと1台のストレージに集約すると、電力代は半分以下に削減。SvSANでストレージをなくしてみれば、さらに半額に収まるという。「ストレージもSATAだったら、本当に安くできます。ただ、データベースにはSSD、ファイルサーバーはSATAやSASといったように用途にあわせて使い分けることができるのもメリットです」(藤森氏)。
こうしたSvSANは、SMB向け市場を開発したいヴイエムウェアの戦略に沿った製品であり、SvSANはStorage Virtual Applianceとしてヴイエムウェアの正式認定を取得しているのが大きな強みだ。ネットワールドでは、HPのサーバーとVMware、そしてSvSANを組み合わせた「SVP for VMware vSphere」やVDIを実現する「SVP for Citrix XenDesktop/VMware View」、さらにリモートアクセスVPNを利用可能なFortiGateを加えた「どこでもお仕事パック」などのパッケージ化も進めており、SMBのユーザーに魅力的な選択肢となっている。
競合は、エントリ向けのストレージになるが、この価格レンジでの競合になると、もはやEMCやHP、ネットアップなどの製品よりも、むしろVMware Readyの認定をとっている企業向けのTeraStation(バッファロー)になるようだ。
SMB向け製品ならではの設定のしやすさ
実際、ネットワールドのエンジニアである越川達也氏にiSCSIターゲットの作成やフェイルオーバーなどのデモを披露してもらったが、SMB向けということで初心者を意識した操作感になっていたのが印象的だった。越川氏は「iSCSIのターゲットを作るのにウィザードを使うのですが、基本的には一本道なので、管理者が迷うことはありません。ESXサーバーへの登録やアクセスリストも自動化されており、iSCSIストレージの面倒なところがうまく隠ぺいされています」と説明する。SvSANの開発元である英ストアマジックがSCSIの開発元であるアダプテックのメンバー中心に設立されていることもあり、SCSIの実装も手堅いものになっているようだ。
vCenterのプラグインとしてSvSANのメニューが埋め込まれているので、シームレスに操作できるの大きなメリット。メニューの英語表示も、次期バージョンで日本語化される予定となっている。
SvSANではシングル構成も可能だが、通常は複数台のESXサーバーでHA構成を組み、データをミラーリングさせる。この場合、SvSANのクラスタはアクティブ・アクティブで動作するデュアルコントローラーの仮想iSCSIストレージとして扱われ、一方の障害時でもそのまま継続してサービスを継続できる。もう1台、運用管理用のESXサーバーとSvSANを追加し、非常時のリストア先として利用することも可能だ。
クラスタ構成のSvSANは常時データの同期をとっているが、「ESXサーバーではなく、(ハードウェアに近い)バーチャルアプライアンス間でミラーリングしています。ですので、ESXサーバーの動作に依存しません」(越川氏)ということで堅牢性も高い。
SMBユーザーだけではなく、データセンターや大企業も魅了
SvSANはストレージにコストをかけられないSMB企業ユーザーの選択肢として提供してきた。「これから仮想化を始めたいという方をターゲットにしています。サーバー仮想化といっても、シングル構成から冗長構成へのギャップが非常に大きい。SvSANで共有ストレージの敷居を下げることを狙っています」という戦略だ。ご存じのとおり、ネットワールドはEMCやネットアップのストレージを数多く販売している優良ディストリビュータであり、あくまで選択肢の1つとして提供しているわけだ。
だが、実際SvSANを導入するユーザーはSMBユーザーにとどまらないという。「実際、サーバーの集約を全社でやろうとすると、大企業でも相当体力がいります。信頼性が担保できない、コストがかかるといった理由で、結局部門単位で仮想化プロジェクトが動く場合も多いんです」(吉田氏)とのことで、大企業の部門でSvSANを導入することも多いようだ。また、データセンターにとっても、収容スペースを大幅に軽減できるため、人気が高い。とにかく専用ストレージではなく、数多くのサーバーを並べて仮想化インフラを構築したい場合は、SvSANは魅力的な選択肢になっているようだ。
先日はヴイエムウェアも、こうした共用ストレージに対する問題意識から生まれた「vSphere Storage Appliance」を投入している。今後、SMB向け仮想化市場の切り札として、これらのストレージ仮想ソフトウェアが大きな注目を集めるのは間違いない。