東京・新宿(初台)の東京オペラシティタワー4Fにある“NTTインターコミュニケーション・センター(NTT ICC)”において、4月23日から6月27日まで“ネクスト:メディア・アートの新世代”と題したメディア・アートの展示会が開催されている。この展示会に出展した作家は以下の12人(組)。主催はNTT ICCで、入場料は一般・大学生が500円、小中高校生が250円(会期中1回に限り再入場可能)。休館日は毎週月曜日(月曜が休日の場合は翌日、5月3日は開館)。
参加したアーティストと展示作品名(敬称略)
- 鈴木太郎(すずきたろう)
- Water Canvas 2004
- 徳井直生(とくいなお)
- SONASPHERE――Biosphere of Sounds
- 中居伊織(なかいいおり)
- streetscape六本木
- 山本努武(やまもとつとむ)
- 歓呼
- 橋本典久(はしもとのりひさ)
- ゼログラフ[ICCギャラリーA 20040330-U/D]
- るさんちまん
- 第10回「る会 ~生きション~」
- 齋藤正和(さいとうまさかず)
- A Piece of SUNSESSION #04
- エキソニモ
- VHSM: Video/Hack/and/Slash/Mixer ver.1.5
- 安藤孝浩(あんどうたかひろ)
- Photon Counting シリーズ
- 澤井妙治(さわいたえじ)+城 一裕(じょうかずひろ)+真鍋大度(まなべだいと)
- "riot please"--/a....ha...++
- 大畑 彩(おおはたさやか)
- internal sense
- 春日 聡(かすがあきら)
- morphonia ver.2.0
この中から印象に残った作品をいくつか紹介しよう。
中居伊織氏の“streetscape六本木” |
中居伊織氏の“streetscape六本木”は、真っ白いタイルに六本木交差点周辺の道路をなぞった窪みを作り、それをペンでなぞることでその場所で収録した音がヘッドホンから再生されるというインタラクティブ・アート。ペンタブレットの原理を知っていれば、「なるほど」と納得できるが、その発想や人の笑い声やバイクが空ぶかしのあとに駆け抜けるリアルな音声には、なかなか引き込まれるものがある。
橋本典久氏の“ゼログラフ[ICCギャラリーA 20040330-U/D]”(天井側) | 橋本典久氏の“ゼログラフ[ICCギャラリーA 20040330-U/D]”(床側) |
橋本典久氏の“ゼログラフ[ICCギャラリーA 20040330-U/D]”は、文字どおり2004年3月30日にNTT ICCのギャラリーAで天井および床から撮影した360度パノラマの写真を合成して、光学的には実現しない360度の画角の写真に仕上げたもの。一見すると、幾何学模様のようだが、よく眺めていると床面から続いて壁面や扉、さらにカメラ自体が置かれている天井すらも映し出されていることがわかる。その光景を理解すると、今度は自分の置かれた場所や視界が、従来の常識を否定する“ありえない状況”になっていることに気づき、なんとも不思議な感情が沸いてくる。
るさんちまん氏の作品“第10回「る会 ~生きション~」”の一部 | 2台のカメラ部のアップ | 2台のカメラが捕らえた映像をパソコンで合成して、外壁に新たな映像を映し出している |
るさんちまん氏の作品は、カメラやパソコン(Macintoshなど)以外の素材を“100円ショップ”で揃えたという、なんとも庶民的なアート。2台のカメラは時間を追ってランダムに角度を変え、さらに鏡を絶妙な場所に配置することで部屋の中に置かれたオブジェクトからアートな表情を捕らえる。カメラで撮られた映像はパソコンで合成され、部屋の外の壁に時間ごとに異なる作品を映し出す。
澤井妙治氏、城 一裕氏、真鍋大度氏による““riot please”--/a....ha...++” |
澤井妙治氏、城 一裕氏、真鍋大度氏による““riot please”--/a....ha...++”は、5.1chのスピーカーシステムと大きめなベンチが置かれた真っ暗な無反響室の中にたった一人で取り残される体験型の異空間アート。入室前には“暗所/閉所恐怖症ではないか”“心臓が弱いと診断されていないか”などジェットコースターにでも乗るかのような物々しい質問がされ、さらに入室時に非常呼び出しのための携帯ブザーが手渡される。だが、実際に体験してみるとその理由がよくわかる。光のない無反響室の中で、大型スピーカーから押し出される風圧とともに大音響が体を揺さぶる。同時にベンチ自体も、まるで生き物が閉じ込められているかのようにドカドカと動き出すのだ。視界を奪われた状態でこの刺激を受けると、心臓の弱い人や怖がりの人はパニックに陥ってしまうかもしれない。それでも、この斬新な衝撃には一般来場者が長蛇の列を作っており、会場で一番の人気アートのようだった。