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スカイパーフェクト・コミュニケーションズ、決算概況と今後の事業展開を説明――HD化やHDD付きSTBを展開へ

2006年05月15日 20時41分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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(株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズは15日、東京・霞ヶ関の霞ヶ関ビル内霞ヶ関東京會舘にプレス関係者を集め、2005年度(2005年4月~2006年3月)の決算概況と同社の今後の事業展開について説明会を実施した。会場には、代表取締役社長の重村 一(しげむらはじめ)氏のほか今年6月の株主総会を経て次期代表取締役社長に内定している常務取締役の仁藤雅夫氏((株)オプティキャスト・マーケティングの代表取締役社長も兼務)らが出席し、通期決算の内訳や今年夏に展開を予定しているHD(ハイビジョン)放送の拡充、HDDレコーディング機能付きSTB(セットトップボックス)などの事業展開について説明した。

代表取締役社長の重村 一氏
代表取締役社長の重村 一氏

同社の連結損益は以下の通り。これらの収益額には、連結子会社である(株)データネットワークセンター(DNCC)、(株)スカパー・マーケティング、(株)オプティキャストなどの決算も含まれる。

仁藤雅夫氏
次期代表取締役社長に内定している常務取締役の仁藤雅夫氏

2005年度連結損益概況

受信契約

新規本登録件数(2004年度通期、増減)
52万件(43万2000件、+8万8000件)
期末累計本登録件数
353万6000件(331万件、+22万6000件)

収益額

営業収益(2004年度通期、増減)
823億2900万円(740億1600万円、+83億1300万円)
内訳
顧客管理業務およびデジタル衛星放送普及促進業務 505億8800万円(486億800万円、+19億8000万円)
放送番組送出関連業務 90億7300万円(97億6800万円、-6億9400万円)
その他プラットフォーム業務 226億6700万円(156億4000万円、+70億2700万円)
営業損益(利益)
△2億6100万円(28億2600万円、-30億8800万円)
経常利益
1億600万円(36億8100万円、-35億7400万円)
税引後当期純利益
3億5700万円(37億900万円、-33億5200万円)
利益剰余金期末残高
46億2800万円(59億900万円、-12億8100万円)

結果としては増収減益だが、その理由について「決算発表の場に出るのは今回が最後になりますが」と前置きしてから壇上に立った重村氏は、「これはW杯前に販促に大きく経費を使ったため。また、映像と通信の融合の議論が叫ばれ、メディア環境が変化するなかでオプティキャスト・マーケティングやスカパー!マーケティングを開始したこともあり、そこの拡大に費用を投じた。予測の範囲にある」と強気の姿勢を見せた。

加入件数・解約率の状況 2006年度の業績見通し
加入件数・解約率の状況2006年度の業績見通し

加入件数については、第4四半期(2006年1月~3月)を除いて前年同期を上回っており、解約率は「引っ越しなど移動の季節なので毎年9%前後になる」という第4四半期を除いて8%台に押さえられ、年平均8.6%と0.8ポイントの改善になった。

来期(2006年度)の予測については、2006年度の加入件数を53万件とし、その内訳はスカパー!(従来の衛星TV放送受信)が25~30万件、デジタル放送3波を統合した“SkyperfecTV! 110”(愛称:スカパー!110)が18~20万件強、4月に戸建て向け販売も始まった有線配信方式“スカパー光”が7~12万件と見込んでいる。一方、平均解約率は8.6%から8.9%に増える見通しを立てている。これはスカパー!110の解約率が高いため、この契約数が増える来期は必然的に解約率にも影響が出るため。この結果、累計個人契約件数は374万件、総登録数は431万件になるという。

日本と米国/欧州、およびCATVにおける事業構造の違い 3方向からのアプローチについて
日本と米国/欧州、およびCATVにおける事業構造の違い3方向からのアプローチについて、従来は三角形の図で示していたが、今年はW杯もあるからサッカーのグランドに見立てて四角いフィールドとジョークを交えて説明

