サービス当初は内部の調整に苦労
iモードは、サービススタート開始時から、端末仕様を決定するメンバー、サーバー担当、コンテンツプロバイダ(CP)への営業部隊、マーケティング担当など、1つの部署としてほぼすべての役割が揃っていた。それだけ、ドコモとしても力を入れた取り組みだったわけだ。しかし、新たなビジネスを立ち上げるのに苦労は付き物だ。1つは対外的なもの。もう1つは社内的なものだった。
「まず、大変だったのは、大がかりなものを作るため、端末やサーバーの仕様の締め切りがかなり前だったこと」と原田氏は苦笑する。ケータイの開発は発売の1年以上前から進んでいる。まだ生まれていない新サービスのための仕様を、端末メーカーに伝えることは難しかった。しかし、原田氏は「悩んでいても仕方がないので、エイヤでどんどん決めていった」と述べる。
また、もう一つ苦労したのは、社内の既存の各部署との協力が必要となり、iモードを理解をしてもらう必要があったことだ。同じ会社の人間とは言え、自分たちもまだ見ぬサービスを他部署に理解してもらうのには時間がかかった。ケータイでインターネットをすること自体がなかなか理解してもらえなかったのだ。「当時の責任者が強いリーダーシップを発揮できる榎 啓一さんだったため、iモードにかける思いとその人柄で乗り切ることができた。実際、部内には一体感があった」と当時を原田氏は振り返る。
思った以上に順調に進んだこともある。新しいプラットフォームに参画してくれるCPの獲得だ。「CPには、ドコモの全ユーザーを対象にした新サービスということで期待してもらえた」ため、iメニューには67社が参加し、67サイトでスタートすることができた。そこから10年で、CPは3500社、コンテンツ数も1万6000サイトまで拡大し、巨大なマーケットを獲得するに至ったのである。