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活用の幅を広げる“PDFの進化”と印刷用PDFのISO規格“PDF/X”を詳解!!――“PDF Conference 2005”開催

2005年11月09日 23時34分更新

文● アスキー書籍編集部 遠藤さちえ

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東京・品川のゲートシティ大崎 ゲートシティホールで8日、PDFのユーザー同士による人的交流および技術情報交換イベント“PDF Conference 2005”が開催された。主催はユーザーグループであるPDF Conference実行委員会で、アドビ システムズ(株)が後援している。

“PDF Conference 2005”の模様
“PDF Conference 2005”が行なわれたゲートシティホール。ほとんどの席が埋まっている盛況ぶり(写真は午後の部)

このイベントでは、2004年12月にアドビ システムズが発表したPDF作成ソフト『Adobe Acrobat 7.0』でさらに進化したフォーマット“PDF 1.6”や、携帯電話向けPDFなど今後のPDFの展開や活用事例、ならびにISO(International Organization For Standardization、国際標準化機構)で認可された印刷用PDFの国際標準規格“PDF/X”について、3つのセッションで展開された。

午前中に行なわれた第一部では“Adobe PDFの進化と実像”と題して、アドビ システムズのマーケティング本部の小圷義之(こあくつよしゆき)氏が、PDF 1.0から最新のPDF 1.6までの進化とその過程、さらに携帯端末など閲覧環境の拡大といった現状を紹介。PDFは、もはや単なる文書フォーマットではなく、文書やデータ、注釈をまとめて扱う“情報コンテナ機能”と、電子署名やタイムスタンプ、セキュリティーポリシーなどの“セキュリティー機能”を併せ持つ“セキュアな情報コンテナ”として広く活用できる点を強調した。その活用例として、注釈機能による内容チェックの効率化や、形式の異なる複数文書をひとつのPDFファイルに集約するといったコラボレーション(共同作業)での利用、電子フォームによるビジネスプロセスの合理化などを挙げた。

続いて、アドビ システムズのマーケティング本部クリエイティブ プロフェッショナル部フィールド プロダクトマネージャーの西山 正一氏と、(株)ネットドリーマーズのビジネスソリューション本部R&Dグループ グループ長の吉田 謙氏により、携帯電話向けPDF閲覧ソフト『Adobe Reader LE』を利用したモバイルコンテンツサービスの運用例や作成法が紹介された。

ネットドリーマーズが運営するPDF競馬新聞サービスと、携帯用モバイルPDFコンテンツの制作過程
ネットドリーマーズが運営するPDF競馬新聞サービスと、携帯用モバイルPDFコンテンツの制作過程。元々パソコン向けのPDFサービスを行なっていたため、携帯用PDFコンテンツ作成については「ほとんど苦労がなかった」と述べる

まず、ネットドリーマーズがパソコン向けに行なっていたPDF版競馬新聞サービスをモバイルPDFのコンテンツとして提供開始したところ、パソコン版の利用者が約2000人だったのに対し、携帯版では2万人以上のユーザーを獲得できたという。また、同社の携帯電話向けeコマースサービス“美食総合倶楽部”も例に挙げ、モバイルPDFのメリットとして、PDFによる一覧性と表現性の高さに加えて、「ユーザーにオフラインでじっくり見てもらえること」や「紙やパソコンより携帯の画面を見せたほうがクチコミが広がりやすい」こと、「パソコン向けより携帯のほうがレスポンスが早く、クリックしたら商品サイトが表示され、その物が欲しければすぐに(購買)行動に移ってもらえる」などの利点を述べた。

携帯eコマース“美食総合倶楽部”
コマースでのモバイルPDFの活用例として、同社の携帯eコマース“美食総合倶楽部”を紹介

続いて、西山氏が同社のウェブサイト作成ソフト『Adobe GoLive CS2』と“iモードPDFコンテンツ作成ガイド用サンプルファイル”を使用して、HTML(ウェブページ)のデザインからモバイルPDFを作成する手順や、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(NTTドコモ)のウェブサイトからダウンロードできる“iモードコンテンツ開発ツール”で動作確認する方法などをデモを交えて説明。最後にモバイルPDFにおけるメリットを

  • 場所を選ばず情報入手
  • パソコンベースよりも広いユーザー層でビジネスチャンスの拡大
  • 必要な情報がPDF1枚で完成
  • 今あるノウハウを流用可能

のように挙げて締めくくった。

Flashコンテンツへの修正指示入力の手順
コメントが付けられている画像はFlash形式のコンテンツだが、この画像に直接コメントを付けられないので、描画ツールを使って周囲を囲むように長方形を描き、その図形にコメントを付けるという手順を紹介

