タブレットにテレビに組み込み機器
Atomの用途拡大をアピール
次に登壇した、エンベデッド&コミュニケーショングループ担当副社長のダグラス・デイビス氏は、Atomを組み込みプロセッサーとして使った応用事例と、新しい組み込み向けAtomについて講演した。まずはAtomを組み込んだタクシー用の広告装置やオートバイなどを紹介。組み込みのさまざまな分野にAtomが普及していることを示した。
ネット接続機能を持つ「Smart TV」向けのAtom CE4100シリーズも紹介され、マイクロソフトのSmart TV向けソフトを動作させるデモも披露された。IDF初日の基調講演では、同じくAtom CEシリーズを使う「Google TV」が紹介されたが、今日はマイクロソフト製品を紹介することでバランスを取った、というわけだ。
デモされたのはEmbedded Windows 7の上で動作するWindows Media Centerで、Atom CEシリーズ向けに最適化されたものだ。ただしマイクロソフトによれば、製品の出荷は2011年になるという。最大の特徴は既存のWindowsとの連動。家庭内のネットワークにWindows 7のPCがあれば、そのライブラリをテレビ側からも相互に利用可能だ。競合他社の動向を考慮して、「競争可能な価格」でOEMメーカーに提供されるという。
続いてデイビス氏は、Atom CEシリーズに新しい「Atom CE4200」を追加したことを発表した。これはコードネーム「Groveland」と呼ばれていたもの。H.264 エンコーダーを内蔵するなど、STB向けに性能を強化したものだ。すでに韓国サムスン電子などが採用を決めているという。
既存のAtom Zシリーズを採用するタブレットもいくつか紹介された。これらは大きく分けて、Windows系、MeeGo系、そしてAndroid系に分かれるようだ。ただし、紹介されたタブレットのいくつかはODMメーカーが作ったもので、これが直ちに市場に登場するものではない。
そのうちのひとつ、韓国Ocosmos社の「OCS-1」は、液晶ディスプレー両端にカーソルキーなどがある、一見プレイステーション・ポータブル風の機器だ。液晶ディスプレー部分はスライドして、下からキーボードが出てくる。Windows 7が稼働し、ゲームでの利用を想定しているという。
デルが開発中のOak Trail搭載タブレット「Dell Inspiron Duo」も披露された。これは一見するとピュアタブレットだが、構造的にはノートPCなどと同じくクラムシェルになっている。クラムシェルの天板側は、枠以外のディスプレー部分が回転するようになっており、ディスプレーを外に向ければタブレット、内側に向ければ通常のノートPCのように利用できるというものだ。ピュアタブレットとして見ると、クラムシェル構造やキーボードの分厚くなってしまうが、キーボードを使った作業の場合には、現行のノートとまったく使い勝手が変わらない。
メールやウェブを見るだけというライトな使い方のときには、タッチで簡単に使えるタブレットは便利だ。しかし、いざ長文のメールを書いたり、文書を作成しようとすると面倒になる。ライトな使い方しかしないユーザーには人気のタブレットも、仕事で使いたいユーザーには意外に人気がない。
その点、デルのInspiron Duoは、ヒンジ機構が複雑で小型化や軽量化が難しかった従来のコンバーチブル型タブレットと違い、ヒンジ機構は従来のノートPCと同じというメリットを持つ。このInspiron Duoは、2010年末までには出荷予定だという。
デイビス氏は組み込み機器分野にも触れた。Atomシリーズでは、組み込み市場向けのコードネーム「Tunnel Creek」が2010年春のIDF北京で発表されたが、これが「Atom E600」シリーズとして正式に発表された。E600では、PCI Expressを周辺機器接続用としてCPUから出力しており、接続するチップセットにはインテル純正のコントローラーハブ「EG20T」のほか、サードパーティー製のチップセットも利用できる。そのサードパーティとしては、欧STマイクロエレクトロニクス社、台湾Realtek社、日本の沖電気の名が挙げられている。
PC用のCPUとは異なり、E600とチップセットのインターフェースは業界標準のPCI Expressなので、例えばFPGAなどで、E600用のカスタムチップセットを作ることも可能だ。今回インテルは、FPGAメーカーのひとつ米アルテラ社と共同で、E600とFPGAを同一パッケージにしたSoC「Stellarton」を開発したことを発表した。これは2011年の上期に登場予定で、インテル初の「コンフィギュラブル」なプロセッサーになるという。