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高解像度化やカメラ上のアプリケーション、サーマル対応

ハイテクなアクシスのネットワークカメラの実力を探る

2011年03月08日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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デジタル・IP化されたネットワークカメラを専業で展開しているメーカーが、アクシスコミュニケーションズ(以下、アクシス)だ。「HDの解像度や人感センサーはもはや普通!」という同社の最新ネットワークカメラについて調べてみた。

ネットワークカメラ専業メーカー、アクシスとは?

 アクシスは創業からすでに25年を誇る歴史を持つスウェーデンのIT企業で、もともとはプロトコルコンバーターやプリントサーバーを開発していたメーカーだ。約15年前くらいからIPネットワーク上に映像を流すネットワークカメラを手掛けはじめ、現在では安全確保のための監視や遠隔モニタリングに向けた製品を数多くリリースしている。デジタル・IP化の波は監視カメラの世界でも確実に訪れており、高解像度化も一挙に加速している。アクシスコミュニケーションズ 営業本部 営業部 部長 兼 営業技術部 部長 砂川 亮氏「VGAはすでにエントリ向けで、HD対応はミッドレンジ製品です」と語る。

アクシスコミュニケーションズ 営業本部 営業部 部長 兼 営業技術部 部長 砂川 亮氏

 アクシスのネットワークカメラは非常に多くのモデル(2011年2月現在全80種類以上)が用意されており、固定型、ドーム型、PTZ(パン、チルト、ズーム)型、PTZドーム型などのほか、メガピクセルや屋外向け、無線LAN対応などそれぞれ異なる特徴を持つ。型番でいうと、Mシリーズはエントリー、Pシリーズがスタンダート、Qシリーズがミッションクリティカルを指し、そのあとに形態や解像度などを表す番号が来るという。どのモデルも動体や音声の検知やいたずら警告などの監視用途に向いた機能を搭載するほか、サーマル対応のモデルも用意されている。

アクシスの製品カテゴリー

 アクシスのネットワークカメラはレンズもセンサーも汎用品を採用しており、プロトコルも業界標準のものだ。では、どこがアクシスのコアかというと、映像の伝送を遅延なく行なう「ARTPEC(アートペック)」と呼ばれるチップにその神髄がある。前述のとおり、現在のネットワークカメラはHDの解像度をミッドレンジ製品で実現しており、そのデータ量の増大から考えると、コーデックもMotionJPEGよりも圧縮率の高いH.264が必須となる。つまり、カメラには高い処理負荷がかかるわけだ。

 しかし、「どのメーカーも1本目の映像ストリームは30フレーム/秒を出す性能を持ちますが、複数のセッションを張ると2本目以降は劣化してきます。これではNTSCで30フレーム/秒出せていたアナログカメラに劣ることになります」(砂川氏)というのが現状だ。その点、第3世代にあたるアクシスのARTPECは映像や音声コーデック、プロトコル処理において卓越した性能を誇っており、4CIF(740×480)の映像を最大4クライアントに対して30フレーム/秒で安定して伝送できるという。

 もう1つ注目すべきは、この高い処理能力を持つARTPEC上でプログラムを動かすことができるという点だ。同社が「インテリジェントビデオ」と呼ぶこの試みでは、ユーザーに対してAPIが公開されており、サードパーティがアクシスのネットワークカメラを「アプリケーションの部品」として利用することができる。「たとえば、カメラに映っている人数のカウントとか、侵入者が特定の線を超えたらアラートをあげる『クロスラインディテクション』、あるいはユーザーの歩いた軌跡を追う『ヒートマップ』といったものがあります」(砂川氏)。現在、開発パートナーは800社におよんでおり、日々ユニークなソリューションが実現されているという。

用途にあわせて用意されているさまざまなラインナップ

 以下、代表的な製品を見せてもらおう。まずM10xxシリーズは、上位機種と同じチップを搭載しながら、2万5000円(税抜)からという低廉な価格を実現した固定型のラインナップ。多くのモデルで最大解像度はVGA(640×480)だが、写真のM1031-Wは1280×800で画角も広い上、マイクや人感センサー、アラーム、Power over Ethernetにまで対応するオールインワンモデルである。

低廉・小型ながら機能満載の「M1031-W」

 次のM11xxシリーズは、われわれが監視カメラといって頭に思い浮かべる形状をしたスタンダードな固定型ラインナップ。カメラであることに気づきやすく、犯罪の抑制効果も高い。SVGA(800×600)からのラインナップになっており、すべての解像度で30フレーム/秒を実現。レンズを交換できるモデルもあり、おもに小売業で採用されるという。

 さらに上位のP13xxシリーズは音声もサポートするほか、3M(2048×1536)や5M(2560×1920)といった高解像度のモデルをラインナップする。「3Mが5Mくらい高い解像度のモデルだと、最大8つまで一部を切り出して映し出すことができます。広い部分の中から特定の部分のみフォーカスする監視用途に向いています」(砂川氏)。

同社の標準機である監視カメラ「M1344」(左)は音声やSDカードスロットも持つ。「M1114」(右)はより低価格ながら、レンズ交換可能

 ドーム型は、文字通りカメラを半球型のドーム型カバーで覆ってしまったもの。「レンズがどちらを向いているのかわかりませんので、方向転換も防止できます。あと、犯罪者等から破壊されにくいという特徴もあります」(砂川氏)ということで、欧米ではドーム型のニーズの方が高いという。固定型のほか、常時監視のために、レンズを物理的に上下左右に回転させるPTZモデルも用意されている。

ドーム型のPTZカメラ「P5534」。左がカメラで右がドーム型カバー。HD対応で、18倍の光学ズームを持つ

高い解像度とスムースな操作性に驚く

 最後には、営業本部 営業技術部 コンサルタントの伴野裕子氏に、PTZモデルのP5534でデモンストレーションを行なってもらった。

デモを行なってくれたアクシス 営業本部 営業技術部 コンサルタントの伴野裕子氏

 まず驚くのが、映し出すものの素材感まで表現する高い解像度だ。おれおれ詐欺のニュースで見るような、ATMの様子を映すぼやけた映像とは、もはやレベルが異なる。「お話しを伺うと、やはり警察も解像度が足りないことを問題視していたようです。このレベルのカメラであれば、犯罪者の特徴もはっきりわかります」(伴野氏)という。

インタビューの様子を映した動画をWebブラウザから見る

ノートPCのケースを映してもらった。模様まで映し出される

 もう1つはやはり対象物にいち早く焦点を合わせられるスムースな動きだ。デモでは、オプションのジョイスティックで操作をしてもらったが、まさに自分の意思の通りにレンズが動き、焦点が合うのもあっという間である。

オプションのジョイスティックを使うと、PTZの操作はかなり楽になる

 さらに設定が徹底的にカスタマイズできるのも、アクシス製品の大きな特徴。フォーマットや伝送方式、ネットワーク設定など、Webブラウザベースのページ換算で全50ページ近くの設定が用意されているとのこと。こうした特徴は、ユーザーの要件にあわせなるべく細かくチューニングできるようにする販売代理店向けの取り組みの結果だという。

 解像度や圧縮効率の面で高いレベルに達した昨今、次の展開は監視やモニタリング以外の用途になるという。前述したインテリジェントカメラのアプリケーションを用いることで、商品陳列に活かしたり、店舗内のお客さんの動きを調べるといった用途で採用されている。アプリケーションの目として、ユニークな事例が見られそうだ。もう1つはモバイルデバイスでの対応。iPhone経由での監視・モニタリングをサポートしているほか、他のデバイスへの対応も予定しているという。

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