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識者に聞く、ソニー機構改革の思惑と行方

ソニーの機構改革はVAIOやPS3をどう変える?

2009年03月11日 17時00分更新

文● 小西利明/トレンド編集部

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 去る2月27日、ソニー(株)は4月1日以降のグループの大幅な機構改革と経営体制の刷新を発表し、話題を集めた。4月1日以降、エレクトロニクス事業を率いた代表執行役社長の中鉢良治氏が社長職を退き、グループ全体を統括する代表執行役会長兼CEOのハワード・ストリンガー氏が社長職も兼任。事業の立て直しを図る。

2005年、会長兼CEOに就任当時のストリンガー氏と社長の中鉢氏

2005年、会長兼CEOに就任当時のストリンガー氏(左)と社長の中鉢氏。中鉢氏は副会長となり、ストリンガー氏が社長を兼任する

 詳細については、同社の広報発表文を見てほしいが、「ネットワークプロダクツ&サービス・グループ」と「コンスーマー・プロダクツ・グループ」の事業グループを発足/改変。さらに、ソニー全製品に対して共通のソフトウェア・ソリューションの開発と導入を担当する「コモン(共通)・ソフトウェア&テクノロジー・プラットフォーム」グループを設けるなど、大胆な機構改革が実施される。

 ASCII.jp読者にとって気になるのは経営面の話より、VAIOやプレイステーション3、液晶テレビ、デジカメといった製品群が、この改革によってどのように変わっていくのかだろう。ジャーナリストの本田雅一氏に、これらの改革の意味と、ソニーの製品がどう変わるかを聞いた。

本田雅一

フリージャーナリスト。ソフトウェア開発を皮切りに、パソコンやデジタル家電、映像機器など、テクノロジーに関わる話題をウェブニュースや専門誌、経済誌などに寄稿する。



エレクトロニクスできちんと儲けるための改革

――機構改革の発表には、驚かれましたか?

本田雅一(以下本田)噂レベルの話は、少し前からありましたので、驚くというほどではありませんでした。

――具体的にはどのような?

本田 ひとつは、2008年の金融危機以降、中鉢氏の求心力低下が、経済誌記者の間で噂されていました。もうひとつは、CEOのストリンガー氏が、エレクトロニクス部門のオペレーションに関して不満を持っているという話です。いずれも噂でしかありませんが、“何かが起こっていた”というのは確かでしょう。

 さらに業績悪化がトリガーになって社長交代になったのではと考えます。経営効率を求める人たちからすれば、幅広い事業を手がけるソニーの中では、エレクトロニクス部門が重荷に見えるかもしれないですね。

――なるほど。しかし、エレクトロニクス部門が重荷と言われるのも、寂しい気はしますね。

本田 ソニーは紛れもなくエレクトロニクスの会社です。これは今も昔も変わりません。しかし、キャッシュフローが大きい割に利益は薄いというのも事実です。感性に訴える製品を作ることでブランドの差異化を行なう必要もあって、パソコンのようにキレイな水平分業というわけにはいきません。エレクトロニクスでブランド力を高めようとするなら、部分的には垂直に統合する必要もありますから、ある意味、無駄な部分はあります。

 しかし、無駄があるからいい製品ができるとも言えます。今の時代、スペックの優れた製品を作るだけなら、一番いい部品を集めていいデザインの殻に入れれば、結構売れますよ。ソニーのブランドが付いていればね。でも、それをやったらオシマイ。ブランド力の貯金をどんどん食い潰すことになる。だからソニーの中の人たち、特にエレクトロニクス系の技術者や商品企画担当者は、自分たちのアイデンティティーを確立させるためにも、オリジナルを作ろうと必死にやっていると思います。

 一方でストリンガー氏の不満は、経営効率を上げて利益をきちんと確保していこうと全社的な手当をしているのに、エレクトロニクス部門の中には利益率どころか、赤字の克服さえできていないところがあることでしょう。自分から遠いところにあるから、なぜ利益を出せないのか、その原因が見えてこない。レポートとして上がってくる経営体質改善の報告と、経済危機化でエレクトロニクス事業の足下の弱さのバランスが、頭の中で一致しなかったのでは。そこで、自分自身でエレクトロニクス部門の構造を把握しなければ改善できないと考えたのかもしれません。

ストリンガー氏は就任当時、「ソニーユナイテッド」という言葉で……

ストリンガー氏は就任当時、「ソニーユナイテッド」という言葉で、グループ各社のシナジーを高める方向性を示した。本田氏は、その意識がソニー内部にも浸透していると述べる

――経営者側の見方としては、至極当然ではありますね。

本田 例えばテレビ。日本では迷走していた時期もありますが、ここ1~2年は安定して画質も良くなってきていましたし、市場でも評価が定着しつつあった。テレビというのは、メーカーの顔になる製品です。みんなが使い、みんなが毎日見る。だからそこに力を入れていた。

 2008年は金融危機で、後半に売り上げが落ちて利益は出せませんでしたが、ソニーのエレクトロニクス部門はここ数年ないほど、粒の揃った製品を並べていたんです。おそらく、テレビ部門も特殊な事情がなければ利益は出せていたでしょう。夏ぐらいまでの状況だと、AVもパソコンもカメラも良い感じだったので、これは過去最高の結果になるのでは? と予想していました。

 しかし金融危機があって、結果的には大きな赤字になった。そこで本質的な部分での競争力を高めるために、「今まで手の届かなかったところまで効率化を図りたい」と考えたのではないでしょうか。

――なるほど。

本田 ソニーだけでなく、ほかの製造業でも同じですが、金融危機による売り上げ減少よりも、為替差損の方がずっと日本企業の経営を圧迫しています。

 売り上げ減少とともにキャッシュフローが大きく目減りして対策が間に合わない。昨年末は転換社債の償還がかなりあり、ソニー自身の資金運営が難しい時期だったことも、経営を急激に圧迫した要因でしょう。

 そこで、今回の危機を機会に本質的な競争力強化をして、景気回復まで円高でも戦える体制を素早く整えるため、幹部達の意思統一もスムースに進んだのかもしれません。エレクトロニクスを聖域としてストリンガー氏の直下には置かない二重構造から、最終的にはトップを一本化する方向へと舵を切ることで合意したのでしょう。

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