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Zシリーズは仮想化とTeslaに注力──米HP副社長に聞く

2009年08月12日 09時00分更新

文● 秋山 文野

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 堅牢なボディーに高性能を詰め込んだHP「本気」のハイエンドワークステーションZシリーズ。3月末(米国時間)の発表後、最近になって水冷モデルが追加されたほか、メモリ最大容量192GB搭載モデルも出荷を控えている。

米HP ワークステーションのグローバルビジネス部門の副社長・統括責任者のJim Zafarana氏

 Xeon5500番台の強力な処理能力と、魅力あるディテールを持つZ800シリーズだが、どんなユーザーになら「手が届く」のか? HPは想定するターゲットとは? 米HPでワークステーションのグローバルビジネス部門の副社長・統括責任者を務めるJim Zafarana氏、日本HP パーソナルシステムズ事業統括/ワークステーションビジネス本部 本部長の小島 順氏に聞いた。


仮想化の利便性を訴求したい

── Zシリーズの状況をアップデートしていただきたいと思います。最近の事例を教えていただければ。

Zafarana 米国3月に実施したプレスミーティングでも紹介しましたが、Zシリーズは「Parallels Desktop」をCTOのオプションとして紹介できている唯一のワークステーションです。Paralles Desktopは複数のグラフィックスカードをサポートしているので、OSごとに異なるビデオカードを割り当てることも可能です。

Parallels Desktopを利用した仮想化、NVIDIA Teslaへの対応などが紹介された

 1台のワークステーションで複数の環境を扱いたいというユーザーに価値を提供できると思います。こうした構成が役立つのは、例えばゲーム業界でしょう。PCゲームの開発では、Windows XPやVistaなど、OSごとにテストが必要になります。またCADではLinuxとWindows XPを同時に使いたいというニーズもあります。

 これまでは個別にマシンを用意していたわけですが、Z800なら1台で複数のテスト環境を実現できるわけです。設備投資や設置スペースの点では非常に有利であり、なおかつマルチコアXeonのデュアルCPU構成であれば、最大16スレッドまで扱えるわけですし、パフォーマンスに妥協する必要はありません。Parallels導入は、Z800のバリュープロポーションをさらに高めると考えています。


NVIDIA Teslaなどを研究開発分野向けに

──パフォーマンス面での強化もさらに進んでいるようですね。

Zafarana 「GPUのフルパフォーマンスを得たい」というお客様の要望への回答として、Z800シリーズのCTOオプションにNVIDIAのTesla GPUを採用することとなりました。こうした機能を求めているのは、大学、政府系研究機関、先端的企業などです。Z800というすでに出荷済みのモデルに搭載するわけですから、HPがきちんとテスト、最適化をしているという安心感を持っていただけると考えています。

 アジアではすでに、中国、韓国などで意欲的な導入事例が出てきています。日本の研究者も、「デスクの上にスーパーコンピューターを持てる」という感覚で使っていただけたらと思いますね。もちろんCADやデジタルコンテンツクリエーションなどのアプリケーションを利用する領域にも入っていけると思います。


ビデオ会議システムなどと絡めたソリューション展開も

──パフォーマンス向上へのメリットは理解できました。ただし、景気後退が設備投資に与える影響は大きいと思いますが……。

Zafarana 世界的な動向として、どの国・地域も厳しく、どの産業も不況の影響を受けています。とはいえ、景気も底を打ってきた感があり、これから弾みが付いてくることを期待していますが、依然としてコストカットが大命題です。

 例えば「出張費」といった部分をとっても、3割も5割もカットしなくてはならない。それでもいろいろな分野と協調、コラボレーションはしなければならないわけですね。

 そこで今秋HPが提供するのが、ビデオカンファレンス+コラボレーションシステム「HP SkyRoom」です。最大4拠点を結んで、カンファレンスを行うだけでなく、デスクトップの必要な部分だけを切り取ってシェアする、見せるという機能を備えています。3D CADや、HD動画といった多様なリッチメディアをお互いに見せ合いながら会議できるわけですね。

