「tsudaる」と著作権問題
津田 気になるのはTwitter中継は著作権的に問題はないのかということです。報道と何が違うのかという意識があり、調べてみました。ポイントは講演も著作物にあたるのではないかということ。知財に詳しい福井健策弁護士の言葉と、「ゲームラボ」に寄稿されている小倉秀夫弁護士の文章をまとめてみました。
発言は著作物にあたるか?
小倉弁護士によると、講演中の発言の1部を抜き出したものであれば著作物とは認められず、逆にパネルトークなどによる丁々発止のやりとりの流れが分かるものは1つの著作物性が認められるというものでした。
別の見解として、福井弁護士はフリートークに近い雑談のケースは著作物性が認めづらいのではないかと言っていました。電車の中の会話や雑談に著作性を認めると難しいことになるのではないかと。
140字要約に「送信可能性」はある?
もう1つは要約と「送信可能化権」*1の問題。Twitterの投稿上限140字に発言内容を「要約」して投稿した場合、それは発言者の発言内容に関する権利を侵害するのかという点です。
小倉弁護士によると、中継側がpostする/しない発言にメリハリをつけることが重要で、「ABCD」と言われたとき「AとD」だけ取り出してpostするなどメリハリをつけた場合なら大丈夫だろうと。
福井先生によると、発言内容を噛み砕いてpostする場合は送信可能化には当たらない。その2点を考えると、中継には物理的にも要約が必須なので、元々著作権の侵害にはなりづらいのではないかと。
Twitterは「報道」になるのか?
この中継を「報道」ということができれば、イベントで「誰がどのような発言をした」というのは時事の事件を伝えるための「報道だ」という「保険」をかけることができます。
ただ、それについては加戸守行氏*2の著作「著作権法逐条講義」に、「報道するために本当に必要かどうか、著作物の本来的利用と衝突しないかどうかで判断すべき」というのがあるんです。
その意味で、営利目的バリバリのシンポジウムなどではなく、公的な審議会や討議内容を広くアピールする目的であれば、報道として扱われるケースが多いのではないかというのが福井氏、小倉氏共通の見解でした。
「tsudaる」ために必要な4つの条件
それでは実際にどうすれば中継ができるのかをまとめると、まずは「イベントの主催者と話者に許諾を取る」です。「Twitterでリアルタイムに発言を中継していいですか?」という許可をもらっておく。
ただしやはりそうはいっても、許諾が取りづらいケースもある。その場合は必ず発言内容を噛み砕き、140字のpostとして発信すること。そうすれば著作権の侵害にはあたらない場合が多くなります。
かつそれが「報道である」という保険をかけることも必要です。報道であるためには「どこで誰が話している」というのが分かることが必要なため、話者の名前を明記し、感想は中継に含めないようにしましょう。
最後は、有料イベントの中継は避けましょう、ということですね。「録画録音禁止」とされたイベントも避けたほうが無難です。許可を取れなかった場合は避けた方がいいですね。
*1: インターネット上で著作物を公に配信可能にする権利のこと
*2: 愛媛県知事。文化庁文化部長、JASRAC理事長などを歴任した。