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ニコ動の歌姫・リツカが目指す「飾らない音楽の力」

2010年12月24日 12時00分更新

文● 広田稔

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音楽業界のやり方を踏襲しなかった

── どういうアルバムに仕上がりましたか?

リツカ:自分はフランスっぽいというコンセプトで作っていたつもりだったのですが、その認識から多少ずれていたという。

ペンプロ:フランスっていってもいろいろありますからね。いろいろ行き違いもありましたが、ただそこで意思疎通の大変さに負けてはいけないなという。

 結局、どちらかの言い分に流されて「作ってくれたら歌う」みたいな感じになると、言葉は悪いですが、仕上がりが企画モノのようになってしまう。「シーンで知られてる名前を集めたら、数字が見えてきました」という風にはしたくなかった。

 正直、最初は70年代風っていうのは、「いくら何でも古すぎないか、本当にレット・イット・ビーみたいだぞ」とか思ってましたけど、やり取りを重ねるうちに考え方が変わったんです。音楽業界って、「この人にしかできないこと」というのを無理に見つけたり、過度に今風のアレンジにしようとする悪い癖があると思うんです。


── ああ、「翼広げすぎ」な歌詞になったり、曲調が似てきたり。

ペンプロ:そうした風にアレンジしようとすると、リツカさんは「そのままでいいんです」と引き戻す。「ポールが好きだから、ポールにしたいんです。だからドラムはこう」っていう。今はすごくリアルなドラム音源があるんですけど、そうじゃなくて60年代っぽい「パスッ」っていう音を求めてる。

 彼女はループのことを「ドンツクバー」って言いいます。要はヒップホップっぽいビートで、それを隠し味で入れたりすると、「このドンツクバーを小さくしてください」って言われちゃう(笑)。僕が徹底して「今出すならこんな感じでしょ?」って提案するのを、「普通でいい」って返してくる。

リツカ:私は、自分が好きなポールやオザケンみたいなのが、音楽だなぁって思っていて、それが根本にあれば「ドンツクバー」も音圧もいらないかなぁと。


── イラストにもそういう注文が?

リツカ:それは全然ないです。元々絵がナチュラルな感じなんで。ただ、「装飾が多い」って注文したことはあります。

あき:僕はアニメ的なパキっとしたタッチより、ぼかした感じの絵が好きなんです。リツカさんは、そこからさらに質素にされたがるという。


── シンプルなのが好みなんですね。

リツカ:あんまりゴテゴテしてるのは好きじゃないですね。

ペンプロ:本来、デジタルレコーディングするべき人じゃないんですよね。彼女は遠く広くて、自然な音場があるようなミックスが好みみたいです。

リツカ:最近投稿しているのは、ほとんど自分でミックスしています。声が変わるのにすごく嫌悪感があって、音圧をそんなに掛けたくない。エコーやエフェクト程度ならいいんですが、頑張って歌った声を変えるというのはあんまり好きじゃないんです。

ペンプロ:今回は、いわゆる音楽活動をまったくやってないのに、ニコ動でスターダムに駆け上がっている「ありえない人」と一緒に、ありえないアルバムを作ろうっていう気持ちがありました。

 普通に曲を作ろうとすると、トランスだとかロックだとか、そういうジャンルの器に乗っかって、「こういうアレンジでしょ?」って無自覚に流されがちなんです。僕自身がそういう器の上でやってきたフシがあったので、器を抜け出したかった。その案内人がリツカさんだったという。イージーリスニング的な心地よさがあると思うので、ぜひ聴いてみてください。

リツカ: 何にも考えず聴いてもらって、受け入れてもらえたらいいなぁと。「まぁ車に載せてもいいかな」みたいに思ってもらえたら最高です。


──次は考えてます?

ペンプロ:気長に年単位のリズムで活動していきたいと考えてます。細く長くやっていって、気がついたらすごく長くやってたねみたいにできたら最高ですね。

(最後のページは、リツカさんによるアルバム名盤10選をどうぞ!)

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