チケット・オフィスは見逃してしまう小ささ
ようやくサーキットに着いた。まずはチケットを買わなくてはならない。ゲート脇にウェルカム・センターなる建物がある。あそこで買えるだろう。
「チケットね。来た道を戻ったらプレハブのチケット・オフィスがあるから、そこで買って」
そんな看板なかったんですけど……。タクシーを待機させておいて良かったぁ。タクシーで来た道を戻ること700メートルほど。たしかにありました、プレハブ。チケットの種類をたずねると、パブリック・エリアが50リアル、パドック・エリアが100リアルだという。すると、あとから入ってきた白人さんが僕に忠告してくれた。
「パドック・エリアのパスを買ったらレースが見られないよ」
パドック・パスでパブリック・エリアに行けないってことでもないし、大丈夫ですよ。ここはパドック・エリアのパスを買っておこう。日本円で3000円くらいだし(だが、実は大丈夫ではないということを僕はまだ知らなかった)。
世界選手権とは思えない静かなサーキット
チケットも買ったし、タクシーでゲートの中へ。チケットには、パドック裏のP5駐車場の駐車許可ステッカーが一緒についているから、当然すんなり入れた。でも、なぜかタクシーの運転手は「そのパスは凄いパスだなあ。こんなところまで入れるのか!」と感心している。
P5駐車場でタクシーを降りた。だが、えらく静かだ。たしかにレースを走るバイクの音はしているが、異様な静けさだ。「降りる場所を間違えたのか?」と思ったら、全然観客がいないだけだった……。世界選手権なのに! 決勝レース進行中なのに! このレースは、バイクの世界耐久選手権の最終戦で、ここで年間チャンピオンが決まるのである。鈴鹿8耐の決勝の観客動員数は7万5000人ですよ。対して、この最終戦はプライベート・テストかってくらい人がいない。
そんなことを考えつつ、観戦ポイントを探す。まず、グランド・スタンドへ行ってみるのが常套手段だ。そう思って、メディア・センター入口に立っていた警備員に聞いてみた。
「黄色い階段のところから入れるよ」
黄色い階段を上がると……って、グランド・スタンドに行く道は、普通どこのサーキットもアンダーパスになっているものだが……。階段の先にあったのはビューイング・テラスなるところだった。ピット上の一部が観覧席として開放されているのだ。だが、1コーナー側も最終コーナー側も壁にさえぎられれて視界が狭い。各チームが使用しているピットは、ずっと先の1コーナー側にあるので、タイヤ交換も全く見えない。なんてこった! さっきのおじさんが言っていた「パドック・パスじゃレースが見られない」というのは、こういうことだったのか……。
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