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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第90回

電子書籍を紙で売る! 「コトリコ」挑戦への道

2011年04月01日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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今回の取り組みは「精神的にマイナス」だった

―― 実験という意味では、通常の480円版とは別に、イラストの原画をセットにした4万8000円版も用意されているのが面白いですね。それぞれどれくらい予約が入っているんですか?

コトリコ 通常版が1000件くらい、セットが1件ですね。原画バージョンは最初3件の予約があったんですが、2件はイタズラだったんですよ。ただ、通常版が1000売れたら原画版が1売れる計算だったので、ぴったりになった感があります。

 原画を描いてくれた方は名前を出して絵を売るタイプの人ではないのですが、それでも4万8000円の価値が出たのがものすごく面白く感じるんですよ。

 あと、通常版に1000件予約が入ったこともうれしいです。480円×1000で、今回のことに48万円の対価が発生したわけです。まあ、もうちょっと売れたらいいなという思いもあったんですけど、実験的な意味合いがあったのでそれはそれでいいかなと。

コトリコ氏が「なにか女の子の絵を描いてください」と左上のイメージイラストを送ったところ、右上のイラストが送られてきたという


―― 今後突き詰めていけば、実際に利益がたくさん出る仕組みも作れませんか?

コトリコ いえ、なんかもうすごく疲れたので、次をやる気力はないです(笑)。

 「金儲けしやがって」みたいなことをいう人がいたり、Amazon.co.jpからも特殊な売り方だったので、色々と質問されたり。現実的に段ボールに商品バーコードをちゃんと印刷できるかという問題もあって、ちゃんと発送が済むまで不安も残っているんです。最悪、部屋に1000枚の段ボールが送り返されるんじゃないかと……もう憂鬱ですよ。2月までは楽しかったんですけどね。ツメの段になった3月からは本当に大変で。

 だから、次回何かやるなら、また違うことにしたいですね。売り方だけでなく、電子書籍という体裁も、読める人と読めない人がいるからちょっと邪魔くさいと思いますし。むしろ「販売」にこだわらなくてもいいかなとも。


―― すると、完全に赤字になりませんか?

コトリコ そうなんですよ。何とかしたいんですけどね。今回思ったのは、シンプルなビジネスモデルにしようと考えると、やっぱりお金がいるなということです。

 今回のようなワケの分からない売り方や広め方をすると案外安く済むんですけど、買う側が何に対価を払うのか見えにくくなるんですよね。だから、分かりやすくて広まりやすい方法を考えると、お金がかかる方向にいかなくちゃいけません。売るコンテンツも、もっとキャッチーな……多くの人が読みたいと思うものを考えると、コストがかかる方向にいってしまいますし。


―― 難しいところですね。では、そうした実験も含めて、「コトリコ」全体の今後の目標を教えてください。

コトリコ 人生の目標は、ストレスのない上手い生活をすることです。だから、ブログにしても電子書籍にしても、邪魔くさく感じたら消してしまうと思うんですよ。

 今回のような実験的なことは、もう一回くらいは何かするかもしれないです。ただ、抱えたストレス分の対価……お金じゃなくても、すごく楽しい気持ちになれればプラスに感じると思うんですよ。今回はもう、精神的にマイナスなので(笑)。せっかくだからこれを糧にして、結果がプラスになるようなことをしたいですね。



古田雄介

筆者紹介──古田雄介


 元建設現場監督&元葬儀業者&現古銭マニア&毎週仕事で秋葉原と都内量販店に足繁く通う毎日を送る現デジタルライター。「古田雄介のブログ」ではみなさんのお勧めサイトを募集中です。ツイッターIDは@yskfuruta




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