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「BlackBerry Day2009」レポート

最強モバイルビジネスツールの実力をアピール

2009年11月27日 10時00分更新

文● 行正和義

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 11月26日と27日、東京国際フォーラムにて「BlackBerry Day2009」が開催された。これはBlackBerry関連の製品・サービスを開発する各社のパネル展示およびカンファレンスのイベントだ。NTTドコモと、BlackBerryを開発したリサーチ・イン・モーション(RIM)が主催している。

 開幕に合わせて行なわれた、RIM副社長のデビット・ウォーザック氏のプレゼンテーションでは、QWERTYキーボードの搭載、強力なセキュリティー機能、既存の社内システムとの親和性など、BlackBerryがいかにビジネスツールとして使えるかをアピールした。

デビット・ウォーザック氏

BlackBerryがビジネスを革新するツールになることは、さまざまな企業によってすでに実証されている――と語るRIMのヴァイスプレジデントのデビット・ウォーザック氏

 移動中にメールの閲覧や返信、ドキュメント作成などをこなし、社内の顧客管理システムにも出先からアクセスできるなど、従来のビジネスサポートツール(いわゆるPDA)とは一線を画す、とメリットを強調。短縮できない移動時間の有効利用や情報伝達、意思決定を円滑にこなして、ビジネスそのものを改革するだろう、と来場者に訴えかけた。

米国での導入事例

米国での導入事例。社内システムに社員がどこからでもアクセスでき、販売員や作業員が会社に戻ることなく顧客先を回れるという利点が、コスト削減に結びついている。このほか、ワシントンの退役軍人病院の事例として、心電図を医師のBlackBerryに送信することで、出先からでも容態がどれほど緊急性があるかを判断できるという

 同じく主催社のNTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏は、日本IBMやコマツなどの導入事例を挙げつつ、ビジネスシーンで利点を説明した。数あるスマートフォンの中でも“最初からビジネス向け”として開発され、導入が容易で、現状のユーザー人口(=導入した企業数)が支えるソフトウェア基盤の強さが大きな利点になる、と自信を見せた。

辻村清行氏

NTTドコモの代表取締役副社長の辻村清行氏。年間出荷台数4000万台と言われる日本の携帯電話市場の中では、まだ10%にも満たないスマートフォンだが、その中でもBlackBerryを推す理由は、企業での利用を最初から考えて作られていることだという

 確かにBlackBerryは、全世界で3200万人というユーザー数に加えて、対応ビジネスアプリケーションの豊富さでも携帯電話・スマートフォンの中で群を抜いた存在だ。BlackBerryは、企業用途では「BES(BlackBerry Enterprise Service)」と呼ばれるサービスを経由して企業のグループウェアに接続、中小企業や個人は「BIS(BlackBerry Internet Service)」を経由してメールやWebサービスを利用するのだが、いずれもBlackBerry用のサーバーアプリケーションやツール群、Webアプリケーションなど、膨大なソフトウェア資産がある。

BESとBISの違い

会場で配布されたNTTドコモの資料より、BESとBISの違い

 BESはインターネットアクセスと企業の社内システムを橋渡しするためのサーバーで、外先からでも社内の各種システムをそのまま利用できるのが特徴だ。もちろん企業のシステムに合わせたアプリケーションは必要となるが、各種セキュリティー機能や端末ごとのアクセス制限、通信環境の設定、紛失時のBlackBerry内の情報の消去など、ほとんどの管理・運用業務がBESサーバー1台で行なえる。導入や運用のしやすさが企業にとって大きなメリットとなる。

 これに対して、BISは個人でも利用できるインターネットアクセスで、単にWebサイトへのアクセスやメール送受信の機能を提供するもの。会社で運用しているグループウェアにはアクセスできなくとも、Google AppsのようなWebサービスを用いることで各種アプリケーションの利用や情報共有、データ管理などが可能になり、PIM(個人情報管理ツール)として、あるいは中小企業のメール・ドキュメント共有サービスとしてBlackBerryを活用できる。

