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HDC-7

HDC-7

2006年05月11日 13時05分更新

文● 編集部・小林 久

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ビデオデッキよりも静かな動作音

 リビングに設置した場合に気になるのは静粛性だろう。実際に試用してみた感想としては、通常使用ではほとんど騒音を感じない。一般的なVHSデッキやDVDレコーダーと比較しても、かなり静かな印象で、AV機器に匹敵する静粛性と言えるだろう。これは、Pentium Dを搭載した製品とは思えない水準だ。もっとも、起動時は冷却ファンからかなり大きな音がする。また、CPUをフル活用したり、記録型DVDにデータを保存する際は相応の動作音がする。

試作機に搭載されていた光学式ドライブは、松下製のDVDスーパーマルチドライブ「SW-9587S」。

 10フィートGUIを使った操作感に関しては、かなり快適である。これはデジタル放送の試聴にこだわらなかった点が、逆に良かったと言える。Windows MCEはデジタルチューナーに対応していないため、デジタル放送を受信するためには、ハードメーカーが用意した外部アプリケーションを別途起動させないといけないが、インターフェースが統一されていないため、どうしても使いにくい面が生じてくる。標準機能中心に絞り込んだことで、そういったインターフェースの不整合はあまり感じなかった。

Windows MCEで視聴できるコンテンツの例。画面左のメディアオンラインでは無料コンテンツも意外に多い。また、Viiv対応機専用のコンテンツも提供されている。画面右がViivマシン用にオンキヨーが提供している音楽配信サービス“e-onkyo music store”。
画面左の“ショップチャンネル”のように取り扱い商品の商材情報をウェブで確認できるサービスもある。画面右のOricon Styleなど、楽曲購入のためにソフトのインストールが必要なサービスもあるが、リモコンだけでも総じて使いやすい。

 特に印象的だったのが、メディアオンラインを利用してネットワーク上のコンテンツをきわめて自然に購入/視聴できた点だ。シンプルなメニューとサムネイル表示されたコンテンツをリモコンで選択していくだけで動画や音楽のコンテンツを気軽に再生できる。“Gyao”や“BANDICHANNEL”には、無料で視聴できる映像コンテンツも多い。もちろんURL入力などは不要だし、細かなマウス操作も必要としない。操作感は、パソコンで見ているというより、HDDレコーダーに保存した番組をリモコンだけで見ている感覚に近い。

 オンキヨーはViiv対応パソコン向けに24bit/96kHz、WMA Lossless形式の音楽配信サービス“e-onkyo music store”を提供しているが、楽曲購入もリモコンだけで容易に行なえた。ラインナップはそれほど多くないが、音質の高さと手軽さは魅力的である。

 今回手持ちのAVアンプ「PS8500」(日本マランツ製)に、アナログ接続して音楽を楽しんでみたところ、音質は単品のCDプレーヤーに迫るものだと感じた。筆者所有のSACDプレーヤー「SA-17S1」と比較すると、高域の広がりやS/N感などで一歩譲る印象があったのは確かだが、それよりワンランク下の製品(定価5万円以上のCDプレーヤー)とはいい勝負になるのではないかという感想を持った。

 ベースとしたサウンドカード(SE-150PCI)は、自作市場でもともと評価の高い製品であるが、本機ではそれをカスタムチューニングしたことでさらに高い品質を得たと言える。静粛性も含めて、少なくとも一般的なAVパソコンの水準は大きく超えている。さまざまな形式のデータに対応できる点や、一度パソコンに保存してしまえば、リモコン操作だけで、メディアの入れ替えもなく、さまざまな曲を楽しめる点はパソコンならではの利点だ。

フロントパネルの右側には、時刻や再生時間を表示するためのパネルを装備。その下には選曲用のボタンもある。

 ただ、純粋なプレーヤーとしての操作感に関しては、オーディオ機器と勝手が違ってとまどう面もあった。例えば、トレーにCDやDVDをセットし、フロントパネルにある再生ボタンや選曲ボタンを押しても、すぐに再生できるわけではない。10フィートGUIから再生するメニューで該当する項目――CDであれば、マイミュージックの中にあるCDアイコン――を指定した上でないと、再生/選曲操作は行なえない。また、レジュームの仕組みももうひと工夫必要だろう。Viivのクイック・レジュームは基本的に画面と音が消えるだけなので、消費電力が気になるし、かといってサスペンドしてしまうと復帰に失敗して再起動を余儀なくされるというケースもままある。こういったときには「うまく隠蔽されてはいるが、やはりパソコンなのだな」と感じてしまう。

