2010年5月10日、東京学芸大学の大学院生たちの「電子書籍」についてのワークショップに参加させてもらった。彼らには「2017年のデジタル教科書」というテーマが与えられていて、数人ずつのグループで検討してきたものをレビューしてもらった(関連記事)。わたしが加わったグループは留学生が多く、日本人4人、中国人2人、タイ人1人だった。日本人のうち1人はお子さんのおられる方で、1人は聴講生、そして中国人の1人だけが男性である。
教師を目指している学生たちだけあって、パソコンのリテラシーは一定以上にあるようで、iPhoneの利用者も1人いた。彼らは「女子高生の1日」という内容で、2017年のデジタル教科書をプレゼンしてくれるという。
「デジタル教科書」で目覚める
とある女子高生の1日
2017年のある女子高生の1日……まず朝は、“デジタル教科書の目覚まし機能”によって目覚める。すぐに“デジタル教科書が彼女の全身をスキャン”して、体調を確認。必要があれば適切なアドバイスをする。朝食に何を食べたのかも、“デジタル教科書”が画像認識して記憶する。
「朝起きるところから教科書の出番ですか?」とわたしは言ったが、学生たちはその点に違和感を持っていない様子。教科書なので、授業中での大活躍はいうまでもない。
タイの留学生が説明してくれた美術の授業では、3Dメガネをかけてバーチャルな自然の中に入り、それを2次元の絵としてスケッチするそうだ。端末は、iPadみたいなタブレットと、分離可能なiPhoneくらいの子機からなっている。相当の表現が作り込めるようになっているようで、「大きな素材や道具を運んだりする必要がない」と説明していた。
“紙”の教科書ではできないことで、ネットワークに繋がっているのも当たり前。その結果、「学校とか授業というのはどうなってしまうのか?」、「教師というのはどのような立ち位置になるのか」、「図書館はどうなるのか?」など、話を聞くといろんな意見が返ってくる。大人のシロートのわたしが考えるくらいのことは、教師を目指している人たちだから当たり前かもしれないが、どんどん出てくる。
わたしがまったく予想していなかったのは、“放課後のデートのコンシェルジェ”ともいえる使い方だ。昼休みに、恋人とテレビ電話的なコミュニケーションで連絡をとる。デートのコーディネート機能もあり、GPSを使って待ち合わせにも生かされている。『花より男子』の世界が、想定としてはやはりあるわけなのだろう。