日本サムスンは30日、強い太陽光の下でも見やすい高輝度液晶パネルを採用した「窓際デジタルサイネージ・システム」を発売した。
屋外にディスプレーがおけない、2つの理由
液晶ディスプレーに、看板や広告を流す「デジタルサイネージ」は欧州を中心に普及が進んでおり、国内でも今後伸びていくことが予想される。ただし、LEDや電照式看板などが担ってきた対屋外用の表示ディスプレーを液晶ディスプレーで実現するためには、大きく2つの課題があったとサムスンは主張する。
ひとつは、従来主流だった450~500cd/m2、高くても700cd/m2程度の輝度では、明るい屋外で見るには輝度が足りず、視認性に難があること。もうひとつは、液晶の構造上、太陽光が当たると表面の温度が上昇し、液晶画面が黒く表示できなくなることだ。
日本サムスン DMC事業部 DMAチームの宮田隆チーム長は「おそらく数百万かけてクーラーなどを内蔵したディスプレーが、公園などに置かれているのをたまに見かける。しかし日中は暗くてまったく見えないケースが多い。地元のシネコンにあるディスプレーも昼間はまったく見えない」と自身の経験を紹介しながら、既存製品の問題点を指摘した。
高輝度パネルと独自の空冷システムで問題に対処
新製品「SyncMaster 460DRn S」は、コードネーム「窓際くん」が示すように、店舗のショーウィンドウやショールームなどの窓際に設置、屋外に向けて情報や広告を配信する用途を想定している。
まず液晶パネルに輝度1500cd/m2と高輝度なものを採用。屋外でも見られる明るさとした。また、温度対策として、液晶パネルの前面に空気が流れる約17mmの隙間をとり、ディスプレーの下側に設けた回転速度1850rpmのクロスフローファンで熱くなった空気を上部に吹き上げて排出する機構を採用している。
これにより、室温は10~30℃程度の一般的な室内環境で外向きにディスプレーを設置する際には問題ない性能を実現しているという。
色再現域はCIE1931の基準で50%と通常のディスプレーより劣るが、「素人目で見る分には大きな差を感じさせない」(宮田氏)し、そもそも室内と屋外で、色再現に求められる基準が異なるため、気にするほどの差ではないだろうという専門家の意見も得ているとのことだ。
パソコンと同等の機能を内蔵
また、SyncMaster 460DRn Sの内部には、Windows XP Embedded SP2、Athlon 64 X2 4450e(2.4GHz、デュアルコア)、1GBメモリー、4GBのSSD、USB 2.0×3、Gigabit Ethernet、10W+10Wのステレオスピーカーなど、パソコンに匹敵するコントローラーが内蔵されている。USBタイプの無線LANアダプターを装備することも可能だ。
Internet Explorer 6.0、Windows Media Player 9、リモートデスクトップ、Adobe Flash Player 9.0といったソフトも利用できる。
ここにパソコンなどで作成した再生用のコンテンツを転送すれば、簡単にデジタルサイネージを実現できる。キットにはコンテンツを作成するための独自ソフト「MagicInfo Pro」も付属しており、プレゼンソフトを使う感覚で、アニメーション付きの画面を作れる。複数のコンテンツを作成しておき、時間ごとに再生するものを変えるといったスケジューリング機能も搭載されている。
本体サイズは、横型の場合、幅1124.5×奥行き160×高さ773mmで、重量は約48kg。縦型の製品も用意されている。パネルサイズは46型で、解像度は1366×768ドット、コントラスト比は3500:1。視野角は上下左右178度。
今回の製品は屋内での使用を前提としたものだが、パートナーと協業して、完全屋外設置が可能な空調機能・防水防塵が得られるハウジングを用意して、秋以降投入していく計画もあるという。