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ITSSユーザー協会の専務理事の高橋秀典氏 |
特定非営利活動法人ITSS(ITスキル標準)ユーザー協会と(株)クイックは26日、東京・赤坂のクイック セミナールームにおいて、ITSSの意義や必要性、導入・運用に関する注意点などを啓蒙するプレスセミナーを開催した。セミナーには、かつて日本オラクル(株)で技術者認定制度“ORACLE MASTER(オラクルマスター)”の策定にも携わったというITSSユーザー協会の専務理事の高橋秀典氏、クイックのITSS事業推進部コンサルティングチーム チーフマネージャーの樽谷謙二氏らが出席。すでにITSSを自社の独自スキル制度と融合して活用している大手製薬会社のファイザー(株)の導入事例などを挙げながら、詳細を説明した。
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クイックのITSS事業推進部コンサルティングチーム チーフマネージャーの樽谷謙二氏 |
高橋氏は、2年前に経済産業省からITSSが策定された背景について、「IT技術の国際競争力を付けるために、経営者/ITエンジニア本人ともに社内外で通用する“スキル標準”が求められている。日本のITSSは、英国のSFIA(SFIA Framework Reference)をベースに作られたものだが、国(経済産業省)が出してきたITSSの定義は700ページにも及ぶ文書で、“Linux”や“Windows”といった具体的な固有名詞を使わずに“プラットフォーム”などと記しているため、理解・把握するのは難しい。しかし、日本がこのままIT技術者の育成、自身のスキル習熟度の把握をないがしろにしていると、すでに台頭してきている中国やインド、ベトナムなどのIT技術者が進出してくるだろう。しかも、仕事を頼めば単にそれをこなすだけでなく、より効率的なアイデアを提案してくる。2年後には、こうした国々のコストも日本と同等になり、企業は開発センターを現地に立ち上げてIT技術者の移転を始めると思われる」と警鐘を鳴らつつ、ITSSの意義を説明した。
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ITSSのフレームワーク。数多くの細分化されたスキルが7段階のレベルで並ぶ |
ただし、2年間で142社・者という普及の遅れについても認めながら、ITSSの目指す方向と企業が陥りやすい誤解・誤用について、「例えば、ITSSを人事制度に入れてしまうというケースがある。これは人材評価のための制度ではなく、人材育成のフレームとして使うためのものであり、企業が自社の製品やプロジェクトに必要なスキルを洗い出し、それに必要な人材が揃っているか、どこに不足があるかを洗い出す“スキルの棚卸し”として使うべきものだ」と、注意を促した。
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ITSSの概要。高橋氏は、“スキル熟達度”と“達成度指標”の2つが重要と語る | ITSSユーザー協会の役割 |
ITSSの示す内容は、端的に言うと“スキル熟達度”と“達成度指標”を標準化し、業界内の人的リソースを有効活用したり、不足するスキル(人材)を洗い出して人材育成の目標立てに使うことだと、高橋氏は締めくくった。
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SSI-ITSSの概要をファイザーの導入事例と合わせて説明 | ITSSのフレームワークに当てはめたスキル分布の例 | 自社のプロジェクト・製品に合わせた“カスタム・フレームワーク”におけるスキル分布の例 |
続いて、企業へのITSSの導入を支援し、“SSI-ITSS(ITSSに対応したスキル管理システム)”を提案、ASPサービスで提供するクイックの樽谷氏が、実際にITSSを自社に合わせてカスタマイズしながら導入した事例を説明した。樽谷氏は、「学ぶ組織の実現、自主的に学ぶ組織と個人を作ること、これがゴールである」と切り出し、「ITSSをコミュニケーションツールとして使うべきだ」と持論を展開した。これは、むやみにスキルを次々に獲得するのではなく、企業としてプロジェクトに必要な方法・目的を細分化してITSSの定めるスキルに当てはめ、レベル分布を測る。また、ITSSに規定されていないスキルについては、独自スキルとして体系化し、必要なスキルと現状の人材・能力のギャップを確認することが重要で、そのためのツールとしてSSI-ITSSの導入を提案している、と同社の役割を説明した。
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ITSSをコミュニケーションツールとして使うことを提言 | SSI-ITSSによって、業界標準のITSSと自社独自のスキル標準の同時導入が可能になるという |
