LGA1156プラットフォームでの検証
そこで、今度は最新のLGA 1156プラットフォームで検証してみた。P55チップセット搭載マザーのなかには低電圧メモリをサポートする製品があるからだ。OSも前ページまではWindows Vista Ultimateだったが、今回は最新のPC構成ということでWindows 7 Ultimateに変更している。テスト方法は先と同じで、比較用に通常のDDR3 DIMMを用意し、OS起動後しばらく放置した状態(アイドル時)の消費電力と、TMPGEnc 4.0 XPressを利用してHD動画のエンコードを行なわせた際の最大消費電力(高負荷時)をワットチェッカーで計測した。もちろん、ここで計測しているのは、システム全体の消費電力であり、メモリモジュールのみの消費電力ではない。
テスト環境 | |
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CPU | インテル「Core i7-860」(2.8GHz) |
マザーボード | ASUSTeK「P7P55D」 |
メモリー | DDR3-1333 1GB×2または2GB×2 |
ビデオカード | ATI Radeon HD 4670(メモリ512MB) |
HDD | Western Digital「WDF10EADS」(1TB Serial ATA) |
OS | Windows 7 Ultimate(32bit) |
グラフィックドライバ | ATI Catalyst 9.10 |
検証で利用したマザーボード「P7P55D」のBIOS更新履歴を確認したところ、2009/9/8付けのバージョン「0606」の更新内容に「Support Low Voltage DRAM Module」という記述がある。検証は、BIOSを執筆時点での最新バージョン「0711」に更新して行なったので、この更新内容も反映されているはずだ。
消費電力は2~5W減少
今回利用したマザーボードでは、BIOS更新内容として「Support Low Voltage DRAM Module」という項目があったが、実際にGeILの低電圧メモリモジュール「Green Series」を装着して調べたところ、自動的にメモリ電圧が1.3Vに変更されるわけではなく、メモリ電圧は変わらなかった。そこで、低電圧メモリ装着時は、手動でメモリ電圧1.3Vに設定し、通常のDDR3 DIMM装着時は、メモリ電圧をAutoに設定した。
結果は下の表に示したとおりだ。1GB×2でも、2GB×2でも傾向はほぼ同じで、アイドル時は2~3W、高負荷時は5Wほど通常のDDR3 DIMMに比べて、消費電力が減少している。前編で検証したLGA1366プラットフォームと比較すると、1GB×2の場合、アイドル時の消費電力の差はほぼ同じだが、高負荷時の差はこちらのほうが約2倍になっている。
また、LGA1366プラットフォームでは、2GB×2の場合、アイドル時、高負荷時ともに消費電力が1Wしか違わなかったが、LGA1156プラットフォームでは、2GB×2でも1GB×2の場合とほぼ同じ差が出ている。今回テストしたLGA1156プラットフォームのほうが、前編でテストしたLGA1366プラットフォームよりも、低電圧メモリモジュールの効果が大きいといえるだろう。
2~5Wという差はそれほど大きいものではないが、前編でも解説したとおり、メモリモジュールの消費電力はシステム全体の消費電力のせいぜい1~2割程度なので、この結果は妥当である。
低電圧メモリモジュールはオーバークロックにも向く
低電圧メモリモジュールは、本来は消費電力や発熱を減らすためのものだが、実はメモリオーバークロックにも向いた製品である。低電圧メモリモジュールに使われているメモリチップは、本来1.5Vで動作するチップから、1.3Vでも安定動作する優秀なチップを選別したものだ。メモリやCPUなどのCMOS半導体は、動作電圧を上げるほど高速に動作するという特性がある。より低い電圧でも安定動作するということは、電圧を上げてオーバークロックの限界を狙う、いわゆる喝入れのマージンが大きいということになる。通常、定格電圧の10%~15%アップくらいまでなら、チップが壊れる可能性はほとんどない。
通常の1.5V動作のメモリモジュールなら、1.7Vくらいまでなら大丈夫だ。その場合、0.2V電圧を上げたことになるが、低電圧メモリモジュールに使われているチップも、本来は1.5Vで動作するチップであるため、同じ1.7V程度まで電圧を上げても問題はない。その場合、0.4V電圧を上げたことになり、より高いクロックでの動作が見込めるわけだ。
もちろん、オーバークロック動作は、メーカー保証外の行為となるが、パフォーマンスの限界に挑戦したいのなら、挑戦してみる価値はあるだろう。GeILの低電圧メモリモジュールは、エコ志向の人はもちろん、性能にこだわるオーバークロックマニアにもお勧めできる。
(次ページへ続く)