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MARKETING 編集者の眼

Amazonの累積赤字1兆円は戦略的「演技」だった?

2011年02月08日 13時00分更新

中野克平/Web Professional編集部

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 ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件(東洋経済新報社刊、楠木建著)の売れ行きが好調だという。1月下旬には15刷10万部を突破したというし、週刊東洋経済本誌でも「ストーリーで戦略を作ろう」と題した特集が組まれて好評だったと聞く。Amazon.co.jpには55件ものカスタマーレビューが投稿されている。ビジネス書でありながら、「戦略の神髄は 思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある」という主張が、政治にも経済にも閉塞感のある日本の現状を打破する、強烈なメッセージとして支持されたのだろう。

 編集者として見ると、本書のストーリー作りも上手だな、と感心する。ネタバレにならないように遠回しにいえば、優れた競争戦略にある「物語」について説明したあと、ある戦略を採る企業の優位が、物語にある必然性によって支えられる、という本書の構成は、目立たない脇役が実は物語の核心を握る重要人物だったと明かされるような、読書ならではの驚き、楽しさがある。

 本書ではスターバックスなどの競争戦略を、ストーリーとして分析している。Amazonの例では、豊富な品揃えが楽しい買い物という感想につながって再訪を促し、さらに品揃えが豊富になって売上げが増える、という競争戦略が説明されており、実際にユーザーとして感じるAmazonの利用感が、緻密に組み立てられた戦略に基づいていることに気づかされる。Amazonが1997年に赤字のまま上場し、黒字に転換したのが2003年。その間、国内の大手書店や流通関係者がネット通販をある意味で見下していたが、本書で紹介されている巧妙な戦略を見ると、累積赤字1兆円は、既存企業をネット通販に参入させないための「演技」だったかもしれない、とすら思えてくる。

 ネット時代の主役であるGoogleがソーシャル時代を生き残れるか不安視される一方で、Amazonに死角はないようにも思える。ところが、Amazonはライバルになりそうな企業を買収し、自社に取り込んでいるようなのだ。顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説のサブタイトルは「アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか」。「靴」というありふれた商品を扱うネット企業が、Amazon以上の競争戦略「顧客からの愛」をベースにしていることが語られているという。書店で見かけたとき買うかどうか悩んで買わなかったのだが、2月16日に開催されるオプンラボの勉強会では、『ザッポス伝説』の監訳者である本荘修二氏が、翻訳権の獲得からザッポスにまつわるエピソードの数々を紹介してくれるという。当日までに買って、本荘氏のストーリーを楽しみたい。

オプンラボイベント
監修者の本荘氏が語る『ザッポス伝説』とトニー・シェイの経営

日時
2011年2月16日(水) 19:30〜22:00
主催
オプンラボ
会場
SOUQ(スーク) 渋谷区恵比寿2-22-10 広尾リバーサイドG B1)
参加費
参加費:当日1万円(前日までの振込8000円)
定員
20名(先着順)


※申込みは、オプンラボのセミナー案内ページから。

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