フロント部分のカバーを開けるとメモリーカードスロットやUSB 2.0/IEEE 1394ポートが現われる。

 なお、Viivの仕様にはDLNA対応が含まれているほか、HDC-7はオンキヨー独自のAVサーバー用プロトコル“Net-Tune”のサーバーにもなる。このため、家庭内LAN上にあるDLNA対応のAV機器と連携したり、Net-TuneクライアントをインストールしたパソコンからHDC-7上のコンテンツにアクセスすることが可能だ。サーバー用途を考えるとGigabit Ethernet、ケーブルなしの利便性を考えると無線LANの搭載も望みたいところだが、本機は10/100BASE-TX端子のみを装備している。

パソコンだが、パソコンとして使いたくない!?

 AV機器のような見た目めの筐体を採用したパソコンは、これまでも各種登場している。中には、シャープが販売している「AVセンターパソコン“Mebius”」のようなビデオデッキを思わせる外観の製品や、少し古いがソーテックがケンウッドと協業して作った、ミニコンポに接続できるパソコン「AFiNA AV」などがあったが、操作感や設置した雰囲気まで含めて、ここまでAVとうまく調和したパソコンはなかったように思える。むしろ、Windows XPのデスクトップを表示して、本機をパソコンとして使うことに違和感を感じてしまうほどだ。

AVラックに収めても違和感はない。ただし動作中は若干揺れがあるので、しっかりとしたものを選択した方が良さそうだ。

 音質に限って言えば、光出力を持つパソコンを購入し、高性能なD/Aコンバーターに接続する方法もある。また、iTunes上での再生に限られるが、アップルコンピュータの「AirTunes」のように、別室にあるパソコンから無線で音楽を飛ばして、光出力する周辺機器も市場に出回っている。ドルビー関連やDTS関連を含めた対応するコーデックの豊富さ、音質に対する配慮はパソコンとしては特筆すべきものだが、デジタル接続中心で使用するなら、それほど大きな優位性は持たないかもしれない。ディスプレーなしで25万円という価格は、低価格化が進むデスクトップ製品のなかではかなり高価な部類に属する。

 しかし、高品位で静粛性の高い筐体は他社製品にはない本機ならではの特徴であり、そこに価値を見出す層は確実に存在するだろう。万人向けの製品ではないが、リビングに違和感なく置けるパソコンで、リモコンだけでネットワーク上のコンテンツを気軽に購入したり、自分で用意したコンテンツを楽しみたいと考えるユーザーにとって、本機は魅力的な選択肢になると思う。

 HDC-7を開発した理由としてオンキヨーは、「次々と登場する著作権保護技術(DRM)や最新のフォーマットに柔軟に対応していくためには、パソコンの汎用性が必要だった」と説明している。ネットワークを通じてさまざまなデジタルコンテンツがやり取りされ、その格納先も光メディアからHDDが主流となりつつある中、こうした新技術に柔軟できるプレーヤーは何かを考えたところ、パソコンに行き着いたということだろう。同社はHDD内蔵型の据え置き型プレーヤーや、AVサーバーと連動できるオーディオ機器などを過去に製品化しているが、使い勝手の面ではパソコンに一歩譲る部分があった。

 HDC-7は、そういう新しいフェーズの融合に先鞭を付けた“AVパソコン”と言えるだろう。

HDC-7の主なスペック
製品名 HDC-7
CPU Pentium D 820-2.8GHz
OS Windows XP Media Center Edition 2005
メモリ DDR2 SDRAM 1GB
チップセット Intel 945G Express
ビデオ チップセット内蔵(Intel 945G Express)
HDD 約400GB
光学ドライブ DVD+R DL(2層式メディア)対応DVDスーパーマルチドライブ
チューナー 地上アナログ×2、FMチューナー
拡張スロット CFカード×1、SDメモリーカード/メモリースティック対応×1、SmartMedia×1
通信 10/100BASE-TX
I/O USB 2.0×4、IEEE 1394×3(4ピン×1、6ピン×2)、ビデオ入力(S-Video、コンポジット)、外部ディスプレー出力(D4、DVI-D、S-Video、ミニD-Sub 15ピン)、オーディオ入出力(光デジタル出力含む)など
サイズ 435(W)×413(D)×116(H)mm
重量 約9.8kg

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