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【INTERVIEW】AFP BB News松岡編集長――“引き金”が引ければ日本でも市民記者制度は動き出す

2006年03月09日 21時29分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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個人が自分の専門性に立脚して意見を述べられる場の形成を目指して

[編集部] AFP BB Newsの編集部のスタッフの数を教えてください。
[松岡氏] 50~60名です。ただし、すべてが会員の書き込みをチェックするためのスタッフじゃないですよ。AFP通信社の記事を翻訳して掲載するというのも、かなりの作業量ですから。
[編集部] 編集方針を教えてください。
[松岡氏] 最新の、世界中の情報を伝えていくというのが第一です。

また、一次情報と二次情報というのが仮にあるとすれば、一次情報が伝えた事件の背景や影響は何なのか、二次情報についていろいろなことを知っている当事者が発言していける場を作りたいと思っています。

こうお話しすると、既存のメディアを否定しているようにも聞こえるかもしれませんが、編集するという行為は、ある視点をもって情報をすくい上げることなので、それはそれで必要だと思います。

専門の記者が何らかの視点をもって取材をするというのも、これは必要だと思う。ただし、記者も100%あらゆる業界に詳しいわけでないので、本当に詳しい人が、情報のソースに近い人が直接配信したほうが、より正確に伝わることがあるでしょう。AFP BB Newsがコミュニティーメディアとしてそういう機会を作れたら、世の中の情報が厚みをましていくのではないでしょうか。
[編集部] お話を伺うと、やはり韓国の市民記者制度と編集方針が近いと感じるのですがいかがでしょうか(※2)。プロが書いた記事を発信する一方で、情報が発信できる読者を育ててそれを発信すると(詳細は関連記事を参照)。
[松岡氏] ウェイトの置き方が多少違うでしょう。AFP通信社の記事や報道写真を網羅的に配信するサービスはこれまでなかったので、AFP BB Newsではそれが大きな資産だと思っています。AFP通信社は企画記事も多数執筆していますので、それも将来的には配信したいと思っています。
※2 ビジネスモデルという意味では、オーマイニュースの場合は広告収入が柱。そのほか、市民記者の原稿料の“投げ銭(カンパ)”制度があって、その50%を手数料として徴収している(詳細は関連記事を参照)。AFP BB Newsの場合は、現在は広告収入のみで運営している

[編集部] 韓国の話題を続けますが、オーマイニュースの市民記者制度を支えているのは社会意識が高い世代(現在の30~40代)だと聞きます。「日本のマスメディアの報道は一方的だ」という意見もありますが、独裁政権が長い間続いた韓国とは状況が異なるわけで、果たして需要があるのでしょうか。
[松岡氏] 日本のマスメディアは、バランスがとれていると思います。しかし、構造的にいうと、いろんな個人がもっと情報を出せると思うんですよ。

私はかつてリクルートの“就職ジャーナル”という編集部で編集者をやっていました。取材もたくさん受けましたし、記者の目を通してさまざまな情報が出て行くのも、いいことだと思います。しかし、“就職”であるとか他人の人生に大きな影響を与えるようなポイントでは、やはり当事者が書いたほうが詳しくなるし、読者に伝わると思う。

そういう専門性を持っている人はたくさんいるし、一人ひとりが自分の専門性に立脚していろんな意見を言える機会があれば、しかもある程度テーマを決めながら議論をすれば……。今時点で需要がないのかもしれないけれど、“引き金”が引ければ動き出すかもしれない
[編集部] “livedoor ニュース”の“パブリック・ジャーナリスト”であるとか、日本にも一種の市民記者制度を導入しているメディアはありますが、それらは“引き金”がうまく引けなかったと。
[松岡氏] 他社のサービスを批評できる立場にありませんが、やり方の丁寧さであるとか、まだまだやり方はあると思います。
[編集部] では、引き金はどこにあるとお考えでしょうか。
[松岡氏] まだブログしか提供できていないですけれども、今は企画中で、申し上げられません。


誰でも主役になれる!

[編集部] 編集長として就任なさったのはいつでしょうか。
[松岡氏] 昨年の12月です。当然、企画はそれ以前も動いていて、その存在も知っていたのですが、編集長として関わるようになったのは、年末ですね。
[編集部] リクルート、ファーストリテイリング、そしてソフトバンクとさまざまな経験を積まれていますが、ニュースコミュニティーサイトの編集長は、どのような思いで引き受けたのでしょうか。
[松岡氏] 就職ジャーナル編集部に属していた時代に、自分が就職ジャーナルで発信したメッセージが多くの企業や個人に影響を与えて、多くの人が行動をとってくれるという経験をしています。ですから、もともとこういう企画が好きなんでしょうね。
[編集部] テーマかもしれないと。
[松岡氏] そうですね。世の中をどう変えていくか、というのが。“ユニクロ”も、何らかの形で日本を変えましたよね。「あのビジネスモデルを使って日本を変えたい」という思いがずっとあったんですよ。
[編集部] では、日本を変えるまではこのAFP BB Newsも続けるぞと。
[松岡氏] そうそう。
[編集部] 会員をどれだけ獲得できるか、エグゼクティブプロデューサーの孫 泰蔵氏は、「世論を作る」という文脈で数百万人とおっしゃっていましたが。
[松岡氏] いや、いきますよ。日本の場合、道は険しいですけどね。やっぱりマスメディアもバランスがいいし、その中で始めていく難しさはあるけれども、逆に言えば、今現在、日本国内にありませんから。メディアを通して一方的に聞くのではなく、色んな人が参加して世論を形成する環境ができたら今ない価値が生まれますから誰でも主役になれるんですよ

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