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マイクロソフト、北海道における協働事業の提携発表会を開催――「北海道にITスキルを持つ人材がステラのように輝いてほしい」

2004年06月29日 17時28分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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東京と札幌の同時中継による記者説明会の様子
東京・六本木ヒルズの森タワーと北海道・札幌の京王プラザホテル札幌をネットワーク回線で結ぶ同時中継で記者説明会は行なわれた

北海道とマイクロソフト(株)は29日、東京・六本木の六本木ヒルズ森タワー、および北海道・札幌の京王プラザホテル札幌の2拠点をネットワーク回線による同時中継で結んで記者説明会を開催し、北海道における両者の協働事業の提携を発表した。東京会場には米マイクロソフト社のCEO(最高経営責任者)のスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)氏、マイクロソフト(株)の代表執行役社長のマイケル・ローディング(Michael Rawding)氏、執行役公共インダストリー統括本部長の大井川和彦(おおいがわかずひこ)氏が、札幌会場には北海道知事の高橋はるみ氏、公務で出席できなかった札幌市長の上田文雄(うえだふみお)氏の代理として副市長の小澤正明(おざわあきひろ)氏、(株)北海道ソフトウェア技術開発機構の代表取締役社長の岩井 滉(いわいひろし)氏らが出席し、協業提携の背景などを説明した。



米マイクロソフト社のCEOのスティーブ・バルマー氏ら東京会場の出席者
東京会場の出席者。左から米マイクロソフト社のCEOのスティーブ・バルマー氏、マイクロソフト(株)の代表執行役社長のマイケル・ローディング氏、執行役公共インダストリー統括本部長の大井川和彦氏

ベンチャー企業の推進とITスキル向上を目指す2つの協業を実施

今回発表された協業事業の内容は、以下の2つ。

  1. フロンティアベンチャー育成プロジェクト with マイクロソフト
  2. 高等技術専門学院IT人材育成プロジェクト(通称:ステラプロジェクト)

前者は、北海道と札幌市、北海道ソフトウェア技術開発機構の3者で組織される、北海道や札幌市におけるIT関連の中小企業の支援団体“フロンティアベンチャー育成プロジェクト実行委員会”にマイクロソフトが協力し、OSやミドルウェア、開発ツールなどのソフトウェア(マイクロソフト製品)と、サポートやトレーニングなどの人材育成プログラムを無償提供するもの。今後1年間に5社の支援を目標としている。

北海道知事の高橋はるみ氏 札幌市副市長の小澤正明氏 北海道ソフトウェア技術開発機構の代表取締役社長の岩井 滉氏
北海道知事の高橋はるみ氏札幌市副市長の小澤正明氏北海道ソフトウェア技術開発機構の代表取締役社長の岩井 滉氏
札幌会場の出席者。左から順に、北海道知事の高橋はるみ氏、札幌市副市長の小澤正明氏、北海道ソフトウェア技術開発機構の代表取締役社長の岩井 滉氏

後者は、北海道内に点在する12の道立高等技術専門学校、および北海道障害者職業能力開発校において、各種資格取得に対応するIT教育を実施するもの。学生向けには“MCA(Microsoft Cartified Associate、総合的なIT技術や知識の理解を図る)”および“MOS(Microsoft Office Specialist、オフィスアプリケーション全体の利用能力や理解を図る)”の資格取得(ただしMOSは2005年から開始予定)、指導員向けには“MCP(Microsoft Cretified Professional、MCAより高度な知識やITスキルを求める)”“MCA”“MOT(Microsoft Official Trainer、各種マイクロソフト製品のインストラクターを育成する)の資格取得を目指す。また、2005年には離転職者や在職者向けの訓練プログラムとして、MCA取得を目指すIT研修も実施する予定となっている。

今回の協業について、北海道知事の高橋氏は「“札幌バレー”に代表されるIT産業の集積地として、独創的な企業も多く存在する。これらの企業のさらなる活性化を模索していたところに、マイクロソフトが“ベンチャー企業支援プログラム”の提供を申し出てくれた。また、ステラプロジェクトは、ラテン語の“星”を意味する“ステラ”から名付けた。北海道にITスキルを持つ優秀な人材がステラ(星)のごとく輝くことを期待している」と、期待感を表した。

