1万2000コア、1PBの度肝を抜くデータセンター
データセンターには、レンダリングファームなどの用途で使用するブレードサーバーが整然と並んでおり壮観だ。DreamWorksとHPの長年にわたる協業体制は有名だが、担当者の話によると、ハーフハイト(1台あたり0.6U)ブレードサーバー(HP ProLiant BL460c)で統一されているようだ。
1のラックにつき16ユニット×3段=合計48台のサーバーが収められており、ラック1本当たりの消費電力は18kWとのこと。HP ProLiant BL460cは、クアッドコアのXeon 5500/5600番台を2基搭載可能なため、1台につき8コアの収納が可能である。クロック周波数は2.6GHz。データセンター全体のコア数を合計すると実に約1万2000コア、メモリーは96TBに上るというから気の遠くなるような数字である。
まさに最新テクノロジーのフィールドテストが行われている現場だ。
3Dアニメーションの制作には莫大なCPUリソースが必要になるのは素人考えでもすぐ分かるが、ここまでの数1ヵ所に集約し、稼働しているケースは少ないのではないだろうか。
ストレージ容量に関してもずば抜けている。DreamWorksの場合、3Dアニメの制作には作業用に保管するデータも含め、作品1本当たり約100TBの容量が必要だという。それだけでも驚くべき数字だが、データセンターにあるSASのHDDを合計すると、全体では1PB(ペタバイト=1000TB)の容量に上るという。
レンダリングファームは900人のアニメーターが同時に利用するが、バックアップ体制も万全で、常に3つのコピーを置いているという。
ネットワーク環境に関しては、サーバー間の接続に10GbitのEthernetが導入されているが、社内LANはGigabit Ethernetとのこと。
騒音や熱も相当なものだが、データセンター内のエアフローに関しても細かく管理されており、リモートで室外から温度状態を確認できる。空気を効率よく回すため、ラックは浮かせた状態で設置されていた。免震構造にも配慮しており、データセンターの施設は、M7.5の地震にも耐えうる構造となっているとのこと。
Haloの原型となったクリエイティブな会議システム
DreamWorksとHPの協業から生まれたプロダクトとして有名なものにビデオ会議システムの「Halo」がある。
2006年8月に発表されたHaloは、3台の50インチハイビジョンディスプレーを使用。離れた場所にある2つの会議室が、あたかもつながったひとつの場所であるように感じさせるために、机や会議室の遠近感まで合わせてある。筆者もインタビュー取材で過去に1度利用させてもらったことがあるが、等身大で映し出された取材対象者のリアリティーに関しては驚かされた。
このHaloの原型となったシステムはいまもDreamWorksで活用されている。離れた場所にありながら一体感を感じさせるヴァーチャルな空間という発想はもともとDreamWorks側のアイデアだ。
オリジナルのシステムは最大12人で話すことが可能。バーチャルな机の向かい側にいる相手は、ニュース番組のキャスターのように見えるが、机の下からのぞく相手の足の動きまで表現されるので、「態度でウソをついてもすぐわかる(笑)」(DreamWorks担当者)ほどのリアルな利用感だ。
2002年11月に開発が開始され、2003年3月に完成した。現在DreamWorksの主要拠点は3ヵ所にあり。約2000人が働いている。割合としては、米国カリフォルニア州のグレンデールに1300人、レッドウッドシティーに450人、そしてインドのバンガロールに250人。クリエイティブな作業には密なコミュニケーションが不可分で、ストーリーボードを相互に確認しながらリアルタイムの打ち合わせをするなど、効果的に活用されているという。