Androidの隙を突ける可能性を持つが
モバイルビジネスのスピードに追いついていけるか
参加者のMeeGoへの高い期待の背景には、
●タブレットなど新しいセグメントの登場
●Android人気の反動
の2つがあるように見えた。
タブレット端末は「iPad」で市場が一気に立ち上がった。しかしNokiaはもともとインターネットタブレット(「Nokia 770」「Nokia N800」など)のジャンルでMaemoを使ってきただけに、MeeGoとしてもこの市場は重視していると思われる。
AndroidもSamsung「GALAXY Tab」など、タブレットがあるにはあるが、画面サイズは7型あたりが限界といわれている(iPadの画面は9.7型)。タブレットは現在iPadの独占状態にあり、うまく行けばAndroidの進化(もしくは「Chrome OS」の完成)に先んじることができるかもしれない。
なお、MeeGoは現在、UXとしてNetbook、Handset、IVIの3種類を持つ。タブレットをどうするのかはまだ方向性が決定していないようだ。
だがカンファレンス中に耳にしたAndroidへの不満は、技術面というより政治的なものが中心のようだ。たとえば、イギリスベースのコンサルグループであるCodethinkの担当者は、MeeGoのオープン性を高く評価していた。「Androidはロードマップが非公開で、大手ではない限り方向性がわからない」と語る。
MeeGoのLinuxカーネルに忠実なアップストリーム主義で、自社技術を貢献できる。これらは自社顧客に支持されているという。「技術的には完成していないし、未知数ではあるが、GPUの活用などAndroidにはない機能もある。潜在性は非常に高いと見ている」とのことだ。フィンランドのSI事業を展開する企業は、すでにMeeGoを利用した製品計画がいくつか進んでいるという。2011年初夏までには8~9型の画面を持つ端末が登場しそうだ、と教えてくれた。
気になるスマートフォンでは、Nokiaの存在がどう影響するのか楽観できない。そのNokiaは「2011年にMeeGoベースの端末を投入する」以外に公式にはコメントしていない。
一方で、ディスカッションではMeeGoに賭けたいベンダーから、物足りないという声も聞かれた。あるTVベンダーの担当者は、MeeGoのセキュリティを評価してAndroidではなくMeeGoを採用することにしたが、周囲からは「なぜAndroidを使わないのかと言われる」とのこと。顧客や社内を説得させるにあたって、「もっと視覚的にわかりやすい進化がほしい」とバージョン1.0から1.1の発展を不十分ともらしていた。
オープンソースプロジェクトのよさを生かしながら、プロジェクトの開発をうまくナビゲーションしてコミュニティの支持を得る。それだけではなく、動きの早いモバイルビジネスで競争を有利に運ぶ戦略も必要だろう。不可能ではないが、難しいタスクがMeeGoには待っている。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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