日本アイ・ビー・エム(株)は17日、東京・箱崎の同社オフィスで記者説明会を開催し、社内LANなどに接続しているクライアントマシンなどで、共通のビジネスアプリケーションやデータベースアクセス、ファイル共有、コミュニケーション(コラボレーション)ツールなどを提供する、サーバー管理型クライアントソフトウェアシステム“IBM Workplace(アイ・ビー・エム ワークプレイス)”を発表、6月以降順次対応製品を提供していくと発表した。
理事 SWブランド&スペシャルティ担当の川原 均氏 | ロータスブランドマネージャーの澤田千尋氏 |
第1弾として、現在開発中のビジネスソフトウェア製品群『IBM Lotus Workplace 2.0』をNECネクサソリューションズ(株)、(株)大塚商会、日立ソフトウェアエンジニアリング(株)など、ビジネスパートナー約10社と日本IBMから6月に販売開始する。
IBM Workplaceの位置づけ |
説明会には、理事 SWブランド&スペシャルティ担当の川原 均(かわはらひとし)氏とロータスブランドマネージャーの澤田千尋(さわだちひろ)氏らが出席し、製品の位置づけや開発の背景などを語った。
IBM Workplace Client Tecnologyアーキテクチャーの解説図 |
川原氏は、まずIBM Workplaceについて、「IBMが全世界で展開している“オンデマンド・ビジネス(エンド・トゥ・エンドで統合して市場の変化に迅速に対応できるビジネススタイル)”の一翼を担う既存の製品群、Javaベースのウェブベースアプリケーションサービス“WebSphere(ウェブスフィア)シリーズ”、グループウェア/ファイル共有システム“Lotus Notes(ロータスノーツ)/Domino(ドミノ)シリーズ”、セキュリティー管理システム“Tivoli(チボリ)シリーズ”などの技術を応用して開発したサーバー管理型クライアントソフトウェアシステム。ネットワークに接続したクライアントに対して、統一したビジネスアプリケーションの自動配布/アップデートが行なえるほか、オフラインでも利用でき、ネットワークに再接続した際にはクライアント側で更新したファイルを自動的にデータベースに転送してファイルの同期を図るなどの機能(“IBM Workplace Client Technology”と呼称)を持つ。いうなれば、使用するOSやマシンスペック、利用環境などがユーザーごとに異なるフロントエンドを統合し、ビジネスプロセスや情報管理を行なうバックエンドと結びつける役割を果たす、根幹となる技術」であると説明した。「また、“WebSphere Everyplace”(携帯電話/PDAなどをクライアントとするWebSphereシリーズ)によって、将来は携帯電話やPDAにも対応する“Workplace Client Technology: Micro Edition”も開発している」と話した。
IBM Lotus Workplace 2.0製品群 |
次に澤田氏が、「ロータスブランドのイメージカラーの黄色いネクタイをしようと思ったのですが、これは金色でしたね」と切り出したあとで、IBM Workplace対応アプリケーションの第1弾となる『IBM Lotus Workplace 2.0』について詳細を明らかにした。実はIBM Lotus Workplaceは、米国では昨年中に同 1.0/1.1をリリースしていたが、日本で提供するには機能面で不足があると判断し、内容が充実した2.0をもって日本でも販売開始することになったと説明。
続いてLotus Worlplaceを構成する6つのアプリケーションを、デモンストレーションを交えて具体的に説明した。
- Messaging
- メール&スケジュール管理機能(ウェブブラウザー版/クライアント版)
- Documents
- ワープロ/表計算/プレゼンテーションなどのビジネス文書の編集・管理機能(ウェブブラウザー版/クライアント版)
- Team Collaboration
- 在席/離席確認やチャット、ミーティング、コラボレーション、データ共有など共同作業向け機能(ウェブブラウザー版)
- Collaborative Learning
- 学習ソフト機能、ヒューマンキャピタルマネジメント(人事系システム)にも連携可能
- Web Content Management
- ウェブサイトの管理ツール、コンテンツの作成/公開/アーカイブなどライフサイクルにあわせた管理が可能(Domino版/Java版)
- Builder
- ユーザーインターフェース(テンプレート)をカスタマイズする機能、管理者はユーザーごとにカスタマイズ可能な範囲を指定可能
例えばDocumentsは、Microsoft Officeシリーズで作成したビジネス文書を読み込んで、文字や装飾の簡易編集が可能なビジネスアプリケーション。内容の確認や書き込みなど、簡単な編集作業だけなら、すべてのクライアントにフル機能・フルパッケージのオフィススイートは必要ないだろうという考えから、こうした機能を低価格に提供するもの(ファイル互換性や具体的な編集機能の詳細については、現時点で明らかにされなかった)。
IBM Lotus Workplaceのログイン画面。ユーザー名/パスワードのほか、作業状態やチャットへの対応の可否といったステータスを設定してログインできる | IBM Lotus Workplaceのメイン画面 | |
さらに、クライアント版(IBM Workplace Client Technlogy対応)では、データの暗号化やデータベースへのファイル書き込み/取り出し(チェックイン/チェックアウト)、個人別アクセス権管理などが可能になるという。
また、今後12ヵ月間のロードマップとして、データ連携が可能なLotus Notes/Dominoの最新版(Ver.6.5.1)を第2~3四半期に、IBM Lotus Workplace製品のバージョンアップ版(Ver.2.5)を第4四半期にそれぞれ発表。来年(2005年)第1四半期には専用テンプレートを用いることでIBM Workplaceテクノロジーに対応可能なLotus Notes/Domino 7.0、再来年(2006年)にはIBM Workplaceにネイティブ対応のLotus Notes/Domino 8.0を準備していることを明らかにした。
今後12ヵ月間のロードマップ |
最後に川原/澤田両氏は、「これはNotes/Dominoを置き換えるものではない」と集まった記者に念を押すように繰り返した。これは、従来の大規模な企業/グループ向けに一括導入するサーバー製品&システムとは異なり、IBM Workplaceの対応製品群は小規模なプロダクトグループ/事業部レベルでも1クライアントあたり数百~数千円レベル(1コンポーネント/1ヵ月あたり)という低コストで導入できることを強調するためだと思われる。「IBMとしてはこうした(低価格なクライアントライセンスベースでの)ビジネスは初めての試み」(川原氏)と話し、6月の正式な対応製品発表を期待してほしいと締めくくった。