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Oracle Cloud Computing Summit - Server & Storage Day Tokyo基調講演

オラクルとアイアンマンの共通点とは?

2010年07月01日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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日本オラクルは6月30日、“Oracle Cloud Computing Summit - Server & Storage Day Tokyo”と題するイベントを開催した。「新生オラクルが語る、真のエンタープライズ・クラウド」というサブタイトルからも分かるとおり、「サンとの統合を終えたオラクルのプライベート・クラウド向けのソリューション紹介」が中核的なテーマとして据えられていた。

ハードとソフトの統合

日本オラクル 常務執行役員 クラウド&EA 統括本部長 三澤 智光氏

 オラクルによるサン・マイクロシステムズの買収もすでに昔の話のように感じられるが、この6月で日本法人の合併作業も完了し、名実共に独立企業としてのサン・マイクロシステムズは消滅したことになる。今回のイベントでは、統合完了後初というタイミングもあり、事実上は「統合完了のお披露目」というニュアンスが感じられた。

 基調講演を行なった日本オラクルの常務執行役員 クラウド&EA 統括本部長の三澤 智光氏は、以前から「リアルなテクノロジーを踏まえ、テクノロジーを活用することで拓けてくる企業の新しい姿」を説得力を持って語り続けている人だ。今回はサンとの統合を踏まえて「オラクルのアーキテクチャにハードウェアプラットフォームが加わった意味」と「プライベートクラウド実現のために必要な技術要素すべてをオラクルが整備し終えている現状」を明らかにした。

 同氏はまず、同社が最近宣伝キャラクターとしている「アイアンマン2」の話題を取り上げた。そこでキャッチとして使われている「MAN. MACHINE. HERO.」と「SOFTWARE. HARDWARE. COMPLETE.」という2つの句の対比は、従来異なるものと認識されていた2つの要素が一緒になることで新たな進化が達成される、という弁証法的な発想のようだ。

 従来ソフトウェア企業だったオラクルがハードウェアという新しい力を得ることで「完全な(complete)ITシステム」を実現し、業界のヒーローになる、というメッセージだと受け取っておけばよいだろうか。映画の公開に歩調を合わせて始まったキャンペーンだと単純に受け取っていたが、サンとの統合完了ともタイミングを合わせていたようだ。そして、このキャッチコピーを見るだけで「オラクルはサンとの統合をどう位置づけたいと考えているのか」ははっきり分かるわけで、なかなか上手い展開である。

 次いで同氏は、2009年10月の「日経フォーラム 世界経営者会議」で米オラクル社長のチャールズ・フィリップス氏の講演内容から“「作らないシステム」の実現”というスライドを紹介した。「作らない」というのは、従来型の目的に応じて毎回ゼロから構築を行なうシステム開発のことで、今後のあるべき姿として期待される「作らないシステム」は、既存のリソースを活用し、短期間ですぐに実稼働に移せるITシステムであり、この変化を端的に表現すれば「On PremiseからCloudへ」ということになる。

「在るべき企業情報システムの潮流 - 作らないシステムの実現」

 三澤氏は「クラウドにはさまざまな定義がある」ことを指摘し、「オラクルとしては「次世代型情報システムを総称してクラウドコンピューティングと呼ぶ」といった極めて広範な定義を提示している。その点では、まだ同社の中核事業がプラットフォームミドルウェアや業務アプリケーションといったオンプレミス型のITシステムの提供に軸足を置いていることを改めて思い起こさせる。

 それはさておき、同氏は現状のパブリッククラウドが企業が利用するITシステムの全領域をカバーできるわけではなく、現時点での適用領域はさほど広くはないことを明らかにした上で、「現状のパブリッククラウドが適用できない基幹系システムに対して、パブリッククラウドのメリットである“俊敏性”“コスト最適化”を採り入れる」ことが必要だとし、これを「プライベートクラウド」(=より進化した企業情報システム)だと位置づけた。その上で、さらに企業でのプライベートクラウドの実装として「自由度は高いが構築作業負荷が高い」IaaS型と、「構築負荷が低く、高いQoSを維持できる」PaaS型に分類し、長期的にはPaaS型に移行すると考えられるとした上で、オラクルの製品群はPaaS型のプラットフォーム構築のための主要要素を揃えているとした。

「プライベート・クラウド・プラットフォームに求められる要件」 「プライベートクラウド:2つの形態」

 同氏が挙げた“サンとの統合によって整った”「オラクルが提供するミッション・クリティカル・プラットフォーム」を見ると、サン由来の製品として挙げられているのはほぼSolarisのみという状況だ。商用UNIXとしてはもっとも先進的かつ普及していたOSであるSolarisがプラットフォームとして魅力的なのは当然だが、仮想化技術として挙げられている“Solaris Container”やファイル・システム“ZFS”もSolarisに含まれる要素と考えると、サーバ/ストレージのハードウェア製品以外にはほぼSolarisのみが生き残るという意味に理解できなくもない。LDAPサーバーなど、サンのエンタープライズ向け各種サーバ製品のユーザーにとっては気になる点だろう。

「オラクルが提供するミッション・クリティカル・プラットフォーム」

 ともあれ、オラクルはサンとの統合作業を終え、“新生オラクル”としてプライベート・クラウドを軸にした戦略を展開してくることは間違いない。すでにこの市場は激戦区であり、事実上エンタープライズターゲットのITベンダーは、全社この市場を見ているといっても過言ではない状況だ。オンプレミス向けのプラットフォームミドルウェア製品中心と見られがちなオラクルが、どうやってこの市場で「統合の価値」を実証していけるか、今後の興味はその点に絞られそうだ。

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