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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第53回

僧職系男子・仁鐵/蝉丸Pが奏でる「仏教の新しい魅せ方」

2009年07月27日 13時00分更新

文● 古田雄介

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本当にやりたいのは「ニコニコ仏教講座」

―― 坊主めくりとニコニコ動画を含めて、仁鐵さんは仏教にからめたエンターテインメントを目指しているように感じます。これは仏教を皆にもっと知って欲しいという意識と、自分を見てくれというパーソナルな意識、どちらが強いんですか?

仁鐵 そうですねー……。テキストサイトを始めた当時から、前者の意識が強いように思いますね。修行以外にも色々と仏教の文献を読んできたんですけど、仏教哲学や仏教思想には現代にも通じる面白さがあると思っているんですよ。その楽しさを身近なネタと絡めながら紹介できればいいなというのが、昔から持っているコンセプトと言えますね。

 加えて、リアルとは別の立場で活動できるネットだと、宗派にとらわれず、仏教について色々紹介できるというのが大きいんですよね。自分は真言宗ですけど、実社会で仏教について文章を書いたり人に話をするときには、どうしてもその宗派の意向に添ったモノや、お年寄りに焦点を合わせたモノでないと駄目という風潮が強いんですよ。

 真言宗だと弘法大師・空海が宗祖ですから「弘法大師スゲー!」みたいな論調でないといけないワケで、日本の仏教宗派はだいたいそんな感じです。


―― たしかに、ネットだと所属のしがらみなしにハンドルネームで自由に書けますよね。

仁鐵 それで、旧サイト時代に「勧学院」という、仏教の歴史や仏教思想を解説するコーナーを作っていたんですよ。本当はそちらをメインコンテンツにしたかったんですけど、書いてる内に見解が変わったりして、いまだに未完成です。ただ、テキストだと弱いかなという思いはありました。

 だけど、音楽を流したり面白い画像を付けたりすれば、興味を持ってくれる人も出てくるんじゃないかと思ったんですよね。それが「ニコニコ仏教講座」になるわけです。

旧サイトの跡地から辿れる「勧学院」。この頃からすでにスラングを駆使した解説を試みており、対話キャラを使って会話形式で紹介するなどの工夫が見られる http://www7.ocn.ne.jp/~priest.1/kangakuinmain.htm


―― なるほど。ただ、「ニコニコ仏教講座」の公開は2009年3月で、仏具演奏シリーズの数ヶ月先ですよね。これには何か意図があるんですか?

仁鐵 はい。仏具演奏シリーズを最初にやったのは、仏教講座に使うBGMが必要だったのと、最初は何も考えずに楽しめるコンテンツで注目を集めたかったという理由からです。いきなり無名の人間が●●講座というのをアップしても、本当にクオリティの高いものを上げないと埋もれていくと考えたんですよ。

 実際、ニコニコ動画の「歴史」タグをみると良作がいっぱいあるんですけど、多くは再生回数が非常に少なかったりマイリストの登録が100にも満たなかったりという感じなんですよね。だから、多くの人に見てもらうためには、最初にキャッチーな動画から始めるほうがいいなと。

ニコニコ仏教講座シリーズ。2009年3月に4本アップされたのみだが、現在も新作を作成中だ。「ちょっと作り直そうという部分もありますが、これからポンポンっと出てくる可能性もあります」という


―― 仏教講座を楽しんでもらったら、次は坊主めくりに来てもらうという戦略はありますか?

仁鐵 いえ、ニコニコ動画内で完結しちゃえばいいかなと思いますね。もちろん自分のサイトに来てもらえれば嬉しいですけど。もし、仏教に興味が沸いたら、坊主めくりでは漫画と一緒に色々な仏教本も紹介しているので、少しは役に立つかなと思っています。

 仏教関連の書籍はすごくたくさんありますけど、特定の宗派に偏ったものも多くて、フラットに各宗派の思想を勉強できるものを探すのが大変です。各宗派が出している本は、地元の高校ばかり応援する高校野球のノリなので(笑)。

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