ソウル都心から光化門を望む |
“電車男”を持ち出すまでもないが、ウェブログや掲示板の話題を書籍化したり、人気ブロガーを職業ライターとして勧誘したり、インターネットは良質なコンテンツを求めるメディアの“草刈場”になっている。
今回の特別企画では、インターネットコミュニティーサービス/インターネットジャーナリズムの先進国である韓国のメディア事情を、“市民記者”ビジネスを中心に取り上げる。市民記者とは、詳しくはインタビューで後述するが、韓国オーマイニュース社のインターネット新聞“オーマイニュース(OhmyNews:2000年2月創刊)”が確立させた一般市民による記事投稿/掲載システム。市民記者ではない一般市民からのコメントの投稿も受け付けている。
日本の市民記者制度というと、2004年に始まった“livedoor ニュース”や“JanJan”の試みが最も知られているが、それらの立ち上がりを見て「日本に市民記者制度はあまりなじまない」と一刀両断するのは早計だろう。“市民記者”とはうたっていないが、“神奈川新聞”“CNET Japan”“ITmedia”などのように、記者/公式ブロガーの記事に対してコメントを受け付け、読者との対話とそれによるコンテンツの形成を試みるメディアは枚挙にいとまがなく、活発な議論が行なわれているテーマもある。
日本企業が日本式市民記者ビジネスを模索する一方で、韓国から韓国で一定の成功を果たしたサービス事業者が、日本進出の機会をうかがっている。韓国国民の3分の1以上にあたる約1700万人(※1)が登録しているコミュニティーサービス“サイワールド”が「インフラが整備されており、インターネット利用者の親密性も高く、市場性がある」として、昨年12月に日本版の正式サービスを始めた。韓国の人口約4819万人(※2)というのは、驚くなかれ、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモグループの契約数と同規模にあたるのだ。
ASCII24編集部が今回取材を行なったのは、オーマイニュース、レギュラー番組に市民記者制度を取り入れた民間放送局のSBS(ソウル放送)社、韓国最大級のポータルサイト“Daum”を運営するダウム・コミュニケーションズ(Daum Communications)社、そして市民記者制度ではないが韓国インターネットコミュニティーサービスの最大手であるサイワールドのSKコミュニケーションズ社。市民記者が変える韓国メディア事情から、気になる原稿料やビジネスモデル、現場の体制などを伺い、市民記者ビジネスの現状とその可能性を探る。通訳および監修はジャーナリストの趙 章恩氏。
※1 2005年12月現在※2 2004年7月現在
写真左上から時計回りに、オーマイニュース社 ニュースゲリラ本部本部長 ソン・ナクソン氏、SKコミュニケーションズ社 サイワールドサービスチーム課長 ペク・スンジョン氏、Daum Communications社 DAUMメディア メディア本部長 チェ・ジョンフン氏、SBS(ソウル放送)社 報道局 インターネット部部長 キム・ヨンファン氏 |
第1回はインターネット新聞最大手の“オーマイニュース”
オーマイニュース社が入る集合ビル |
連載の第1回はオーマイニュース社だ。オーマイニュース社の社屋は、政府総合庁舎やソウル市庁、各国の大使館、新聞社などが立ち並ぶ韓国政治経済の中心地“光化門”に位置する。オーマイニュースが創刊したのは2000年2月のこと。現在は30名の職業記者(内部の専門記者)と、事前登録を行なった“市民記者”約4万人を抱える、韓国最大のインターネット新聞社だ。
市民記者として記事を投稿するには、まず“読者会員”登録を行なってから“記者会員”として記者規約と記者倫理綱領を守ることに同意し、氏名/住所/電話番号/住民登録番号/職業/メールアドレス/自分のブログまたはホームページのURLを登録する。一方、一般の読者は記事に対して実名/匿名でコメントを投稿でき、同様の登録手続きを行なった後に実名で投稿すると、そのコメントは優先的に表示される(サイト上で表示されるのは実名ではなくID)。
今回ASCII24の取材に応じてくれたオーマイニュースのニュースゲリラ本部本部長 ソン・ナクソン氏は、企業広報からオーマイニュースに転職。市民記者としての取材活動も経験しており、市民記者出身のスタッフはオーマイニュースでは珍しくないという。ソン氏は現在デスクとして、市民記者から送られた記事の編集を担当する。インタビューは2005年12月27日に行なった。