このページの本文へ

移行の壁「アプリケーション改修」の問題に挑む

HP Integirtyには「曳屋」施策で呼び込め!

2010年09月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

9月24日、日本ヒューレット・パッカード(HP)は、同社のUNIXサーバーである「HP Integirtyシリーズ」に関する記者記者懇談会を開催した。ここでは2010年上半期の成果をアピールし、導入を促進するための下半期の施策が披露された。

プロセッサーの速度が勝負ではない

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 本部長の上原宏氏

 記者懇談会においてHP Integrityシリーズの現状を語った日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 本部長の上原宏氏は、にわかに競争が激化するUNIXサーバーの現状を説明した。2月にインテルからItaniumプロセッサー9300番台、IBMからPOWER7と搭載サーバーが同時に発表され、4月にHPが第2世代のHP Integrityを市場に投入した。

 第2世代HP Integrityは、ハイエンドサーバーであるHP Superdome 2をはじめとし、同社が得意とするブレード型のアーキテクチャを採用。製品のコンセプトはミッションクリティカル分野の先進的な顧客層に受け入れられ、「第2世代HP Integrityは金額シェアNo.1を獲得しており、ここに勝利宣言を出させていただく」と絶好調ぶりをアピールした。日経コンピュータの顧客満足度も第一位に輝き、実機体感センターも連日盛況であるという。

HP Integrityの絶好調ぶりをアピール

 上原氏はIBMのPOWER Systemを飛行機、HP Integrityを新幹線に例え、プロセッサー自体の速度が必ずしも重要ではなく、システム全体における実環境でのパフォーマンスに注目すべきという持論を展開した。HP Integirtyは実環境でのパフォーマンスに近いといわれるTPC-H@1000GBのベンチマークで1位になったという。また、9月14日に発表された国内初のHP Superdome 2採用事例を引き合いに出し「医療流通業界大手のスズケン様はシステム全体のパフォーマンスの重要度をいち早く理解し、ベンチマークの結果でSuperdome 2を選んでいただいていた」と述べた。

アプリケーションを作り直さず「曳屋」する

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部 担当マネージャー 山中伸吾氏

 好調を続けるHP Integirityだが、次の一手はやはり新製品の導入に慎重な層の取り込みだ。日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部 担当マネージャー 山中伸吾氏によると、保守的な顧客が新サーバーに移行できない最大の理由は「アプリケーションの作り直しや再テスト」だという。「作り直しはそれほどでもないのですが、再テストが大変。パッチを上げるだけで、膨大なテスト工数を経なければならないというお客さんも多いんです」(山中氏)とのこと。そのため、HPが下半期に打ち出す施策は、「アプリケーションの利用可能な期間をより長く」「新技術採用のためのアプリケーション改修コストを軽減」「Integrityプラットフォームへの引っ越し支援」といった内容。山中氏は、これらの施策を家を解体せずに移動させる工事手法である「曳屋(ひきや)」という名前で呼び、具体的な内容を説明した。

山中氏がアプリケーションの修正を行なわずに引っ越しできる「曳屋」施策をアピール

 まず前提として、HP-UXは発表時から最低10年という業界での最長のサポート期間を実現しており、ハードウェアの保守期限に関係なく、同じバージョンのOSを長期利用できることを改めて説明した。その他、「曳屋」施策は以下のとおり。

OpenVMSの新バージョン投入
OpenVMSの新バージョン8.4が発表され、第2世代HP Integrityに対応した。OpenVMSはDECのAlpha上で動作していたOSを元祖とし、1978年の誕生以来30年近い歴史を誇る。現在でも制御系を中心に国内でも1000システムが稼働しており、世界のマイクロプロセッサーの生産ラインの約90%で利用されているのが現状だという。新しいOpenVMSでは、これらで動作するアプリケーションを改修せず、新技術を利用できるメリットがある。出荷は2010年11月の予定。
HP9000の再生製品特別キャンペーン
2008年に販売終了したPA-RISC搭載のHP9000サーバー本体やオプションの再生製品を特別価格で提供するという施策。再生(Renew)とは、HP自体がデモ機や引き取り品を再生処理を施し、新製品の同一の品質と保証を実現した製品で、いわゆる中古品ではないという。既存のHP-UXサーバーの継続利用が不可能になった場合、このRenew製品でアプリケーションの移行期間を乗り切り、第2世代Integrityに安心して移行できるという。
第2世代Integirty先行貸出プログラム
予算の執行可能になる期間が遠く、移行期間が十分にとれない場合、第2世代Integirtyを最長6カ月先行して貸し出すサービス。移行期間を長くとることにより、確実なアプリケーション移行を行なえる。2010年9月24日より開始。
HP-UX移行工房
 Sun Solaris、IBM AIX、Linux、WindowsからHP-UXへの移行を支援するサービス。昨年2月から立ち上げたSolaris Migration Centerの対応を大幅に拡大したもので、移行後のコスト試算を無料で提供するコスト削減提案や移行方法の検討支援、そして具体的な移行支援サービスを提供する。

移行を促進するための「曳屋(ひきや)」の各施策

 現状、金融機関を中心に流通や通信業界で、すでに多くのSuperdome 2の事例が進行しているという。ミッションクリティカル領域では、「メインフレームからの移行、x86サーバーへの移行、他社UNIXサーバーからの乗り換えなど、戦場は決まっている」(上原氏)ということで、各種の「曳屋」施策でHP Integrityへの移行を促進する。

カテゴリートップへ