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日本IBMの大和研究所所長に内永ゆか子氏が就任――同社の研究開発への取り組みに関する説明会を開催

2004年07月30日 20時49分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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世界各地に点在するIBMの研究開発施設
世界各地に点在するIBMの研究開発施設

日本アイ・ビー・エム(株)は30日、東京・箱崎の同社オフィスにプレス関係者を集め、同社の研究開発への取り組みに関する記者説明会を開催した。会場には取締役専務で今年4月に開発製造担当の執行役員に、本日付けで大和システム開発研究所所長に就任した内永ゆか子(うちながゆかこ)氏、東京基礎研究所所長の久世和資(くせかずし)氏らが出席し、同社の研究開発を担う組織“東京基礎研究所”ならびに“APTO(アジアパシフィック テクニカル オペレーション)”の概要などを説明した。



取締役専務 執行役員開発製造担当の内永ゆか子氏 東京基礎研究所所長の久世和資氏
取締役専務 執行役員開発製造担当の内永ゆか子氏東京基礎研究所所長の久世和資氏

「イノベーションとインテグレーションで顧客を成功に導く」

APTOの組織概要図
APTOの組織概要図

APTOは、製品の開発ならびにリサーチ、基礎研究などを行なう部隊で、同様の基礎/製品開発研究所は世界各地に設置されている。日本では神奈川県大和市(やまとし)の“大和事業所”と、滋賀県野洲群野洲町(やすぐんやすちょう)にある“野洲事業所”の2ヵ所が存在し、東京基礎研究所は大和事業所内に設けられている。大和事業所はソフトウェア/ハードウェアの製品開発を、野洲事業所はハードウェアの製品開発を行ない、東京基礎研究所は両者を併せた基礎研究を行なっている。これらを同じ地域に設けているのはIBM全社を通じても異例だという。ちなみに、基礎研究所は全世界で、米国に3ヵ所(ニューヨーク/オースチン/カリフォルニア)、欧州に2ヵ所、アジアに3ヵ所の8ヵ所があり、研究員は合計約3000名で日本には約200名が在籍する。

APTOは1980年代から組織され、当初から“インテグレーション”(統合)を重視してきたが、IT環境を取り巻く変化に対応するべく活動内容も周期的に変わってきたという。これを内永氏は、

“フェーズ0”
部品レベルのインテグレーション(HDDやLCDなどの統合化)
“フェーズ1”
製品へのインテグレーション(ThinkPad開発への反映)
“フェーズ2”
システムレベルのインテグレーション(ThinkVantageなど)
“フェーズ3”
ソリューションレベルのインテグレーション(SCM=統合的な物流管理、SLM=サービスの質の管理、IPD=製品開発管理など)

とまとめ、フェーズ0とフェーズ1を“コモディティー化(大衆商品化向けの統合)”、フェーズ2とフェーズ3を“価値創造の分野”と位置づけている。現在は後者により注力しているが、この理由を「テクノロジーオリエンテッド(技術志向)から、全体を通じた製品価値の創造を重要視するように、研究員の姿勢を変更させている」と説明した。こうした変化に対応するため、組織間の連携強化や問題の共有化、他部署との信頼関係の構築などにも取り組んでいるという。

インテグレーションの推進 APTOソリューション開発の概念図
インテグレーションの推進を図り、顧客の声を開発現場にダイレクトに伝わるように組織改変を進めているというAPTOソリューション開発の概念図
APTOソリューションセールスの概念図 APTOアーキテクチャーボードの概念図
APTOソリューションセールスの概念図APTOアーキテクチャーボードの概念図

具体的には、“APTOソリューション開発”“APTOソリューションセールス”“アーキテクチャーボード”の3つを設置した。APTOソリューション開発は、顧客のニーズに合わせてAPTOの価値・強みを生かして統合ソリューションを開発・提供するもの。営業活動に技術支援を行なうと同時に、研究・開発部門のスキル拡大を促進するのが目的としている。APTOソリューションセールスは、研究員が営業部隊に同行することで、製品開発の現場に顧客の生の声を反映できるとしている。APTOアーキテクチャーボードは、既存の技術ではカバーできない顧客のニーズに対応するための部門で、ソフトウェア/ハードウェア/サービスおよび海外の開発チームから担当者を選出してギルドを作り、先進的な要求をより一般化した問題に消化・分割して製品化へのプロセスを進める。実際、これによる成功例もすでにいくつか報告されているとのこと。

組み込み用ソフトの技術的な革新を説明する図
組み込み用ソフトの技術的な革新を説明する図

一方、もうひとつのテーマである“イノベーション”(革新)については、「ハードウェアだけでなくソフトウェアも大きく変化してきた」と述べ、具体的にいくつか例を示しながら現在の取り組みを紹介した。そのひとつが、“デジタル情報家電”の分野で、日本/韓国/中国における市場の伸びを反映して、組み込み用のソフトやセキュリティー技術、ハードウェアでは汎用ASICやパッケージング技術、熱設計、省電力設計などを研究テーマとしていることを明かした。組み込み用ソフトは従来一つ一つの機能に合わせてプログラムコードを記述し、それらを組み合わせることで機能を実現してきたが、最近の多機能化によりこの手法ではコードが複雑化しメンテナンスも困難になってきた。そこで、IT技術を応用して再構成し、将来においても機能を増やしやすいもの(OSから共通APIを使用するモデルの導入など)を開発、顧客向けに提案を始めているという。

基礎研究が果たす役割の時代による変化
基礎研究が果たす役割の時代による変化

最後に東京基礎研究所所長の久世氏が挨拶に立ち、「大和という場所は、営業部隊のある箱崎まで急行一本で1時間ほどで来られる(※1)。ここに来ることで、日本の先進的な顧客の意見を聞きながら研究が進められる。研究員が営業/サービスチームと一緒に顧客へ出向くのは、決してコンサルタントの役割を奪うのが目的ではなく、コンサルティング業務の効率を高め、研究者は先々の研究課題を現場から得ることができるからだ」と、同研究所の新たな役割・取り組みを説明した。

※1 相互乗り入れしている東急田園都市線⇔営団半蔵門線を利用することで、大和事業所の最寄り駅である中央林間駅から箱崎事業所の最寄り駅である水天宮前まで乗り換えなしに行き来できる

会見後のQ&Aで記者から、取り組みの方針が基礎研究という分野を逸脱し、製品開発に軸足が移っているのではないか? という指摘に対しては、「基礎研究自体も続けているが、より現場に密着した製品やサービスにおける新たな研究課題(“サービスサイエンス”といった新しい学問)が出てきた、と認識している」(久世氏)、「最近は大学など他者との協力・協業によって得られる基礎技術も少なくない。基礎研究の分野は引き続き行なっているが、企業の中での基礎研究が果たすべき役割、求められる役割が変わってきた。企業に貢献するために新たな取り組みが必要になってきたということです」(内永氏)と答えた。



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