マイクロソフト、『Internet Explorer 7 Beta 2 日本語版』公開に合わせた説明会を開催――セキュリティーを高めながら利便性を上げる
2006年05月09日 19時01分更新
いよいよ日本語版が公開された『Internet Explorer 7 Beta 2』 |
既報のとおり、マイクロソフト(株)は9日、同社ウェブサイトにて『Internet Explorer 7 Beta 2 日本語版』(以下IE7)の提供を開始した。同社本社にて開催された報道関係者向けの説明会では、“Internet Explorer 7の7つの魅力”と題して、IE7の特徴的な機能や仕様についての説明が行なわれると共に、ウェブサイトやサービスの互換性検証の必要性が唱えられた。
IE7の概要を説明した同社Windows本部 ビジネスWindows製品部 マネージャの中川哲氏は、セキュリティーの強化と利便性は背反するテーマとしたうえで、IE7は「このテーマに取り組んだ。セキュリティーを強くしながらユーザーの利便性も上げていくのが大きな特徴」と述べた。またIE7の対応OSは、Windows XPシリーズとWindows Server 2003 SP1、そしてWindows Vistaになるとも述べられた。IE6がサポートしていたWindows 2000シリーズやWindows 98/Meなどは、ついに対応OSから除外されることになる。ちなみにVista版のIE7は“Version 7.1”になるという。これはVistaがサポートする保護モードなどの機能に対応しているといった違いのためとのことだ。
IE7の主要な特徴については、同社Windows本部 ビジネスWindows製品部 シニアプロダクトマネージャの伊藤哲志氏により、以下の7分野ごとにIE7でのデモを交えながら説明が行なわれた。なお主な機能の詳細については、文末にリンクのある特別企画も参照していただきたい。
- デザイン(ユーザーインターフェース)
- タブブラウジング
- 検索
- 印刷機能
- RSS
- プライバシー・セキュリティー
- 互換性と管理性
まずデザイン面については、インターフェース全体が単純化された。ツールバー上のボタンも少なく、すっきりした印象を受ける。画面全体を広く使うという意図の元に、設計されているとのことだ。メニューバーが標準では非表示で、Altキーを押すと表示されるといったギミックも取り入れられた。しかしこれについては説明後の質疑応答で、「初心者にはかえって分かりにくいのでは」との疑問も呈された。
デザイン面で特徴として取り上げられたのが、“ドキュメントフレーム(※1)内での画面拡大や縮小”である。伊藤氏はCSSを使ってデザインに凝ったウェブサイトなどでは、フォントサイズが決め打ちされてしまい、文字が小さく読みにくいことがあると述べたうえで、IE7のこの機能では表示しているページの形式に依存せず、テキストだけでなく画像や入力フィールドなども拡大できるとした。拡大縮小はIE7のウィンドウ右下にあるボタンから変更できるほか、Ctrlキーとマウスのホイールを組み合わせた操作などでも変更可能という。弱視者やシニアユーザーにも有益なだけでなく、画面サイズの小さなハンドヘルドタイプのデバイスなどでも便利に使えそうだ。
※1 ウェブページを実際に表示している部分MSNのページを200%サイズに拡大した状態。ページレイアウトを損ねずに拡大しているだけでなく、“ウェブ検索”のテキストボックスも大きくなっている |
タブブラウジングは“要望が多かった機能”と言うことで、一般的なタブ型ウェブブラウザーと同様な複数ページの単一ビュー表示をサポートしているほか、表示中のタブをサムネイル状に一覧表示する機能“クイック タブ”や、“お気に入り”やホームページ設定から複数のウェブページを一度に開くといった機能が披露された。
表示中のタブを縮小イメージで一覧表示する“クイック タブ” | ホームページ設定のテキストボックスに複数のアドレスを登録することで、起動時に複数のページを同時表示させることが可能 |
