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完全解剖「名前とアドレス」 第1回

ネットワークで使われるIDを整理する

TCP/IPで使われるIPアドレスとポート番号

2009年04月27日 06時00分更新

文● 遠藤哲、横山哲也、大谷イビサ(編集部)

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通信形態とアドレスの種類

 一般に使われているTCP/IPの通信は、Webもメールもクライアント/サーバ型のプロトコルであり、両者の間は一対一の通信が行なわれている。そのため通信先の指定にはネットワーク中のコンピュータを特定するためにそのコンピュータを示すアドレスが必要となる。このネットワーク中のコンピュータを識別するためのアドレスを「ユニキャストアドレス」と呼ぶ。

 そのほかIP通信には図2に示すように、接続されているネットワークの全員を宛先とする「ブロードキャストアドレス」や、映像配信などネットワーク中の複数の特定受信者へ情報配信を行なうのに使う「マルチキャストアドレス」というアドレスがある。

図2 通信形態とアドレスの種類

 アドレス情報は宛先を指示する情報であり、ネットワーク中の一点を示すアドレスと、複数の受信者を示すアドレスは何らかの仕組みによって分けられている。このあとIPアドレスについて詳しく見ていくが、通信形態ごとに利用するアドレスの規定があるので、この3つのアドレス形態を覚えておいてほしい。

 それではIPアドレスについて詳しく仕組みをみていこう。

IPアドレス

 現在、企業や家庭などのLANやインターネットで利用されているIPのバージョンはIPv4である。1981年に発行されたRFC791 Internet Protocolがその原典である。

 IPv4で用いられるIPアドレスは32ビット長の情報である。図3に示すようにIPアドレスはネットワークアドレスとホストアドレスの2つで構成されている。しかし、2進数のまま32ビットの表現では、人に取ってわかりにくい。そのため8ビットずつ4つに区切り、それぞれを10進数に変換しドットで区切って「192.168.1.1」というように表記している。

図3 IPv4アドレスの構成と表記

 8ビットで表わされる値は10進数にすると0~255の範囲となる。そのためIPv4のアドレスは0.0.0.0~255.255.255.255の範囲の値となる。

 このアドレス範囲はAからEのアルファベット1文字を当てた5つのクラスに分類され、クラスA、B、Cがユニキャストアドレス、クラスDがマルチキャストアドレス、そしてクラスEが予備と規定されている(図4)

図4 IPアドレスのクラス

 IPアドレスのクラスは最上位に位置する1~4ビットによって識別される。クラスAは最上位の1ビットが「0」、クラスBは最上位の2ビットが「10」、クラスCは最上位3ビットが「110」、クラスDは最上位4ビットが「1110」、クラスEは最上位4ビットが「1111」である。クラスを識別するビットの値は固定であるため最上位8ビットを10進数に変換して、0~127であればクラスA、128~191がクラスB、192~223がクラスC、224~239がクラスD、そのほかはクラスEと識別できる。

 ユニキャストアドレスとして用いるクラスA、B、CのIPアドレス範囲はクラスごとにネットワークアドレスとホストアドレスのビット数が異なり、ネットワーク内のホスト数を基準に、割り当てるIPアドレスのクラスが決定される。

 クラスAはクラス識別子1ビットを含む上位8ビットがネットワークアドレスであり、残りの24ビットがホストアドレスである。

 クラスBはクラス識別子2ビットを含む上位16ビットがネットワークアドレス、残りの16ビットがホストアドレスである。クラスCはクラス識別子3ビットを含む24ビットがネットワークアドレス、残り8ビットがホストアドレスである。

特殊なIPアドレス

 基本的にクラスA、B、CのIPアドレスは、ユニキャストアドレスとしてネットワークインターフェイスに割り付けられるが、一部ユニキャストアドレスとして使えない特殊なIPアドレスがある(図5)

 たとえばIPアドレスの0.0.0.0は未定義アドレスという意味で用いられ、127.0.0.1はトラブルシュートや試験で用いるループバックアドレスとして予約されている。この2つのアドレスはユニキャストアドレスとして実際の通信に使うことはできない。

 また、クラスA、B、Cに共通するルールとしてホストアドレスのすべてのビットが0、および1となるIPアドレスはユニキャストアドレスとして用いられない。すべて0の場合、そのIPアドレスはネットワークそのものを意味するアドレスとして用いられ、全部1はネットワークに接続されているすべてのコンピュータ(ネットワークインターフェイス)を通信先とするブロードキャストアドレスとして用いられる。

図5 特殊な用途のIPアドレス

(次ページ、「グローバルアドレスとプライベートアドレス」に続く)


 

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