午後からの第二部は“ドキュメント作成プロセスを効率化する Adobe Acrobatの最新活用術”として、PDF Conference実行委員会の黒田 聡氏が登壇。文書の内容確認と朱書き指示を“PDFチェック&コメント”と呼称して、Adobe Acorbat 7.0の注釈機能を活用する方法を、デモを交えて分かりやすく紹介した。注釈機能の基本的な使い方に始まり、描画ツールを利用した段落やイラスト、文書内のFlashコンテンツなどへのコメント入力手順、コメントした人を識別する方法、メールによるコメントの受け渡し、複数コメントのとりまとめ、電子メールで文書を送付する際の保護機能、さらに旧バージョンが混在している場合の注意点など、実用上つまづきそうな部分まで事細かに語られた。



PDFのオリジナル文書や、関連資料などファイル形式の異なるファイルを添付しているところ
PDFのオリジナル文書や、関連資料などファイル形式の異なるファイルを添付しているところ。この状態でパスワードやデジタルIDなどによるセキュリティー設定を行なえば、添付ファイルも同時にロックがかかるので、安全に電子メールで送付できる

第三部は、PDFイニシアティブジャパン(PIJ)の代表でウェブマガジン&PDF雑誌“PDF Journal Japan”の編集主幹でもある井上 務氏が、ISOが標準規格として制定した印刷目的のPDFのガイドライン“PDF/X”の最新動向と、PDF/Xを強化する“PDF/X-Plus”を紹介した。

PDFイニシアティブジャパンの代表でPDF Journal Japanの編集主幹の井上 務氏
PDFイニシアティブジャパンの代表でPDF Journal Japanの編集主幹の井上 務氏

PDF/Xは、印刷用原稿をネットワークでやりとりするための標準フォーマット作りに端を発した規格で、PDFの仕様を一部制限しているところがある。しかし、PDF/X(より印刷用途向きの規格PDF/X-1a)が策定されても、印刷上必要となる線幅の規定や最小文字サイズの制限がなく、さらにCMS(カラーマネジメントシステム)の標準が決まっていないなどの不確定要素が残っており、ガイドラインであるPDF/Xに則ったとしても印刷品質を保証できないのが現実である。そこで、こうした不確定要素に対して、ベルギーに本拠地を置く非営利団体“Ghent PDF Workgroup(GPW)”が、さらに細かいルール付けを行ない、PDF/Xを安定して運用するためのガイドラインとして策定したのが“PDF/X-Plus”だ。その内容は印刷目的別に9種類のサブセットが策定されており、共通の必須条件として

  • PDF/X-1a:2001に準拠すること
  • 透明色の使用不可
  • PDFWriterではPDFを作成しない

など19項目が設定されている。ここではさらに、ベルギーEnfocus Software社の『PitStop』というプリフライト(※1)や修正機能が強力な“Acrobatプラグイン”と、GPWのサイトからダウンロードできるPitStop用プロファイルを含むツールとガイドラインで、最も厳密にPDF/X-Plusを作成する方法も紹介された。

※1 プリフライト 印刷出力を行なう前に、フォントや罫線、解像度やカラーなど出力に問題がないかどうかをチェックする機能

ただ、このPDF/X-Plusも欧米での利用を前提としているため、日本国内で活用するには、日本国内仕様に合わせた修正ガイドラインが必要となり、現在その策定や普及活動を行なう“PDF/X-PlusJ推進協議会”を立ち上げ、2006年1月に日本版を策定する予定になっている。今後のPDF/X-Plus日本版の課題は、日本にあった仕様の研究と制作環境の底上げ、さらにCMSにおいて日本での色再現基準である“Japan Color 2001”の普及と標準印刷への理解を深めてもらうことだという。今後のPDF/X-PlusJ協議会の活動に期待したい。

印刷関連業界の展示会“JGAS 2005”の模様
10月に東京ビッグサイトで開催された印刷関連業界の展示会“JGAS 2005(Japan Graphic Arts Show 2005)”での“PDF/X-PlusJ”関連ブースの模様も紹介された

続いて、(株)ビィーガ(Be-GA)の根岸和弘氏が、印刷用PDF/X-1aの実践的な作成方法を紹介した。まず、PostScriptファイルをPDFファイルに変換するサーバー製品『Adobe Acrobat Distiller Server』の“プレス品質”ジョブオプション(フォントの埋め込みや画像解像度など詳細に決められたPDFの設定)を用いてフォントを埋め込み、カラースペースはCMYKおよび特色、オーバープリントを設定、さらに線の太さは0.1mm以上(ブラックで100%)など、印刷用PDFの作成条件に合わせた項目を紹介。例えば線の太さなら、Excelの細線やPageMakerの極細線は使わないなど、条件ごとの細かい注意点も解説された。また、DTPソフト『Adobe InDesign CS2』や画像作成ソフト『Adobe Illstrator CS2』、(株)ソフトウェア・トゥーのDTPソフト『QuarkXPress』の各アプリケーションごとのPDF/X-1aの生成方法とコツを画面を見せながら説明した。

Acrobat 7.0搭載のプリフライト機能を使った“PDF/X-1a:2001”準拠のPDFファイルのチェックと修正方法、そして制作側と印刷側との印刷ワークフローとそのチェックリストが紹介され、すべてのセッションが終了となった。

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