ツールバーに新たに設けられた検索ボックスについては、各検索サイトが配布している検索ツールバーを複数組み込むと、ユーザーインターフェース(UI)が煩雑になり、ウェブページの表示面積も狭くなるといった問題点を挙げて、検索ボックスで複数の検索サイト(検索プロバイダ)を利用できることによる利便性を訴えた。日本語版ではデフォルトの“MSN Search”のほかに、“Google”“Yahoo! Search”などの大手検索サイト、通販サイト“Amazon.com”が検索プロバイダとして登録されている。さらに追加の検索プロバイダとしては、ニフティ(株)の“@nifty”や日本電気(株)の“BIGLOBE”など大手ISPの検索サービスや、楽天(株)の“楽天市場”、オンライン百科事典“ウィキペディア”なども用意されている。
IE7で追加された“検索ボックス”。デフォルト設定がMSN Searchになっていることについては、米Google社から反発が出ている | IE7 Beta2日本語版に追加可能な検索プロバイダ。任意の検索プロバイダを1クリックで追加できる |
IE7の大きな特徴の1つがRSSのサポート。URLのブックマークと同様に、お気に入りの中で管理できるほか、フィードの更新間隔も任意に設定できる |
プライバシーとセキュリティーに関する機能については、IE6がマルウェア(悪意あるソフトウェア)やフィッシング詐欺サイトの窓口に利用されたことの反省を反映して、伊藤氏が「てんこ盛り」と称したように、多くの改善や機能が取り込まれている。“フィッシング詐欺検出機能(Phishing Filter)”は、同社が持つブラックリストに登録されたフィッシング詐欺サイトにユーザーがアクセスしようとすると、一瞬画面が表示されるものの、すぐに警告画面に切り替わる仕組みが取り入れられている。ブラックリストは同社の調査だけでなく、外部のアンチフィッシング企業との連携により情報収集されるほか、エンドユーザーからの通報も、メニューバーから簡単に行なえる(誤通報の可能性も考慮して、通報が必ず反映されるわけではない)。
ブラックリストにあるフィッシング詐欺サイトを表示しようとすると、“フィッシング詐欺検出機能”が働いて、ユーザーが知らずに個人情報を入力してしまうことを防ぐ。アドレスバーも赤く表示される | 未警告の新たなフィッシング詐欺サイトを見つけた場合、ツールバーから通報も行なえる。自動確認をオフにすることも可能だ |
また表示するページを自動で解析し、ブラックリストには存在しないが、不審な動作(クロスサイトスクリプティングに利用されるようなスクリプト処理)などが検知された場合は、疑わしいサイトとしてアドレスバーを黄色く表示するなどして警告を発する機能もある。ただしこの場合はそのページを閲覧、操作することは妨げない。また同社としてはIE7を多くのウェブ開発者に使用してもらうことで、安全なページが誤警告されないように確認してほしいとしている。
内容を解析して“疑わしいサイト”であると判定されると、アドレスバーが黄色くなり、アドレス欄右にも“疑いのあるWebサイト”との表示がでる |
そのほかにもセキュリティーに関しては、各種履歴の一括削除やインストールされたActiveXコントロールの管理といった機能が紹介された。またウェブ開発者による確認が必要な項目として、HTTPSの処理向上についても説明され、デフォルト設定では“SSL 2.0”無効化されるようになったため、SSLを使うウェブサイトはSSL 3.0/TLS 1.0を使用してほしいといった要請も行なわれた。デジタル証明書についても、期限切れや無効な証明書のついたHTTPS接続については、アクセスがブロックされるように変更されている。
最後には“互換性と管理性”と題して、“CSS(Cascading Style Sheets)”のサポート改善や透過PNGサポート、国際ドメイン対応(URL欄に日本語ドメインを直接入力できる)などの説明が行なわれた。特に従来との互換性については、IEが単なるウェブブラウザーではなく、ウェブアプリケーションのインターフェースとして利用されている実情を踏まえて、「かなり高いプライオリティーで作業が進められている」(伊藤氏)という。CSSについてはこの記事にもあるようにCSS 2.1準拠するように実装されているが、すべてに準拠しているわけではなく、開発者のニーズが高いものを実装しているとのことだ。またCSS準拠についてもIE6から大きく変わっているため、ウェブ開発者による検証が要請されている。
IE7の製品版のリリーススケジュールについては、2006年後半のリリースとだけ述べられている。このとおりにリリースされるとすれば、一般ユーザーはWindows Vistaの登場前にIE7正式版を利用可能になるだろう。