テレビとコンピューター&ゲームの分離に懸念は?
――ひとつ気になる点といえば、テレビはA・C・Gをまとめたグループとは別のコンスーマー・プロダクツ・グループ(CPG)ですよね。広報発表文ではCPGについて、「テレビ、デジタルイメージング、ホームオーディオ、ビデオといったコンスーマー・エレクトロニクスの中核製品カテゴリーの事業を統括」とあります。家庭内に必ずあって、いろんな機器やネットがつながるハブという意味では、テレビは欠かせません。それがCやGと別のグループで、きちんとした連携やコミュニケーションがとれるのでしょうか。
本田 まず、テレビやホームオーディオなどは、一緒でかまわないでしょう。A・C・Gからすれば、テレビは単なるディスプレーですから。
――割り切ってしまえば、そういう見方はできますね。テレビはディスプレーとしての良さを追求してくれればよくて、コンピューティングが絡む分野は、パソコンなりゲーム機なりをつないで使えばいいと?
本田 CPGというグループは、いわゆる伝統的なAVのコア技術と製品を、ひとつにまとめてあるのでしょうね。例えばオーディオですが、ソニーでオーディオと言えば「ウォークマン」というイメージがありますけど、ソニー社内にはオーディオを追求する部門や、ピュアオーディオメーカーと同じような開発ができる体制があります。ホームオーディオは機能や質を追求をしなければならない分野ですし、ウォークマンはサービスやソフトウェアとの一体化したシステムとして作らねばなりませんから、全然別のものです。デジタルイメージングはちょっと毛色が違うかもしれませんが。
――組織の区分という点では、コモン・ソフトウェア&テクノロジー・プラットフォームを別組織として設けたのはなぜでしょう。別組織化してしまうことで、ほかのグループや、その中の商品企画・開発部門とのコミュニケーションはうまくいかなくなる危険はありませんか。
本田 部門を横断する横串的な組織、各製品を繋ぐためのブリッジ技術をサポートする部門は、以前からありました。特段新しいわけではないのです。
――個別の組織にしても、ほかのグループとうまく連携していける。それができる人材を各グループトップに据えた、ということでしょうか。
本田 いえ、こればかりは能力よりも、各部門の人がどれだけ共通の意識を持てるかなんです。社内の運用次第でしょう。
例えば、ソニーは以前に「○○センター」といった部門を多数並べたことがありました。しかし結局、どの事業部もそれらを使わないことが多かった。社内で標準化されるより、部門ごとに勝手に実装した方が、スマートでかっこよい製品にしやすい。何より面倒も少ない。
横断する組織や技術をどう効果的に機能させるかは、組織の形態がどうこうよりも、どのように組織を運営するかによるでしょう。
人間というのはかけ声をかける人がいて、変わろうとみんなが思うなら、急に変わることもできるものです。誰がどのようにリーダーシップを取るのかという、人間次第の面が強いと思います。
――マイクロソフトはある意味、そうやって変わっていけた企業の例かもしれませんね。