WDM技術で280チャンネル+地上アナログ/デジタル放送をまとめて送波
スカパー!とNTT東西ら、光ファイバーを利用した多チャンネル放送サービスの販売運用会社を設立
2005年12月26日 19時29分更新
スカパー!、NTT東日本、オプティキャスト、オプティキャスト・マーケティングの4社の代表ががっちり握手。光ファイバー回線を使って映像配信、通信、光電話の“トリプルプレイ”でユーザー獲得のペース向上を目指す |
(株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー!)と(株)オプティキャスト、東日本電信電話(株)(NTT東日本)、西日本電信電話(株)(NTT西日本)の4社は26日、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルにプレス関係者を集め、今月19日にオプティキャストの営業部門から分社独立した(株)オプティキャスト・マーケティングにNTT東西が出資し、資本の増強と営業体制の強化を図ると発表した。NTT東西の出資後は、2006年1月25日に新株発行を行ない、オプティキャスト、NTT東西がそれぞれ引き受ける形で行ない、2月に本格的な営業活動を開始する予定だという。オプティキャスト・マーケティングの概要は以下のとおり。
- 登記名称
- 株式会社オプティキャスト・マーケティング(英文表記:OptiCast Marketing Inc.)
- 代表
- 仁藤雅夫(2006年1月就任予定、現スカイパーフェクト・コミュニケーションズ 常務取締役)
- 設立年月日
- 2005年12月19日(オプティキャスト 営業部門を分社独立)
- 従業員数
- 50名(2006年1月末予定)
- 資本
- 2500万円
(新株発行後37億円:資本金18億6250万円、資本準備金18億3750万円) - 発行済み株式総数
- 500株
(新株発行後7万4000株) - 株主構成
- オプティキャスト500株(100%)
(新株発行後オプティキャスト51%、東日本電信電話34%、西日本電信電話15%) - 役員構成
- オプティキャスト4名、東日本電信電話2名、西日本電信電話1名
オプティキャスト・マーケティングの役割 |
オプティキャストは、スカパー!の100%子会社で、光ファイバーを利用した映像配信事業“光パーフェクTV!(愛称:ピカパー!)を主体に2003年6月に設立された。今回のNTT東西がオプティキャストの子会社に資本参加する理由は、NTT東西が持つマンション(集合住宅)や戸建て住宅向けの光ファイバー回線を利用して、スカパー!の持つ映像や音声コンテンツなどを再配信するとともに、ブロードバンド・インターネット接続(通信)、光電話(通話)の“トリプルプレイ”サービスを目指すというもの。これにより、スカパー!はNTT東西の光ユーザーに営業を行なうことで“2010年度までに800万契約”、NTT東西はコンテンツ配信の魅力によって“光回線の3000万契約”をそれぞれ達成したいという。
オプティキャストの代表取締役社長の齋藤達郎氏 |
会場にはスカパー!の代表取締役社長の重村 一(しげむらはじめ)氏、オプティキャストの代表取締役社長の齋藤達郎氏、NTT東日本の代表取締役副社長の古賀哲夫氏、オプティキャスト・マーケティングの代表取締役社長(就任予定)の仁藤雅夫氏らが出席し、それぞれの意気込みを語った。
オプティキャストが示した、現在の“ピカパー!”事業の展開状況。東名阪の3大都市圏で集合住宅向けにサービス提供を始めており、今後は政令指定都市を中心にサービス範囲を拡大していくという | 現在提供されている、集合住宅向けサービスの概要 |
最初に齋藤氏が、「これまで集合住宅向けサービスだけだったが、来春には戸建向けのサービスも開始する」と切り出し、オプティキャストの現状を説明した。同社はスカパー!の約280チャンネル分の映像コンテンツと、地上アナログ放送/地上デジタル放送/BSデジタル放送/FMラジオの再配信を行なっている。配信形態は基本的にRF(Radio Frequency)信号で、光ファイバー回線ではWDM(Wavelength Division Multiplex、波長分割多重)技術により送信するチャネルを多重化して多チャンネルの同時配信を行なう。また、コンテンツ事業者との契約次第ではIP(Internet Protocol)によるデジタル配信も検討していくとのこと。
来春提供開始予定の、戸建住宅向けサービスの概要 | サービス開始時の料金のイメージ。なお、この料金が確定しているわけではない |
同社のこれまでの実績としては、都内では集合住宅向けに345棟が導入済み、466棟が導入を決定し、402棟が導入見込み。これらを合計すると、都内の新築マンションのうち約50%に導入されているという。ただし、来年3月竣工予定という住宅が多いため、契約件数としては3553件にとどまる。さらに来春からは戸建住宅向けにISP(インターネット接続)/映像配信/光電話の3サービスを提供開始。予定価格としては、放送と通信(インターネット接続)、光電話の基本料金を合わせて月額1万円以下になる見込みで、既存のケーブルTVが60~70チャンネル程度なので映像コンテンツの豊富さで勝負できるとしている。
NTT東日本の代表取締役副社長の古賀哲夫氏 |
光ファイバーの映像/通信/電話の伝送イメージ |
古賀氏は光ファイバー回線の優位性について、「ADSLは今月(12月)の全事業者の純増数が5万を切り、1500万件に届かないのではないか」とばっさり斬った。ADSL回線では、同様のサービスを行なおうにも帯域が狭くてできなかったという。光ファイバー回線は全事業者の総計が出ていないため、NTT東西の数字のみ示したが、「11月で15万件の増加を記録している。Bフレッツの施設数(契約者総数)も右肩上がりで、(NTT)東日本の100万件、(NTT)西日本の80万件という今年度目標は達成できる見込み」と鼻息を荒くした。
ADSLの全事業者の純増数。平成15年(2003年)1月の53万件をピークに下降を続けている | ADSL全事業者のトータル施設数の推移。右肩上がりが続いていたが、その傾きが極端に緩やかになってきた | |
NTT東西のみを集計した光ファイバー回線(Bフレッツ)の純増数 | 同じくBフレッツの施設数 |
また、重村氏も「今月で(スカパー!の)契約者数が400万を超えることは確実」と勢いづいていることを示しながら、「(通信や放送などの)メディア環境は非常に速いスピードで進化している。技術の進歩も速い。一ヵ所(いままでの配信手段)にとどまっていればうまくいかなくなる」とNTT東西との連携に期待感を表した。
スカパー!の代表取締役社長の重村 一氏 |
さらに、「NTT的には言いづらいかもしれないが」と前置きしながら、「光を使ってIPも映像も配信するので、VODの事業も将来はできるだろう。(スカパー!の)株主にコンテンツを持つ民放((株)フジテレビジョンのことを差すと思われる)もいるので、既存の(NTTがVODサービスを行なっているISP事業の)“ぷらら”の“オンデマンドTV”などを通じて配信できるようになる。これが顧客にとっては最も便利な方法なので、検討していきたい」と将来的な協力体制の拡充を視野に入れた発言も飛び出した。
オプティキャスト・マーケティングの代表取締役社長(就任予定)の仁藤雅夫氏 |
なお、会見後の質疑応答で各種TV放送の再配信に関連して、「視聴可能地域外への再配信に関する問題には、どう対応するのか?」と聞かれると、「NTT東西の基地局で映像を蓄積して、その地域に合わせて配信するため、問題ない」と回答した。従って、このサービスを利用しても、視聴地域範囲外で放送される番組が見られるようになるわけではない。