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こだわり機器を聞く、最上の試聴室めぐり 第1回

伝統のJBLを、総額ウン千万円のシステムで聴く (2/2)

2010年07月26日 11時00分更新

文● ASCII.jp編集

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地下室に居座った38cmコーン2発の威容

 EVEREST DD66000は、JBLの60周年記念スピーカーとして、2006年に登場した製品である。38cmと大型のウーファーを2基搭載するほか、高域用に10cmと大型のコンプレッションドライバー(ベリリウム・ダイアフラム)、超高域を担当する25mmコンプレッションドライバーを搭載している。広域・超広域にはJBLの特徴である大型のホーンが付いている。2ウェイをベースに、ウーファー1個追加で低域増強、スーパーツィーター追加で広域も伸ばすという方式で拡張型2ウェイと呼んでいるとのこと。

やはり重厚感がある。下に2つ並んだ目玉みたいなのがウーファー。中央がメインで、外側は低域に厚みを加える補助的な役割だという。その上にホーンが2つ用意されている

 ハーマンインターナショナルの試聴スペースは、本社ビルの地下室が割り当てられていた。2Fの受付からオフィスに入ると、さらに別系統のエレベーターが用意されており、そこから一気に地下に降りられる。

無骨で重厚感あふれる姿態だが、見続けていると何となくロボットの顔のようなコミカルな印象を持ったりもする

 そして待望のご対面。仮にスピーカーを買うお金があったとしても、これだと床が抜けるな……いや、部屋が狭すぎて、俺が入れないのでは? などと貧乏くさい感想を持ちつつ、その迫力に圧倒される。写真でどの程度伝わるか分からないが、実際に見てみるとド級とか威容とかそういう言葉がピッタリと合うようなスピーカーだ。

ちょっと洒落た感じのリモコン台。犬って言うと別のメーカーの気もするが……

 何を聴くかと聴かれてちょっと迷ったが、重低音の聴いたロックでもかけていただきましょうか!ということで、何枚かディスクを試聴させてもらった。JBLというと、ちょっと泥臭いぐらいの音の充満感みたいなものを想像していたのだが、実際に聞いてみるとスパンスパンと音が立ち上がって、激しく叩かれたドラムにも機敏に追従してくる。

 そして低域から高域まで、とても見通しがよく、見た目の威圧感から想像が付くような深く厚い低域だけではなく、歯切れのいいハイハットとか、低域の支えの上にポンと乗っかった充実感あるタムタムとか、率直に言うとリアリティのある音。ソースに入ってるちょっとしたニュアンスも巧みに表現する繊細も併せ持っている。

 でっかいくせに、気も回る。そうですか! これがハイエンドの音なんですね! それ以外にもベースやらボーカルやら聞きたいだけ聴き続けて、爽快感満点の状態で試聴室を後にした。

JBLといえばやっぱり大型のホーン(音を広げるラッパ)。ソノグラスという素材が用いられている

背面にはゴージャスな型番を記したプレート

スピーカーケーブルの取り付け部。ちなみに使っているケーブルは銀製で、銀と結晶の間に純金を混ぜた特殊なもので、70万円ほどとのこと

前面のふたを開けると、各ユニットの出力レベルを微調整できるジャンパーが用意されている。部屋の特性などを加味して選ぶ

 JBLのこだわりのひとつに良質なユニットの開発があるのだという。最近では、iPod/iPhoneやPC用の小型スピーカーにもJBLのロゴを冠した製品が登場しているが、そのこだわりはそういった製品でも変わらない。JBLの設計/企画担当者は、こういったハイエンドシステムから小型スピーカーまで、同じ社屋の屋根の下で顔を突き合わせて設計しており、それが仮にiPodやパソコン用の小型のシステムでも、最適なユニットを選択した最上の音作りに励んでいるのだそうだ。

 音だけを聴けば、今回聞いたハイエンドのシステムと小型のiPodスピーカーのクオリティーは比べるまでもない。しかし、システムの大小に関わらず、開放的で敏感な音作りが、依然聴いたコンパクトなスピーカーと多くの共通点を持ち、それがにじみ出ていたことに少々驚かされた。同じ音の理想像を目指し、共通したマインドを持って開発していく姿勢を感じたのだ。

 ブランドというものが価値を持つのだとしたら、こうしたローエンドからハイエンドまでを通暁する一貫性というか、思想というものが長年の歴史の中で醸成されているからだろう。

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