 1対1、1対3、多対多の環境でもコラボレーション可能です。価格は今秋発表ですが、すばらしいバリューを提供できると申し上げておきます。SkyRoomとZワークステーションとの組み合わせによって、仕事の仕方ががらりと変わると思います。


静かなオフィスで作業効率アップを

──パフォーマンス、コスト削減への貢献はもちろんですが、Zシリーズは職場環境改善に配慮した部分も多くありますよね。

Zafarana これから出荷する水冷モデルででは、デュアルコアCPU、大容量メモリー、ハイエンドグラフィックスカードなどを使った構成で、最大60dB騒音をカットできます。

小島 研究者やデザイナーにとって、騒音が作業効率に与える影響は実はかなり大きいのですよね。日本ですと、ミニタワーの相当大きな筐体でも机の上に置くことがあるので、向かい側に座って作業する人に排気が顔に当たって困る、といった独特の問題もありました。水冷ならそういうことがないわけです。集中力をそぐ問題はどこでも起きるわけで、こういった点も導入の理由になることがあると思います。デスクトップ環境から台風をなくしましょう。

Zafarana Z800ではインテグレーテッドハンドルですから、社内の配置換えの際に移動運びやすい、チーム組み替えの作業もしやすいという特徴もあります。底面にはそりのようなレールがついていて、カーペットの上ではすんなり滑らせて移動するといったこともできる。

──細かいディテールからクラフトマンシップを感じますね。

Zafarana 細かい部分を苦労して造り上げましたから、ぜひ中を確認して欲しいですね。従来のモデルではサイドパネルをはずすと、さまざまなラベルが貼ってありましたが、今回全部アルミにエッチングしています。小さなことですがこれもエンジニアのこだわりなんです。

 さらに電力消費の面でも、フルパフォーマンスでの電力消費量を従来モデルから5%カットしています。アイドル時には最大消費電力から40%カット、例えば120Wが60Wになるわけです。そしてスリープ時には、62Wから5Wになります。従来モデルでは、システムをシャットダウンした後でも、プラグがささっていると、微弱な電力を消費していました。Zシリーズでは「HPワットセイバー」技術を導入し、2.1Wから0.5Wへ、ほぼ完全に電力消費をなくすことができています。環境に優しくコストも削減できる、という二つのゴールが達成できるのです。


Dreamworksは、Z800へ移行

── 発売から3ヵ月が経っていますが、実際にはどのような構成を選ばれる方が多いのでしょうか。例えばDreamworksの例などを聞かせてください。

Zafarana 国や地域、また用途によって違いがあるため、一概にこの構成と言うことはできません。Dreamworksを例にとると、従来のxv8400からZ800への移行がかなり進んできています。

 こういった3Dアニメーションの分野での典型的な構成は、Xeon 5500番台のデュアル構成、Quadro FX4800グラフィックスカード、8~12GBメモリー、500GBのHDDといったあたりではないかと思います。

 エントリーレベルのモデルなら、Xeon 5500/3500番台のシングルプロセッサー、4GBメモリ、256GBのHDD、Quadro FX1800グラフィックスといったところでしょうか。また、True Color Monitorとのセットにして、ハイエンドモデルを求める傾向も強いと思います。

 2009年は世界的な不況の中、どの産業も景気後退のあおりを受けているのは確かだ。とはいえ、それぞれの地域がそれぞれのペースで景気回復に取り組んでいる。製造業などで投資が絞られている一方で、デジタルコンテンツクリエーション、あるいは政府機関などへの納入は堅調だという。

 Zシリーズはハードウェア的にもこだわった製品となっている。「実際に見られないのか」という要望があるなか、量販店での展示も開始した。まずは、ビックカメラ有楽町店などで実機に触れられるというので、興味がある読者はぜひ一度足を運んでみてはどうだろうか。

訂正とお詫び:Zシリーズが展示されている店舗の情報に誤りがあったため修正しました。(8月12日)

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