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【最新パーツ性能チェック(Vol.29)】最後のクロックアップ!Pentium 4-570J(3.8GHz)のパフォーマンスと省電力機能を探る

2004年12月01日 22時29分更新

文● アスキープラス編集部 野口岳郎

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 では“E0”ステップは何がそんなに違うのか。インテルは3点を挙げている。


(1)エグゼキュート・ディスエーブル・ビット


 “エグゼキュート・ディスエーブル・ビット”は、AMDなどがNX(No eXxecution)と呼んでいる、CPUによるウイルス実効防止機構のこと。
 インテルは64bit化に際してAMD64アーキテクチャを採用したのに“EM64T”などと名付けているから、今回もNXという名前をいやがっただけという気もするが、実はそうではな。NXに相当する機能は、AMD64(Opteron/Athlon64)以前にすでに、Itanium用のIA64アーキテクチャで導入されており、マニュアルには“execute disable bit”と書かれている。いわば用語としてはこっちが本家と言える。
 このビットの機能はすでに解説されているように、データ用として確保したメモリ領域でプログラムを実行しようとすると、CPU自身がこれをトラップするというものだ。多くのウイルスが用いる“バッファオーバーラン”というテクニックでは、データ用の領域にウイルスプログラムを送り込んで実行するため、それを未然に防ぐことができる。この機能を活用するにはWindows XPの場合SP2を導入する必要がある。

データ実行防止
コントロールパネル-システム→詳細設定→パフォーマンス→設定→データ実行防止のパネル。NX/XD非対応のCPUでは、下部に「お使いのコンピュータでは、ハードウェアによるDEPはサポートされません」と出る。ここに何も表示されていないのがNX/エグゼキュート・ディスエーブル・ビット対応の証となる。

(2)C1Enhanced


 “C1Enhanced”というのは、CPUのアイドル時(C1ステート)の消費電力を今まで以上に減らすための新機能だ。これは、CPUがアイドル時(HALT命令、またはMWAIT命令が発行された場合)に内部的に自動で行なわれるため、OSなどの対応は一切必要ない。
 C1ステートでは、不要不急な回路の電源を切り、多くのクロックが停止する。ただ、生きている部分のクロックと供給電圧には変更はなかった。これに対しインテルの発表によると、“C1Enhanced”対応のCPUでは、アイドル時に生きている部分のクロックと電圧を下げる。これにより、消費電力を3分の1ほどにすることができるという。

 ライバルのAMDが、Athlon 64に最初から“Cool'n'Quiet”という省電力技術を組み込み、好評を博している。90nm版ではさらにTDP(Thermal Design Power)まで下がっている。インテルとしては、消費電力を高いままにしておくのは放置できなかったに違いない。
 ただ、電圧とクロックを下げる、という点では共通していても、“Cool'n'Quiet”の動作メカニズムは“C1E”とはかなり異なる。C1Eはあくまでアイドルになったときに機能するもので、通常動作時には常にフルパワーであるのに対し、“Cool'n'Quiet”は、動作中のCPUの負荷を見て、周波数と電圧を制御するものだ。アイドル状態はまた別にある。したがってAthlon 64の場合は、フルパワー状態のアイドルモードと、ローパワー状態のアイドルモードがあり、それぞれ消費電力が異なる。フルパワー状態のアイドル時には電圧やクロックは下げていないようで、最大電流量は結構多い。この状態と比較するなら、Pentium 4のC1Eのほうが省電力の度合いは高いだろう。いっぽう、非アイドル時においては、負荷に応じてこまめに電力削減を行なうAthlon 64のほうが省電力効果は高い。
 結果的にどれくらい省電力になるか、また、そもそもPentium 4、Athlon 64がどれくらい電力を使っているかについては後ほどテスト結果をお届けする。

 なお、Athlon 64においては、ローパワーモードではクロックを1GHzまで、電圧を1.1Vまで下げることがデータシート上で明らかになっているが、Pentium 4については値は不明だ。そこでCrystal CPUIDのRealtime Clockを表示させたところ、570J(3.8GHz)の高負荷時のクロックはFSB 200MHzの19倍速(=3800MHz)と妥当なものだが、アイドル時には270MHzの14倍速で3800MHzという奇妙な表示になった。FSBが270MHzでは省電力どころかとんでもないオーバークロックなので、実際にこのようなクロックで動いているとは考えられない。実は正しいのは14倍速のほうだけ、FSBは当然ながら200MHzのままだとすると、クロックは2.8GHzということになる。
 クロックが2.8GHzで、消費電力をノーマル時の1/3にするためには、電圧を0.95Vまで落とさなければ計算が合わなくなるが、アイドル時には内部回路レベルでの省電力もあるので、2.8GHzで、電圧はもう少し高くても、1/3にできる可能性は十分あるだろう。

Crystal CPUID
Pentium 4-570Jがアイドル時のCrystal CPUIDのRealtime Clockの表示。なぜかFSBが271MHzとなっているが、これはあり得ない。単に正しい値が取得できないだけなのかもしれないが、倍率だけは正しいと仮定すると、実周波数は2800MHzと推定できる。

(3)Thermal Monitor 2


 最後の“Thermal Monitor 2”というのは、従来からあった“Thermal Monitor”の強化版だ。“Thermal Monitor”は、CPUが危険なほど高温になった際に、クロックを1/3ほどに落とすことでCPUの冷却を計る保護機構だ。これでCPUが熱で破壊されるのは免れるが、ユーザーにとってはクロックをそこまで落とされては使い勝手が悪くなる。“Thermal Monitor 2”は、高温時の対応として電圧も下げるようにすることで、代わりにクロックをあまり減らさずに、同程度の冷却効果を得ようとするものだ。“Thermal Monitor”とどちらを使うかはシステムの設計による。
 発熱量はクロックと電圧の自乗に比例するから、たとえば電圧を1.4Vから1Vに下げれば、クロックを3.8GHzから2.5GHzに落とすだけで発熱量は1/3にできる。クロックだけで1/3にしようとすると、1.3GHzまで落とす必要があるが、これよりずいぶんパフォーマンスを維持できるわけだ。
 もっとも、“Thermal Monitor 2”はそもそも積極的に活用するものではなく、“Thermal Monitor”が発動したりしないようにきちんと冷却することのほうが先決だろう。

 なお、従来LGA775のCPUは、Pentium 4-550(3.4GHz)以上はすべてTDPが115Wとなっていた。ただ、クロックが違うのにTDPが同じというのはおかしい。インテルはLGA775のプラットフォームを、メインストリームのAタイプ(84Wまで)と、パフォーマンス向けのBタイプ(115Wまで)の2種類に分けていて、データシートに表示されるTDPは、実際のCPUの最大発熱量ではなく、AとBのどちらに属するかを表わしていると考えるべきだろう。その意味では、Pentium 4-550は115W食うわけではなく、84Wと115Wの間の「下の方」ではあったと思われるが、いずれにしろ84Wは超えていた。
 だが、“E0”コアのPentium 4-550は、ほとんどの製品が84W以内に変更されている(Processor Spec Finderでは、初期のものと思われる1製品だけ115W)。“D0”コアの製品はすべて115Wなので、“E0”コアではノーマル時の消費電力の削減もはかられていると見られる。

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