国内におけるBlackBerry導入事例。たとえば1日あたり100件近いメールを受信してそれらに返信し、上司に承認を得て、さらに別のメールを出すという業務では、サイクルの中の社員1人が移動中(メールを読めない環境)でも、そこがボトルネックになる。BlackBerryのソリューションでそれを回避できる、と説明

 BlackBerryビジネスに乗り出す各社の展示は、それぞれのサービスを具体的に見せる簡単なものではあったが目を引く内容も多い。Googleは、BlackBerry用のGoogle Appsをアピール。Google Appsは、単にモバイルでPCと同様のデスクトップ環境を提供するというだけでなく、ビジネス向けのクラウド・サービスを多方面に展開している点に注目したい。

展示ブースの模様

各社の展示は1社1ブースと小じんまりしたもの。といっても当然のことながら、数千ユーザー規模の企業システムも含まれている

英Neverfail社の「Neverfail」

BlackBerry-BES-企業システムという、一般的な構成にも弱点はある。それを補なうシステムも開発されている。バリューエンジンが販売する英Neverfail社の「Neverfail(障害対策ソリューション)」は、BESそのものをアクティブバックアップするシステム。また、PDFやOffice文書に対応するドキュメントリーダも扱っている。これは、BlackBerry標準のリーダーが日本語が正しく表示できないことがあるため

 また、社内グループウェアとBESの接続はBlackBerryの一般的な利用形態だが、メールの送受信に特化したサービスも、導入しやすい一形態として見ると面白い。また、社内にサーバーを置くBESと、Google Appsのようなクラウド化されたツール群を利用するBISのの中間とも言える、SaaS型グループウェアとの連携も見受けられた。企業・中小企業・個人まであらゆるビジネスシーンでBlackBerryの利用形態が模索されていると言えそうだ。

Google Apps

GoogleもAndroid(同社の携帯OS)一辺倒ではなく、Google Appsを用いたさまざまなビジネス提案に継続的に取り組みんでいる。BESを導入した企業向けではなく、BISを用いた個人/個人事業主/中小企業向けのクラウドサービスも豊富だ

コムチュアの「『外』でもNotes」

コムチュアの「『外』でもNotes」。もともと基幹業務システムとの連携を図るのがBESの役割だが、本製品はBlackBerry上でNotesの操作性をそのままに社内システムを利用可能にするという。2010年発売予定

 辻村氏のプレゼンテーションによれば、米国ではスマートフォンが携帯電話市場の23%を占めるのに対して、日本国内の普及率は約3.7%にとどまる。これは米国の携帯電話(非スマートフォン)がショートメール程度の機能しか持たないのに対して、日本の携帯電話は多くがWebブラウザーを標準搭載するなど最初から高機能なことが要因だ。とはいえ、見方を変えれば日本市場はまだまだ伸びる余地のある市場とも言えるだろう。

 iPhoneやAndroid、Windows Mobileなどのスマートフォンが携帯電話の中でひとつのジャンルとして、ようやく確立した現在、最初からビジネスシーン向けに開発・成長してきたBlackBerryがアドバンテージを生かせるか。今後の動向がますます楽しみだ。

NTTデータの「MaDore」

NTTデータの「MaDore」。SaaSプラットフォームからでもBlackBerryに接続可能なことをアピール。BESで用いる社内システムほど大規模ではなく、BISとGoogle Appsようなクラウドサービスとも違うオンライン業務システムは、中小企業に多く導入されているだけにこのシステムが普及すればBlackBerryを活用しやすいだろう

IBSジャパンが扱う「REDFLY Mobile Companion」

BlackBerry用のハードウェア(周辺機器)も展示された。IBSジャパンが扱う「REDFLY Mobile Companion」(左)はネットブックではなく、BlackBerryの外部キーボード+外部ディスプレー。余裕のあるサイズのキーボードと大型液晶により、文章入力の効率がアップする。REDFLY Moble CompanionにもVGA出力端子は付いているが、「SHOEMATE」(右)を使えばBlackBerryからBluetooth接続でモニター出力を行ない、プロジェクターなどと組み合わせての手軽なプレゼンテーションが可能となる


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