バルマー氏は、「(自分自身は)残念ながら北海道には行ったことがないが、(マイクロソフトとしても)フロンティアスピリットを持つ北海道のIT企業の成長は今後の重要な課題と捉えている。IT産業はソフトウェア開発やサービスが中心で、工場(のようなITの導入で生産性の向上を図れる職種)とは違う。マイクロソフトはこれまでも、“人やビジネスのチャンスを最大化する”と述べてきたが、我々のビジネスにおいては、工場や生産現場ではなく最新技術を理解する人材を育成し、新たな企業(事業)を設立する場を提供することが重要だ。これは北海道を助けるプロジェクトであると同時に、人材育成やビジネスチャンスを提供する場でもある。マイクロソフトがハイテク産業を育成したい(IT市場を広げたい)というゴールにも適合する。こうしたチャレンジは世界的に見ても初めてであり、マイクロソフトとしても期待を持っている。北海道の方々とハイテク産業を育て上げることを楽しみにするとともに、近いうちに北海道を訪れてみたいと思っている」と述べた。

大井川氏の補足によると、こうしたベンチャー企業の支援、ならびに学教向け資格取得支援のプロジェクトはマイクロソフトとしても世界でも例を見ず、日本では企業支援プロジェクトを岐阜県で行なったほか、兵庫県では学校教育の現場にIT機器を導入し、カリキュラムの提供を行なったことはあるが、より直接的に資格取得の手助けをするのは今回が初めてだという。

札幌会場で高橋知事が調印しているところ 調印を終えたローディング氏が、Tablet PCをプレスに見せている
札幌会場で高橋知事が調印しているところ調印を終えたローディング氏が、Tablet PCをプレスに見せている
Tablet PCでの調印の模様

一連の説明と挨拶を交わした後で、東京会場はローディング氏が、札幌会場では高橋知事が、それぞれネットワークで接続したTablet PCを手にして相互に署名(調印式)を行なった。ローディング氏はこの協働事業のために昨年2度、今年は5月半ばに北海道を訪れている。氏は「札幌にある中小企業の素晴らしい製品品質、能力をお持ちだということがわかった。こうした方々を支援する方法を模索してきたが、まずは5つの企業の支援から始めていく。ただ、より重要なのはコミュニティーを形成していくこと。支援を受けた企業はもちろん、その周りに注目が集まり、多くの人が賛同してくれることで輪を広げていくことが重要だ。トレーニングセッションは今後、より多くの企業にも提供していくつもりだ。前向きな活動が札幌から起こっていることを、多くの企業/人に知ってほしい」と語った。

「宗旨替えではない。IT産業の現状を見れば、協業のメリットは大きい」と高橋知事

一連の説明の後で、記者から「なぜ北海道という地を選んだのか?」という質問に対して、大井川氏は「マイクロソフトでは長年北海道にフォーカスしてきた。以前から大学との連携を進めており、北海道大学と(マイクロソフトの)ソフトウェア開発部隊が連携したり、マイクロソフトの技術者による講義なども繰り返している。今回はそれをさらに推し進める形で実践したものだ」と答えた。また、「これまで高橋知事はLinuxなどオープンソースの導入に前向きだった。またベンダー資格の取得を促すというのも、公の役割としては行き過ぎの感があるのではないか。うがった見方をすれば宗旨替えしたのかと言われるかもしれないが?」との厳しい質問に、高橋知事は「確かにこれまでオープンソースの導入支援を行なってきた。しかし、これだけ多様化が進み、一方で企業や学校へのIT導入が進むと商用ベースかオープンソースか、どちらか一方しか選ばないというわけにはいかない。IT産業の現状を見ると、多くのユーザーがマイクロソフトの製品を使っているのも事実だ。北海道内のIT企業振興を進める上で、マイクロソフトとの協働プロジェクトは大きなメリットがあると考えた。またベンダー資格の取得支援について、ほかの企業から申し出があれば前向きに検討し、お受けしていきたい」と理解を求めた。

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