シェアを落としているRIM
最終的にはMicrosoftに飲み込まれる?
ではRIMのメリットは何なのだろうか? Microsoftほど明白ではなく、どちらかというとMicrosoftのプッシュに屈したようにみえる。その背景には、Androidの急激なシェア拡大とAndroidやiPhoneがビジネスでも使われ始めているという傾向がある。
RIMのユーザーはビジネスマンだ。“BlackBerry中毒”という言葉が生まれたように、これまで欧米の大企業はセキュリティとプッシュ式の電子メールの特徴を高く評価してBlackBerryを導入した。だが、社員の要求もあって企業のIT部門がiPadやiPhone、Androidもサポートしようという動きがある。業務アプリケーション側でも、SAPやOracleはiPhoneやAndroid対応を進めており、iPhoneやAndroidがビジネスでも利用しやすくなる環境が生まれつつある。
その流れから、今年のイベントで発表されたBESのマルチプラットフォーム化を考えると、RIMは大きな賭けに出たといえる。このBESとはBlackBerryの最大の特徴であるプッシュ電子メールと高度なセキュリティを実現するミドルウェアで、RIMの戦略の要といえるものだ。
これまでBlackBerry端末のみと結びついていたが、新ソリューション「BlackBerry Enterprise Solution」によりデバイス管理、プロビジョニングなどの機能をiPhone/iPad/Androidなどでも利用できるようになる。つまりBESがオープンになり、端末との相乗効果を失うことになる。
RIMはBlackBerry Worldの直前に、RIMは第2四半期の見通しを下方修正している。さらには、調査会社のcomScoreが発表したアメリカのスマートフォン市場の最新のデータ(2011年第1四半期)で、RIMはついにAndroidに1位の座を奪われた。同期にAndroidは2010年第4四半期の28.7%から6ポイント上昇、対するBlackBerryは31.6%から27.1%に縮小した。iOSはVerizon版のリリース効果もあり25%から25.5%にアップし、RIMに詰め寄っている。
このようにRIMの立場が苦しくなってきたことから、今回のMicrosoftとの提携が、最終的にMicrosoftによる買収に終わるのではないか、という噂が再浮上している。だが、RIMのユーザーはビジネスユーザーであり、一般消費者と比べて乗り換えが少ない。この点は、Nokiaなどのメーカーとは違う。
OSから端末までを手がける垂直型は、モバイル業界ではRIMとAppleだけだ。RIMの垂直型からオープンにシフトする戦略が成功するのか、今回の提携からMicrosoft、Nokia、RIM連合が生まれるのだろうか。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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