昨年、東芝からDVD-RAM搭載HDDレコーダ『RD-XS30』が発売になり、更に上位機種『RD-XS40』『RD-X3』も登場している。実売価格については『【秋葉原・新宿】HDDレコーダ実売価格調査』を参照していただきたいが、今回は、先日レビューコーナーでも紹介した『RD-XS40』について、開発者にインタビューを行った。また、前機種『RD-X30』は筆者のまわりでも購入した者が随分おり、その代表としてライターの那須氏に使用感をうかがった。
『RD-XS40』 |
――『RD-XS40』はHDDを120MB搭載してますね。HDDは流体軸受けですか?
【伊藤】そうです。第2世代目の流体軸受になりますね。数値的にもかなり静かな方だと思います。今回の製品は容量120GBですが、『RD-X3』では160GBにアップしてます。HDDのメーカーはSeagateです。このHDD、実は7200回転なんですけど、当初は7200回転ものスペックがあって騒音は大丈夫か?という不安はあったんです。しかし、サンプルいただいて検証してみたところ、かなり静かでしたね。(駆動中のRD-XS40を見ながら)今若干音がしてますけど、これはファンの音です。HDDの音は電源を入れたときだけ気になるアクセス音がしますけど…。ファンに関しては特注品を作ればいくらでも静かにできるんですが(笑)、それだとコストがかかってしまいます。以前のモデルだと筐体の高さが110mmあったので、ファンも大きなものを採用して回転数を落とすという手法も考えられたんですけど、現在は回転数を上げなければならないんです。
デジタルメディアデベロップメントセンター・伊藤雄司氏 |
――ファンは温度可変ですか?
【伊藤】通常、私どものセット保証温度は5度から35度になってるんですけど、このうような製品の場合、ユーザーの環境によってはAVラックのなかに閉じ込めておくケースが考えられますよね。したがって40度くらいまでをマックスと考えてまして、それを考慮した設計になってます。ファンは70mm角のもので、35度近くになると速度が切り変わるようになってます。
――光ディスクの音は?
【伊藤】そんなに高速回転してないんで気にならないと思います。
――振動を抑えるためにHDDにゴムなどをつけるケースも考えられますが
【伊藤】ゴムなどを採用すると経時変化で性能が変わってくるんです。HDDのヘッドが自己共振していしまうので、そのような処理はやってないですね
――基板に関しては?
【伊藤】基板のコストが結構高いんですよ。多層基板をなるべく使わないようにしてまして、デジタル基板だけ4層、あとは2層か1層。画像処理に関する部分は2層になってますね。
――苦労された点というのはどこになりますか?
デジタルメディアデベロップメントセンター・海野裕明氏 |
【伊藤】『RD-XS40』は120GBのHDDを積んでますけど、最近発表された各社さんのHDDレコーダを見てると容量勝負みたいなところがありますよね。ところが新製品のHDDというものには、開発スケジュールの問題がついてまわります。こちらに採用しているのも新世代のHDDで、メーカーの開発スケジュールと私どもの量産スケジュールがマッチしてなかったんですよ。単に容量の大きなHDDに入れ替えるだけなら問題ないんですけど、HDDを制御するソフトが独自仕様になってまして、それをHDDメーカーさんにモディファイしてもらうという作業が発生します。HDDメーカーさんもまずPC用に製品を開発して、それから私どものようなモディファイされたものを出してくる。私どもはSeagateさんとかなり緊密に開発を行ってますんで、今回はアメリカのコロラド乗り込んで行って作業を行いました。その日程がタイトでした。
――モディファイというのは具体的にいうと?
『RD-XS40』 |
【伊藤】AVモードといいいますか…PCと違ってリアルタイムでデータを記録するために処理時間を短くするような制御動作をしています。PCの場合ですと、リトライして記録に失敗したらまたリトライ、それを何回もやる。AVモードではそれに制限を加えてます。ある所要時間内で書き込めない場合、次のセクタに移動するんです。実はAV仕様のHDDというのを昔からHDDメーカーさんは作ってるんですね。PCのHDDの場合、仮に読み取りエラーが起きた場合、何度もリトライして1~2秒かかっても精度良く読めれば基本的にそれで問題はありません。AV機器の場合はリアルタイムで録画したり再生したりした場合、リトライを長い間やっているとその間データが落ちてしまう。AV機器ではデータが落ちるということは基本的に許されないですから、そのためにリトライよりは、仮にエラーが避けられないようであればリトライをあきらめて次の作業にいくと。その辺の思想が違うんですよ。でも、120GBもあると、テスト段階で録画したり再生したりを何度もしなきゃならないんですよね。その時間がバカにならない(笑)。だから1~2日、夜中ずっと駆動させっぱなしにしてエラーがないかとかログがとれる状態でテストしたりしてました。