同社事業の今後の展開については、「(STBの製造や供給、衛星通信、配信プラットフォーム、編成・放送、番組制作/調達までの一連の各事業が)米国や欧州、日本でもケーブルテレビについてはほぼ一本化されているのに対して、日本だけが法律上の観点などから多層構造になっている。これは多くの専門放送事業者を登場させるために効果的だったが、多様化するユーザーのニーズ、市場規模の拡大に向けては構造の見直し、新たな事業体制の導入が必要になる」と、法整備の必要性を含めた持論を展開した。

その上で、現在の同社の動きを「3方向からのアプローチ」と呼び、従来放送については多チャンネルパックのサービスを、HDDを内蔵したSTBで録画しながら好きな時間に見る新しい視聴スタイルへの対応、およびH.264を使ったハイビジョン化にも対応準備を進めると語った。具体的には従来のハイビジョン放送(MPEG-2 HD)を2009年度以降、準備が整い次第順次H.264へと置き換えていくことになるという。

スカパー!110のハイビジョン展開について スカパー!光の加入件数の推移
スカパー!110のハイビジョン展開については、W杯での盛り上がりを継承するべく、時間帯別に各ジャンルの番組をHD放送すると説明スカパー!光の加入件数の推移。FTTHの普及に伴い、右肩上がりで堅調に推移していることが分かる

また、デジタル3波共用機についてもHD化を行なうという。これは現在888チャンネルで放送中のハイビジョン映画に加えて、800チャンネルでもW杯のディレイ中継をHD放送で行なうというもの。W杯終了後には、ドラマ/スポーツ/音楽/エンターテインメントなど、時間帯ごとにジャンルを区切ったHD形式のサイマル放送(通常放送と同一内容をハイビジョン形式で同時放送)する。これにより各ジャンルの視聴契約者がHD放送のメリットを得られるとしている。

さらに、“トリプルプレイ”(IP電話、映像配信、インターネットの3つのサービスを光インターネットで実現すること)の呼称で普及推進が行なわれている“スカパー!光”も東名阪地域の対応エリアを拡充し、IP系サービスの導入を目指す。

加えて、もうひとつの方向である“モバイル”についても、(株)インデックスに出資している関係から、インデックスが取得した携帯電話機向けW杯情報配信権を利用して、W杯のリアルタイムスコア情報など積極的なモバイル展開を進めるとしている。

スカパー!光のサポートエリア ARPUの推移
スカパー!光のサポートエリア。4月の戸建て展開を皮切りに、5月、6月と順次都内および隣接区域をカバーし始め、夏から秋には大阪・兵庫、および名古屋地域へもその範囲を広げるARPUの推移。デフレ傾向、コンテンツの魅力不足、アダルトチャンネル視聴者のネット移行など、様々な原因を挙げているが、視聴料、業務手数料ともに下落傾向が長らく続いている

特に同社ではARPU(契約者1人当たりの利用単価)が下落傾向にある点を重視し、「(HDDレコーディング機能やHD放送など)STBの高付加価値を進めて、レンタルサービスの利用率拡大(現在20%程度)を目指す」と語った。HDDレコーディング機能を実装した場合、STBのレンタル料金は現在の月額315円から「さほど高くするつもりはないが、倍額かそれに少し上乗せする程度」になるとしている。また、リビングルーム以外での視聴ニーズも増えていることから、2出力アンテナの提供による“マルチルーム視聴対応”サービスも今夏には展開予定と語った。


なお、同日発表されたドイツW杯の全64試合のIP・モバイル配信権取得についても触れ、「前回(日韓共催の2002年)の1/10のコストで取得できた。これはドイツで開催されることからリアルタイム放送する必要がなく、ディレイ(時間をずらした録画中継)放送で済むことなどが理由」と述べた。

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