日本ヒューレット・パッカードは5日、日本通信と提携し、プリペイド型データ通信機能を搭載したノートパソコン「HP Mobile Broadbandモデル」の販売を開始すると発表した。価格は通信機能のないパソコンに比べ5000~1万円程度上乗せになる見込み。NetbookのHP Miniシリーズ、タブレットPCなど、3機種から順次製品化していく。
これまでも携帯電話回線との接続機能を内蔵したノートパソコン(ワイヤレスWANモデル)が各社から販売されてきた。パソコン購入後にキャリアの窓口に出向いて開通作業が必要になったり、データ通信はそれほど使わない人にとっては定額の基本料金がかえって負担になるといった導入しにくさを感じさせる面もあった。
既存の通信内蔵パソコンの不満点を解消
今回の製品は日本通信の三田聖二代表取締役社長が「パラダイムシフト」と話すように、既存の通信内蔵型パソコンの不満を解消する試みが各種盛り込まれている。
まず、HP Mobile Broadbandモデルでは、出荷時にSIMカードのアクティベーションが済んだ状態で出荷される。パソコンには最初から1000円分(約100分間)の3G回線利用料金(ドコモのFOMA回線を使用)が含まれており、5分間の無料体験もできる。初回使用時には、電話でサポートセンターに自分のSIMカードの番号を伝えるだけで本人認証が完了。さらに専用セキュア回線を利用して、クレジットカード情報を登録しておく。
なお、SIMロックはされていないので、海外旅行などの際に、他キャリアの通信回線を利用できる可能性もある。
プレインストールされている専用ユーティリティーでは、人口カバー率100%の3G回線への接続、全国1万5000ヵ所の公衆無線LANスポットへの接続(1アクセスポイント:300円/日)、利用料金のチャージなどが可能。初回購入時でも電源を入れてユーティリティーの接続ボタンを押せば、簡単にネット接続できる気軽さがウリだ。料金を使い切った際には、このソフトから1000円、2000円、3000円、4000円、5000円、1万円の利用権を簡単に購入できる仕組みだ。
料金はパケット数ではなく、時間で課金される仕組み。これは「初心者の使いやすさを考慮した結果」(日本通信 三田氏)だという。
これはパラダイムシフト──日本通信 三田社長
発表会では、日本HP 取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業統括の岡 隆史氏が登壇し、「HP=“身近なパートナ”と感じさせるよう努力していきたい」とコメント。今回の製品についても、利益というよりも、ユーザビリティーや利用体験を高めることを中心に検討し、採用を決めたと製品化の経緯を説明した。
日本通信の三田氏は「これまでの通信内蔵パソコンは(ある意味)キャリアの製品。ノートパソコンはキャリアのサービスを使うための部品でしかなかった。しかし、今回の製品ではこれが逆転した。キャリアのサービスはHDDなどと同じように、パソコンを構成する部品の一部として提供される。製品、サービス、売上のいずれもHPのもの。HPはパソコンの付加価値を高める部品として、キャリアのサービスを採用すればいい」と従来のビジネスモデルとは根本的に異なる点を強調した。
日本HP マーケティング本部 本部長の平松 進也氏は、HP Mobile Broadbandモデルのターゲットとして外出先での作業の多い営業マンに加え、就職活動中の学生を挙げた。
学生にとってデータ通信専用の新たな回線に契約するのは大きな負担。長期契約の縛りや月額基本料金もなしで、就職活動期間だけ通信回線を使えるプリペイド方式はマッチするだろうとのこと。また、携帯電話より情報量の多いモバイルPCを1台持っておけば、就職活動のための情報収集には有利に働くだろう。
現在のデータ通信はパケット使用料に応じて通信料が増加するが、上限金額も設定されている「二段階定額制」が選ばれているのが一般的。そういった中、時間ごとに料金を先払いし、上限金額のない今回の方式では、ヘビーに使うユーザーには割高になる可能性がある。また、回線が込み合っていても同じ金額の料金がかかる。
ただし、プリペイド式でも導入時の敷居が低く設定されてている点やプリインストールで手間要らずな点などは大きな魅力で、導入はこれまでにないほど用意だ。外出先のメールチェックや緊急時のために、ワイヤレスWAN回線は使いたいが、毎月使うわけでもないし、月に数時間使えればいいというユーザーにとっては大きな魅力になりそうだ。